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聖戦後のサガは教皇補佐として女神に仕えることになった。
毎日十二宮を通って最上宮へと登庁し、代わりに双児宮を守るのは弟のカノンということになっている。そちらは海将軍との兼業だ。
カノンは、宮の外を歩くのも他者の視線が厳しいのではないかと兄を心配したが、サガは笑って取り合わなかった。どうもそれは口先だけではないようで、カノンが見る限り兄は毎日とても楽しそうだ。
「安心したというか意外と言うか」
昼食時にぽろりと零すと、隣でニョッキを突付いていたデスマスクはその過保護ぶりをゲラゲラ笑った。カノンは軽く睨んだものの、ちゃっかり巨蟹宮に食事をタカリに来ている事を考えて自分を抑える。
巨蟹宮の主はフォークの先をカノンに向けてからかうように言った。
「相変わらず心配性だな。そういうお前さんは海界でどーしてるんだよ。毎回頭下げてまわってんの?」
「まさか」
双子座でもあり、海龍でもあるカノンは肩をすくめた。
「謝罪は最初に一度まとめて頭を下げた。そこから後は行動で示すしかないし、偽とはいえオレが海将軍を勤める間は、個々に毎回ぺこぺこしていては士気や統率に関わる。すまないとは思うが、締めるべきところは締めさせてもらう」
「ま、軍を率いる上でそれはしょーがないわな…で、サガも同じだとは思わないのか」
「黄金聖闘士は将軍というよりも守護者だ。それも今のサガは聖職の補佐だ」
システムの違いをあげて反論したものの、デスマスクはニヤリとこんな事を言った。
「サガがな、こんな事を言ってたぜ」
耳を傾ける双子座の弟に、ややトーンを落とした声で続ける。
「騙すことしか出来なかった年月を思えば、直接なじられて直接謝罪出来る今が幸せだってさ」
カノンは黙り込んだ。
「サガがああいう馬鹿だから、俺達も13年間苦労したわけだけどな」
文句を言いつつもデスマスクは誇らしげだった。
「弟のお前が心配するのは判るが、サガはそんなにヤワじゃねえよ…むしろ逆にお前が聖域に馴染めるかどうかスゲエ心配してた」
そうして席を立つと、デザートにイタリアンジェラードの苺味を持って戻ってくる。
「これ、お前の好物なんだって?カノンがご飯をたかりに来たら、出してやってくれって頼まれててさ…いやあ、いい保護者…でなくって、お兄さんを持って幸せだねえ」
笑いをこらえている事を隠そうともせず、デザートの器を差し出すデスマスクにカノンは赤くなった。
「サ、サガのやつ…子供かオレは!」
怒鳴りつつ、自棄食いのようにジェラードをかきこむカノンを横目に、デスマスクもスプーンを手に取る。
(平和なのも悪くねえか)
と、らしくもなく考えながら。
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でも水晶細工のようなサガもイイ!(>▽<)ノ