満開です。
脳内のお花畑が。
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半獣人のアイオロスは、ひょんなことから双子の家に居候(サガ的には飼育)することになって以来、昼間は人間の姿で自由に過ごし、夕方になると獣の姿へ戻ってサガを出迎えるというサイクルで過ごしている。
よってサガは、アイオロスが人間になれることを知らないままだ。
昼間に人間でいる間の服は、カノンが買ってやった。
カノンがアイオロスに親切というわけではなく、家の中を裸でうろつかれるのはまっぴらだという理由からだ。
カノンは、風呂上りのサガが部屋内を全裸で歩く分には文句を言わないという不公平な性格をしていたが、アイオロスが暮らすようになってからはサガにも文句を言うようになった。
おかげで、サガは突然身だしなみを煩く言い出した弟に首を捻りながらも、タオルを腰にひっかけるくらいにはスキルアップしている。
もっとも、四足獣の低い視点からは、タオル防御などあまり意味が無かったため、兄の肌を見せたくないという弟心によるその配慮も、却ってチラ見サービスだか目の毒なんだかよく判らない状況になっていたが。
それはさておき、今日も夕方になって獣に戻ったアイオロスは、うきうきと玄関先で寝そべり、サガの帰りを待った。
通常の猫はそうするらしいということを知る前から、アイオロスはそうしている。
何のかんのいって、自分を攫った拾ったサガの事を、彼も好きになって来ていたのだった。
そうしている間にも待ち人の足音と匂いを感じて、彼は首をあげた。
獣だけあってアイオロスの五感は鋭敏だ。サガの姿がまだ見えぬ扉の外にあっても、他人と間違えることはない。
扉が開いたら飛びついて出迎えるつもりで、アイオロスは立ち上がった。
しかし、開かれた扉からのぞいて見えたのは、長い黒髪と赤い瞳だった。
アイオロスの身体が微妙に固まる。
もう一人のサガのことをアイオロスはまだ良く知らない。同じサガだということは判るのだが、何故か身体が危険を察知して距離をとろうとしてしまうのだ。
本能としか言いようがない。
気持ち的にはいつものように飛びつこうとしているのにも関わらず、姿勢は逃げ腰になっている。
アイオロスの内面の葛藤など知りもせず、黒サガはにこりと笑った。
「出迎えご苦労、アイオロス。お前に土産を買ってきたぞ」
そう言いながら何かの包みを取り出す。
その笑顔がまた、アイオロスにとっては何故か何かを企んでいる不吉な笑顔にしか見えないのだ。
それでも、サガが自分の為に何かを買ってきてくれたというのが嬉しくて、己の警戒心を押し殺しつつその包みに顔を近づけて匂いを嗅いで見る。
目の前で黒サガはガサガサと包みを開けた。
現れたのは落ち着いた色合いの皮の首輪とリードだった。
「……」
アイオロスはその首輪と黒サガの顔を交互に見つめ、無言で後ずさり始めた。
「お前に似合う色を選んできた。首輪とリードは散歩に必需であろうからな」
いやいやそれは犬の場合だろうとアイオロスが心の中でだけで突っ込む。
首輪を手に笑む黒サガは、ペットに対して普通の応対をしているだけなのだが、アイオロスからしてみれば、別のプレイを強要されているようにしか感じない。
隙を狙って逃げようとするアイオロスと、逃がすつもりのない黒サガの間に緊張が走る。
その緊張を破ったのは、帰宅したカノンだった。
「玄関先で、お前らは一体何をしているのだ」
呆れたように言うカノンへ、アイオロスが助けを求める視線を向ける。
カノンは黒サガの手にある首輪に気づき、
(べつに良いだろ首輪くらい)
と思ったものの、持ち前の人の良さで助け舟を出してやったのだった。
「サガ、最近の猫は室内飼い推奨だ」
「そうなのか?」
「ああ、聖域町内会回覧板の『ペットについてのお知らせ』にそう書いてあったろう。外に出さないなら首輪は不要なんじゃねえの?」
回覧板とは関係なく、こんな大型獣を表に出したらえらい騒ぎになるということを、カノンは敢えて無視した。
黒サガは少し不満そうな顔をしたものの、回覧板の内容は覚えていたようで、外へ出すなという部分への反論はせず口ごもる。しかし、納得したわけでは全然なかった。
「不要なのはリードだけだろう。室内飼いでも首輪はつける」
こんな事を言い出した。全く諦めていない。
「何のためにだ」
カノンが問うと、黒サガはきっぱりと答えた。
「洋服代わりだ」
「……は?」
「この猫は何も着ていない。よって首輪が洋服代わりだ」
「いや…それは違うんじゃないかサガ…」
遠い目でカノンが突っ込むも、フォローできたのはここまでだった。買ってきたアイテムを無駄にしたくない黒サガは全く引く様子は無かった。
結局黒サガは強引にアイオロスを部屋の隅に追い詰めて首輪をつけてしまい、お陰でますますアイオロスの黒サガへのトラウマは大きくなったのだった。
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後半がぐだぐだなので、サイトにアップするときにでもまた推敲します(><;)