拙宅聖域では聖闘士が事務に関わる事は殆ど無いんですが(戦士に常日頃から事務も任せると、死んだときや勅命時に組織の歯車が止まる&分業の観点で非効率)、教皇とその補佐だけはトップにいるだけに、多少事務的なおしごとにも関わる勝手設定です(>ω<)。
黄金聖闘士は事務しませんが、事務官をこきつかえます。他にもいろんな権力持ってます。
…という適当組織な感じで新教皇アイオロス+黒サガSS
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「この来期予算の試算書は何だ。舐めているのか」
アイオロスが渡した書類の束をパラパラとめくり、1分もせずにそれを机に放り投げたのは黒サガだった。
「やっぱ数字の精密さが足りないかな」
のんびりと笑顔を崩さずにアイオロスが尋ねたのに比べ、
「教皇に無礼だろう、口を慎め!」
と怒鳴ったアイオリアの表情には怒りの色が浮かぶ。
アイオリアは、たまたま勅命の報告に教皇宮へあがってきたのだが、補佐役のはずのサガの髪が黒いのを見ると、兄をひとり残すのが心配だとばかり、執務室に居座っているのだ。
黒サガはちらりとアイオリアを一瞥しただけで、アイオロスに目を向ける。
「教皇の仕事は経理ではない。数字の精密さは事務方に任せればいい。私が言いたいのは、この特別会計の中身だ」
「うん、実はもう少し治療施設とヒーラーを増やそうと思ってね。新しい予算を組んでみた」
聖域では、修行の最中に重傷を負い、志半ばに戦士としての道を断たれる者も多い。
小宇宙を扱うということ自体がとても危険である上、それを目覚めさせるために、生死ギリギリの負荷を心身へかけるような過酷な訓練が日常茶飯事であるからだ。
近代的な医療施設と小宇宙による治療の両面から、修行者をサポートし、脱落者や死者を減らして戦力の安定を図ろうというのがアイオロスの狙いだ。
黒サガは口をつぐみ、書類にペンを走らせ始めた。
数箇所へバツマークとアンダーラインを入れ、その隣になにやら書き込む。そして、書き終わるとその書類をアイオロスに向かって投げつけた。
アイオロスは難なく片手でパシリと受け止め、その箇所に目を通していく。
「医療・精密機器を購入するのならば、城戸財閥系に交渉すれば3割は安くなる筈だ。もっと言えば税金対策と称して現金で寄付させろ」
「城戸家を利用する気満々だね。俺は多少遠慮してたのに」
「使える物は使えるうちに使え。それから、ヒーラーを育成する対象が聖闘士候補生というのは非効率的だ。闘士は戦闘に特化させ、治癒は神官や闘士脱落者などの非戦闘員から募集し、小宇宙を使えるように育成したほうがいい」
「まあ確かに、聖闘士になる者が小宇宙に目覚めれば、そっちは教えずとも勝手に治癒能力上がるよね。それより、非戦闘員を勘定に含むというのなら、こういうのはどうかな…」
喧々諤々と議論をする二人を、アイオリアが複雑そうな目で見つめる。
黒サガがふいに立ち上がった。
「2時間休憩を取ってくる。その間にさっさと手直しをしておけ」
傍若無人な言いようにアイオリアがまた怒鳴りかけたのを、アイオロスが手で制してサガへと言い返す。
「1時間で作り直すから、君もそんなに休まないで直ぐ戻ってきてくれ。今日は他にも書類が溜まっているんだ」
「人遣いの荒い教皇だな」
「あ、教皇と呼んでくれたね」
にこりとアイオロスは手を振るも、黒サガの返事は言葉ではなく、激しい勢いで閉められた部屋の扉であった。
アイオリアは我慢できず不満を零した。
「あのように反抗的な態度を許していいのか!」
アイオロスはといえば、弟にもニコニコと分け隔てなく笑顔を向ける。
「サガはああ見えて、序列のけじめにはうるさい男だよ」
「兄さんはサガに甘すぎるから、そんな」
「それじゃあ今、お前に対しても『職場では教皇と呼びなさい』と言わないといけないのかな」
痛いところをつかれてアイオリアが口篭る。
アイオリアが怒ったのは、教皇が蔑ろにされたからというよりも、兄が蔑ろにされた気がしたためだ。その私情を大義名分でくるんだ事は、彼自身が一番良く判っていた。
アイオロスは、弟の頭へぽんと軽く手を置いた。
「サガもね、他人がいるところではああじゃないんだ。公の場では見かけだけでも俺を立ててくれる。ぞんざいになるのは気心の知れた仲間の前でだけで…お前がいてもあの口調だったってことは、お前の事をサガは身内扱いしたってことだよ」
「そんなこと…」
「それに、サガは俺の発案や命令の粗には突っ込むけれど、あれで決して反対はしないんだ」
どちらのサガもね、と付け加え、アイオロスは弟にウインクする。
アイオリアは暫し黙り、ぼそりと呟いた。
「…書類の処理、俺も手伝うから」
「助かるよ」
任命されたばかりの新教皇は、遠慮なく未決済の書類の束を弟へ手渡した。
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後半眠くて文章の残念さに拍車が…黒サガとアイオロス教皇が何だかんだで仲良くやってくれるといいなあという妄想です。