以下エリシオン妄想
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咲き乱れる花の香りが、風に乗ってやわらかく鼻腔をくすぐる。
サガは目の前の樹からザクロを摘み取った。
弾けた果実からは甘い匂いがして花の香りに混ざった。
こんなところに果実がなっているのを発見して、サガは嬉しくなった。
(アイオロスにも、この場所を教えよう)
手を伸ばし、鮮やかに赤く熟したものを選んでもう1つ摘み取る。アイオロスの分だ。
会いたいと思うころ、アイオロスはサガのところへ遊びに来る。
そのタイミングの良さが嬉しくて、手厚く彼をもてなすのが常だ。
アイオロスは遊びに来て何をするわけでもないが、じっくりとサガの話を聞いてくれる。
この頃の彼は、以前よりも落ち着きを見せて大人になった気がする。
子供のときのようにじゃれあえないのは少し寂しいが、もうそのような年齢でもないことは自分で判っているので仕方が無い。人はいつまでも子供では居られないのだ。
サガが離宮へと戻ると、丁度向こうから彼が歩いてくる姿が見えた。
果実を片手に抱え、サガは手を振る。向こうも気づいたようで、その顔に笑みが浮かぶ。
傍へきた彼に、サガは採ってきたばかりの柘榴を手渡した。
「見てくれ、美味しそうだろう。向こうの林の中にたくさん実っている場所があるのだ」
「よく見つけたな」
「綺麗な場所で…お前にも見せたい、アイオロス」
射手座の名を呼ばれ、嬉しそうに笑うサガに手を引かれても、ヒュプノスはその間違いを訂正しなかった。
安らぎを与えるのは眠りの神の仕事であったし、神の力をもってしても黄金聖闘士クラスの精神力を持つ人間に、望まない夢を見せることは出来ないのだから。
エリシオンで心を眠らせるサガに、ヒュプノスは今日も唯一人の夢を与え続けた。
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