星矢関連二次創作サイト「アクマイザー」のMEMO&御礼用ブログ
こじつけにも程がある。
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「どうか、過去からわたしの存在を消してください。わたしさえ居なければ、皆が幸せになれるはずなのです」
サガは時の神クロノスに頭を下げて願いました。
どうやってここまで来たのか判りませんが、人間でありながら時の湖へ辿りついた根性はなかなかのものと思われます。
その根性に免じて、クロノスは戯れに願いを聞いてやることにしました。
「それでは、望みどおりリセットしてやろう」
湖のなかから次元をひとつ選び出し、クロノスは界上で砂時計をひっくり返します。そうしてサガのいない世界が始まったのでした。
彼は幼い頃から将来の大成を約束されたような、輝かしい子供でした。
およそ出来ぬことはなく、星に呼ばれて訪れた聖域でも、すぐに黄金聖闘士の地位を予言されたほどです。
しかし、彼は生まれてこのかた、ずっと満足することはありませんでした。いついかなる時も、何かが世界から欠落しているとしか思えなかったからです。
周りの皆は『そんなことはない、これ以上を望むなど贅沢だ』と言いました。そのことは余計彼を苛々させましたが、かといって彼にも何が足りないのか判らないのでした。
聖域で修行しながらも、ずっと胸の奥にはぽっかり穴があいたままです。
いつしかその穴には『あるべきはずだった何か』の影が育つようになりました。
正式に双子座に任命された日は、流石の彼も喜びました。双子座の聖衣は、物にも人にも無頓着な彼がほとんど唯一欲しいと思えたものだったのです。
さっそくキラキラと輝く黄金聖衣を身に纏い、全身鏡に映していると、どこからか声がしてきました。
『なかなか似合っている』
「誰だ!?」
思わず彼はあたりを見回しました。双児宮には結界が張られており、他人は入ってこれないはずなのです。
怪しんでいる彼に、その声は呆れたように言いました。
『私はお前の兄だ。判っているだろう』
そう言われてみると、そんな気がしてきました。何故忘れていたのか不思議なくらいです。
「そうだ、思い出したぞ。なぜ今まで俺を一人にしたのだ」
『私はずっとお前とともにいた。お前が気づかなかっただけだ。お前が私を認識すれば、いつでも私は存在するのだから』
つまり、認識しないときには存在しないと言うことです。そんな勝手なと思いかけたものの、その身勝手さはとても兄らしいことのようにも思えました。
何より、兄が呼びかけてくれたとき、初めて彼は胸の飢餓感がなくなっていることに気づいたのです。
ただ、残念なことに兄の名前だけが思い出せませんでした。それに気づいたのか、兄が苦笑しています。
『では、”カイン(形作る者)”と呼ぶがいい』
「それなら俺は今日からアベル(空虚)と名乗ろう」
それ以降、アベルは時々現れるカインと双児宮で暮らすようになりましたが、充足の生活の中で彼はほんの時々だけ思うのでした。
足りない何かを求めていた過去のほうが、本当のような気がする、と。
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「どうか、過去からわたしの存在を消してください。わたしさえ居なければ、皆が幸せになれるはずなのです」
サガは時の神クロノスに頭を下げて願いました。
どうやってここまで来たのか判りませんが、人間でありながら時の湖へ辿りついた根性はなかなかのものと思われます。
その根性に免じて、クロノスは戯れに願いを聞いてやることにしました。
「それでは、望みどおりリセットしてやろう」
湖のなかから次元をひとつ選び出し、クロノスは界上で砂時計をひっくり返します。そうしてサガのいない世界が始まったのでした。
彼は幼い頃から将来の大成を約束されたような、輝かしい子供でした。
およそ出来ぬことはなく、星に呼ばれて訪れた聖域でも、すぐに黄金聖闘士の地位を予言されたほどです。
しかし、彼は生まれてこのかた、ずっと満足することはありませんでした。いついかなる時も、何かが世界から欠落しているとしか思えなかったからです。
周りの皆は『そんなことはない、これ以上を望むなど贅沢だ』と言いました。そのことは余計彼を苛々させましたが、かといって彼にも何が足りないのか判らないのでした。
聖域で修行しながらも、ずっと胸の奥にはぽっかり穴があいたままです。
いつしかその穴には『あるべきはずだった何か』の影が育つようになりました。
正式に双子座に任命された日は、流石の彼も喜びました。双子座の聖衣は、物にも人にも無頓着な彼がほとんど唯一欲しいと思えたものだったのです。
さっそくキラキラと輝く黄金聖衣を身に纏い、全身鏡に映していると、どこからか声がしてきました。
『なかなか似合っている』
「誰だ!?」
思わず彼はあたりを見回しました。双児宮には結界が張られており、他人は入ってこれないはずなのです。
怪しんでいる彼に、その声は呆れたように言いました。
『私はお前の兄だ。判っているだろう』
そう言われてみると、そんな気がしてきました。何故忘れていたのか不思議なくらいです。
「そうだ、思い出したぞ。なぜ今まで俺を一人にしたのだ」
『私はずっとお前とともにいた。お前が気づかなかっただけだ。お前が私を認識すれば、いつでも私は存在するのだから』
つまり、認識しないときには存在しないと言うことです。そんな勝手なと思いかけたものの、その身勝手さはとても兄らしいことのようにも思えました。
何より、兄が呼びかけてくれたとき、初めて彼は胸の飢餓感がなくなっていることに気づいたのです。
ただ、残念なことに兄の名前だけが思い出せませんでした。それに気づいたのか、兄が苦笑しています。
『では、”カイン(形作る者)”と呼ぶがいい』
「それなら俺は今日からアベル(空虚)と名乗ろう」
それ以降、アベルは時々現れるカインと双児宮で暮らすようになりましたが、充足の生活の中で彼はほんの時々だけ思うのでした。
足りない何かを求めていた過去のほうが、本当のような気がする、と。