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「おかえり、星矢」
泥だらけで帰って来た星矢を出迎えたサガは、これはもう風呂へ放り込むしかないと判断してニコリと笑った。その笑みに不穏なものを感じたのか、星矢が軽くあとずさる。
「村の子供達にサッカーを教えに行って、聖闘士の反射神経を持つお前が、何故そこまで真っ黒になって戻ってくるのだろうか」
怒っているわけではないのに、サガは微笑むと何故か迫力が増す。
「ええと、その、なんでかな?子供と遊ぶ時には音速で動いたりしないし、一緒に転げまわっていたらいつの間にか」
サガは苦笑した。おそらくサッカーを教えてきたというよりは、一緒に遊んできた…が正解に違いない。
この泥だらけのわんぱく少年が、いざとなれば聖闘士の中でも飛びぬけた小宇宙を発揮するのだから、人は見かけでは判らないものだ。
「そのナリでは、とても聖戦勝利の立役者には見えないぞ」
せめて土に汚れた顔だけでも先にきれいにしようと、サガが湿らせたタオルで顔を拭いてやると、星矢は照れたのかそのタオルを奪い取り、ごしごしと自分で顔をこすった。
「サガまで英雄らしくしろとか言うんじゃないだろうな?そういうのガラじゃないって、見てれば判るだろ」
二大英雄としてアイオロスと並べ讃えられる星矢だが、本人は未だにその評価には慣れないようで、比べられては敵わないとぶつぶつ小声でむくれる。
アイオロスとたった1つしか違わない筈の星矢は、確かにまだ子供だった。
「そうだな、お前に英雄の名は似合わない」
サガが応えると、自分で否定していたくせに少年は一層むくれた。
「サガ、あんまりきっぱり言われると傷つくんだけど」
タオルの合間から、かつて神のようなと喩えられた大先輩を見上げて軽く睨む。サガは笑って星矢の頬を撫でた。
「私にとってお前は、英雄ではなくヒーローなのだよ」
思いもよらぬ返事が返ってきて、星矢は目をぱちくりとさせた。
「それ、一緒じゃ?」
だが、サガは違うと首を振る。どう違うのかをサガは説明しなかった。
「それよりも早く湯を浴びてきなさい。女神がお前のために開いてくださった祝賀会に遅刻する。主役がその姿では格好がつかないだろう」
「えっ、うそ、もうそんな時間なのか」
慌てて星矢が泥の足跡を残しながら双児宮の浴室へと走っていく。
その背へ向けて、サガは『HAPPY BIRTHDAY SEIYA』と呟いた。
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そして、人馬宮の入り口でプレゼント持ってウロウロするような乙女サガでもオケですか!勇気をありがとうございます(>▽<)考えてみたら守護宮の主であるアイオロスには、そんなサガの様子が筒抜けっぽいですよね(笑)わくわくしながら様子を伺って待っているのに、サガが玄関先にプレゼントだけこっそり置いて、慌てて走って帰ろうとするので「ええ!?ちょっと待ってサガ!」とか追いかけていくような男同士のラブコメです…。しかも乙女仕様なサガが用意するプレゼントは、自分が偽教皇時代にまとめた行政ワンポイントメモと慰問で使える格言集とか。「お前が教皇になるのに役立つと思って…」とか言われても、プレゼントの箱を開いて中を覗いたアイオロスは流石に無言で蓋を閉めたくなってます。「射手座にじゃなくてオレに、アイオロスに何かくれ」と直談判して何か貰うような、そういうベタな設定でした。
ニコ様が毎日萌えのおかわりを提供して下さるおかげで、朝張り切って出社しています(笑)本当にいつもありがとうございます!
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