星矢関連二次創作サイト「アクマイザー」のMEMO&御礼用ブログ
LC&無印双子同居設定シリーズ
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現代に身をおいた異世界先代の双子座アスプロスが、あっというまにパソコンを使いこなしてカノンを驚かせたのはつい先日のことだが、彼の弟もいつの間にか兄やデスマスクからインターネットの仕組みを学び、使いこなせるようになっていたらしい。
目の前でキーボードを叩いているデフテロスを見て、カノンは感嘆の声をあげた。
「お前ら凄いな。すっかり現代に馴染んでいる」
双児宮にインターネットの回線は敷かれていない。それをアスプロスは、空間を繋げるという荒業によって、聖域の拠点の空いている無線LANへプロトコルを飛ばし使えるようにした。デフテロスはそれを見よう見まねで同様の作業をこなしているのだ。
そんなことを当たり前のようにさらりとこなす過去双子座のスペックを目の当たりにするたびに、負けていられないという克己心も沸く。今まではサガ以外に自分よりも優れた奴などいないという慢心があったが、聖戦での青銅たちといい、後輩黄金聖闘士たちといい、うかうかしていられないとは思っている。
だが、先の話ではなく現時点で、この異世界の双子座たちは脅威だ。この男達と自分やサガが同時に双子座聖衣を呼んだとき、いったい聖衣は誰を選ぶのだろうか。
「そうでもない。まだまだ知らぬことばかりだ。情報を得るたびに、新鮮な驚きがある」
キーボードを叩き終わったデフテロスが返事をする。
一体どんなサイトを見ているのだろうと、ひょいと画面を覗き込むと、表示されていたのは、料理コミュニティ・クック○ッドのつくれぽ頁。しかも、ハンドルネーム『ニバンメ』の名で、もう幾つか投稿しているようだ。幾つか食卓で見た覚えのある料理写真が並んでいる。
「……」
いつの間にか携帯写真まで使いこなしているということか。
「デスマスクがこのサイトを教えてくれてな。現代料理を知るのに大変役立っているのだ」
肌黒の美丈夫が、真面目な顔で語ってくる。
「……そうか、良かったな」
おそらくデフテロスが料理の腕を磨くのは、それを食わせる兄のためだろう。
彼の人並みはずれたスペックの約9割は、アスプロスのために使われているんじゃないだろうか。カノンは遠い目のまま、何も見なかったことにして自室へ戻った。
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現代に身をおいた異世界先代の双子座アスプロスが、あっというまにパソコンを使いこなしてカノンを驚かせたのはつい先日のことだが、彼の弟もいつの間にか兄やデスマスクからインターネットの仕組みを学び、使いこなせるようになっていたらしい。
目の前でキーボードを叩いているデフテロスを見て、カノンは感嘆の声をあげた。
「お前ら凄いな。すっかり現代に馴染んでいる」
双児宮にインターネットの回線は敷かれていない。それをアスプロスは、空間を繋げるという荒業によって、聖域の拠点の空いている無線LANへプロトコルを飛ばし使えるようにした。デフテロスはそれを見よう見まねで同様の作業をこなしているのだ。
そんなことを当たり前のようにさらりとこなす過去双子座のスペックを目の当たりにするたびに、負けていられないという克己心も沸く。今まではサガ以外に自分よりも優れた奴などいないという慢心があったが、聖戦での青銅たちといい、後輩黄金聖闘士たちといい、うかうかしていられないとは思っている。
だが、先の話ではなく現時点で、この異世界の双子座たちは脅威だ。この男達と自分やサガが同時に双子座聖衣を呼んだとき、いったい聖衣は誰を選ぶのだろうか。
「そうでもない。まだまだ知らぬことばかりだ。情報を得るたびに、新鮮な驚きがある」
キーボードを叩き終わったデフテロスが返事をする。
一体どんなサイトを見ているのだろうと、ひょいと画面を覗き込むと、表示されていたのは、料理コミュニティ・クック○ッドのつくれぽ頁。しかも、ハンドルネーム『ニバンメ』の名で、もう幾つか投稿しているようだ。幾つか食卓で見た覚えのある料理写真が並んでいる。
「……」
いつの間にか携帯写真まで使いこなしているということか。
「デスマスクがこのサイトを教えてくれてな。現代料理を知るのに大変役立っているのだ」
肌黒の美丈夫が、真面目な顔で語ってくる。
「……そうか、良かったな」
おそらくデフテロスが料理の腕を磨くのは、それを食わせる兄のためだろう。
彼の人並みはずれたスペックの約9割は、アスプロスのために使われているんじゃないだろうか。カノンは遠い目のまま、何も見なかったことにして自室へ戻った。
前回SS「海水浴」の続き。
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一面に広がる海と白い砂浜のまぶしさに、サガは目を細めた。
一緒に来た星矢や瞬は、準備運動もそこそこに駆け出して、既に海へ足をつけている。
カノンが水辺から少しだけ離れた木陰にシートを敷いたので、サガは昼食の入ったバスケットやタオルをそこへ置いた。
「ガキどもは元気だなあ」
「まだ若いからな」
「おいサガ。その言い方、年寄り臭いぞ」
自分の言い草を棚に上げ、呆れたようにカノンが言うのでサガは笑った。
いかにも『面倒臭いが付き合ってやっているのだ』という表情のカノンだが、本当に面倒であったならさっさと逃げて、この場にはいないであろうことをサガは良く知っている。
「若いおまえも早く泳いでくればいい」
そう返してサガはシートへ腰を下ろした。日陰ではあるが、好天の浜辺だ。日焼けするだろうなと内心でひとりごちる。
「おまえは泳がないのか?」
「ああ、水着を持ってきていない」
「やっぱりな。おまえが水着を持ってるわけないと思った」
返答を予測していたのか、カノンは頷く。
サガとしては、訓練用の水着でも聖域の倉庫から貰ってこようと軽く思っていたのだ。
聖闘士候補生たちは海での戦闘も学ぶ。カノンの前では言いにくいが、主に海界との戦闘を想定してのものだ。泳ぎや潜水の修行も当然ある。その際に使われる水着を購入させて欲しいと頼んだサガへ、しかし、倉庫番の返事は「水着などありません」のひとことであった。
いざ戦闘となれば、わざわざ水着に着替えられるわけでもない。よって、水場の訓練もすべて通常訓練着で行われるとのことらしい。そもそも聖域は現代水着などない時代から同じ修行法でやってきているのである。考えてみれば、別口で海水浴に出かけたカミュや氷河たちも水着を持っていったようには見えなかった。
競技とは違うので、泳ぎの効率などは考えなくて良いのかもしれないが、どうりで訓練中の水難事故が多いはずだとサガは頭を抱える。
改善せねばとの決意は横に置き、そんなわけで水着は入手できなかったのだ。
カノンが肩をすくめて兄へ言った。
「少し待ってろ。この島の詰め所に予備の新品海パンがあったはず」
「詰め所?」
「ここは海闘士の拠点の1つだと言ったろ。海界は旧態依然とした聖域よりも合理的なんだぜ」
「……ありがとう」
それは13年前におまえが手を入れて、一から新しく稼動させたからだろうと思いつつも、言葉には出さないでおく。何もないところからたった十数年で、聖域とやりあえるほど組織をまとめあげるのは並大抵の苦労ではなかったろうが、今は厭味を言う場面でも褒める場面でもない。
過去の感慨を押さえ込むサガに対して、カノンはドライだ。
「礼は言わなくていい。もう一人のおまえが出てきたとき、あいつは水着なくても平気で海に入りそうだからな。一種の保険だ」
「……」
「おまえも脱ぐなよ?」
「……」
言い返せないでいるうちに、カノンは詰め所とやらへテレポートしてしまった。
サガは視線を海に戻す。きらきらと波が光を反射させている。
波際で遊んでいた星矢と瞬が、本格的に泳ぐため服を脱ぎにサガのところへ戻ってきた。
「あれっ?カノンは?」
「カノンがいませんね」
二人はすぐにカノンの不在に気づいて、きょろきょろ辺りを見回している。
「今、海闘士の拠点とやらへ水着をとりに行っている。すぐに戻る」
「そうなんだ、海闘士の拠点って見てみたかったな」
「だめだよ星矢、聖闘士に見せてくれるわけないよ」
子供らしい会話にサガは和む。
「わたしたちを入れてくれるような場所だ。そう重要な拠点でもないのだろう」
「それも、そうですね」
「海将軍の連中ともそのうち一緒に泳ぎたいよな。なかなか会えないけど」
「そういえば、おまえたち、水泳は得意なのか?」
ふと尋ねると、星矢は胸をはった。
「魔鈴さんに数え切れないほど海へ突き落とされたからな。荒海の岩場も泳ぎぬけられないと陸へ戻れないし。というか本当に死んじまうし」
「僕はアンドロメダ聖衣の取得条件がサクリファイスでしたから、自然と潜水は鍛えられました」
ちなみにサクリファイスとは、波間の岩にアンドロメダの鎖で縛られ、その岩が満潮で沈む前に小宇宙で脱出するという聖衣取得最終試験である。試験前の模擬ではただの鎖で代用するであろうものの、成功するまでは幾度と無く海に沈んだに違いない。
(聖域への水着導入は必要ないのだろうか…)
遠い目で青銅の話を聞いていたサガは、星矢によって服を脱がされ始めたことに気づいて慌てる。
「ま、まて。話を聞いていなかったのか。カノンがいま水着を取りにいっていると」
「いいじゃん、着てから履けば。早く泳ごうぜ!」
「星矢!サガが困ってるよ」
隣では瞬が恐縮したように諌めながらも、仲の良いじゃれあいと見て本気で止める気はないようだ。
最後の一線を争っての28歳と13歳の攻防は、戻ってきたカノンが二人の頭に拳骨を落とすまで続いた。
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一面に広がる海と白い砂浜のまぶしさに、サガは目を細めた。
一緒に来た星矢や瞬は、準備運動もそこそこに駆け出して、既に海へ足をつけている。
カノンが水辺から少しだけ離れた木陰にシートを敷いたので、サガは昼食の入ったバスケットやタオルをそこへ置いた。
「ガキどもは元気だなあ」
「まだ若いからな」
「おいサガ。その言い方、年寄り臭いぞ」
自分の言い草を棚に上げ、呆れたようにカノンが言うのでサガは笑った。
いかにも『面倒臭いが付き合ってやっているのだ』という表情のカノンだが、本当に面倒であったならさっさと逃げて、この場にはいないであろうことをサガは良く知っている。
「若いおまえも早く泳いでくればいい」
そう返してサガはシートへ腰を下ろした。日陰ではあるが、好天の浜辺だ。日焼けするだろうなと内心でひとりごちる。
「おまえは泳がないのか?」
「ああ、水着を持ってきていない」
「やっぱりな。おまえが水着を持ってるわけないと思った」
返答を予測していたのか、カノンは頷く。
サガとしては、訓練用の水着でも聖域の倉庫から貰ってこようと軽く思っていたのだ。
聖闘士候補生たちは海での戦闘も学ぶ。カノンの前では言いにくいが、主に海界との戦闘を想定してのものだ。泳ぎや潜水の修行も当然ある。その際に使われる水着を購入させて欲しいと頼んだサガへ、しかし、倉庫番の返事は「水着などありません」のひとことであった。
いざ戦闘となれば、わざわざ水着に着替えられるわけでもない。よって、水場の訓練もすべて通常訓練着で行われるとのことらしい。そもそも聖域は現代水着などない時代から同じ修行法でやってきているのである。考えてみれば、別口で海水浴に出かけたカミュや氷河たちも水着を持っていったようには見えなかった。
競技とは違うので、泳ぎの効率などは考えなくて良いのかもしれないが、どうりで訓練中の水難事故が多いはずだとサガは頭を抱える。
改善せねばとの決意は横に置き、そんなわけで水着は入手できなかったのだ。
カノンが肩をすくめて兄へ言った。
「少し待ってろ。この島の詰め所に予備の新品海パンがあったはず」
「詰め所?」
「ここは海闘士の拠点の1つだと言ったろ。海界は旧態依然とした聖域よりも合理的なんだぜ」
「……ありがとう」
それは13年前におまえが手を入れて、一から新しく稼動させたからだろうと思いつつも、言葉には出さないでおく。何もないところからたった十数年で、聖域とやりあえるほど組織をまとめあげるのは並大抵の苦労ではなかったろうが、今は厭味を言う場面でも褒める場面でもない。
過去の感慨を押さえ込むサガに対して、カノンはドライだ。
「礼は言わなくていい。もう一人のおまえが出てきたとき、あいつは水着なくても平気で海に入りそうだからな。一種の保険だ」
「……」
「おまえも脱ぐなよ?」
「……」
言い返せないでいるうちに、カノンは詰め所とやらへテレポートしてしまった。
サガは視線を海に戻す。きらきらと波が光を反射させている。
波際で遊んでいた星矢と瞬が、本格的に泳ぐため服を脱ぎにサガのところへ戻ってきた。
「あれっ?カノンは?」
「カノンがいませんね」
二人はすぐにカノンの不在に気づいて、きょろきょろ辺りを見回している。
「今、海闘士の拠点とやらへ水着をとりに行っている。すぐに戻る」
「そうなんだ、海闘士の拠点って見てみたかったな」
「だめだよ星矢、聖闘士に見せてくれるわけないよ」
子供らしい会話にサガは和む。
「わたしたちを入れてくれるような場所だ。そう重要な拠点でもないのだろう」
「それも、そうですね」
「海将軍の連中ともそのうち一緒に泳ぎたいよな。なかなか会えないけど」
「そういえば、おまえたち、水泳は得意なのか?」
ふと尋ねると、星矢は胸をはった。
「魔鈴さんに数え切れないほど海へ突き落とされたからな。荒海の岩場も泳ぎぬけられないと陸へ戻れないし。というか本当に死んじまうし」
「僕はアンドロメダ聖衣の取得条件がサクリファイスでしたから、自然と潜水は鍛えられました」
ちなみにサクリファイスとは、波間の岩にアンドロメダの鎖で縛られ、その岩が満潮で沈む前に小宇宙で脱出するという聖衣取得最終試験である。試験前の模擬ではただの鎖で代用するであろうものの、成功するまでは幾度と無く海に沈んだに違いない。
(聖域への水着導入は必要ないのだろうか…)
遠い目で青銅の話を聞いていたサガは、星矢によって服を脱がされ始めたことに気づいて慌てる。
「ま、まて。話を聞いていなかったのか。カノンがいま水着を取りにいっていると」
「いいじゃん、着てから履けば。早く泳ごうぜ!」
「星矢!サガが困ってるよ」
隣では瞬が恐縮したように諌めながらも、仲の良いじゃれあいと見て本気で止める気はないようだ。
最後の一線を争っての28歳と13歳の攻防は、戻ってきたカノンが二人の頭に拳骨を落とすまで続いた。
アイオリアの誕生日に贈り物をしよう。
そう考えたアイオロスは、次に何を贈ろうか考えた。
服や時計など身に付けるものがいいだろうか。
普段使いの生活用具がいいだろうか。
お菓子や嗜好品などがいいだろうか。
しかし、アイオロスは13年前の弟の趣味嗜好しか知らないのだった。
「いまのお前に似合いそうだと、いまの俺が思ったものでいいかな」
人馬宮の門柱から、アイオロスは獅子宮の方角を見下ろして呟く。
そう考えたアイオロスは、次に何を贈ろうか考えた。
服や時計など身に付けるものがいいだろうか。
普段使いの生活用具がいいだろうか。
お菓子や嗜好品などがいいだろうか。
しかし、アイオロスは13年前の弟の趣味嗜好しか知らないのだった。
「いまのお前に似合いそうだと、いまの俺が思ったものでいいかな」
人馬宮の門柱から、アイオロスは獅子宮の方角を見下ろして呟く。
「サガ、サガ、海に行きたい!」
そう言いながら、すっかり準備万端で飛び込んできたのは、青銅の後輩・ペガサスの星矢だ。その後ろから多少遠慮がちに瞬がついてくる。
「星矢、サガにも予定があるのだから、急には難しいのでは」
「無理だったら諦めるけど、今日はお休みだよな?」
突然の闖入者を、リビングで珈琲を飲んでいたカノンは『うるせえぞ』という目で睨み、朝食後の皿を片付けていたサガは目を丸くする。
「先ほど、カミュたちが海水浴へ行くからと、ここ双児宮を通り抜けていったばかりだ。今から追いかければ、一緒に行けるのではないか?」
二人分の食器を棚の中へしまい、振り返ったサガは優しく答える。
水瓶座のカミュがめずらしく氷河と一緒に夏の海へ行くと言うので、微笑ましく見送ったのがほんの数分前のこと。途中でアイザックとも合流予定だという。師弟水入らずではあるが、星矢と瞬であれば皆喜ぶだろう。
「ホントは一緒に行くつもりだったんです。氷河も一緒に行こうと言ってくれていましたし、泳ぐのにうってつけの、とても綺麗ないい場所があるって」
瞬が申し訳なさそうに言い、カノンの方へもぺこりと頭を下げる。
「では、どうして?」
「だって、良く聞いたら『シベリアの海も夏は流氷が減って水がぬるむ』だの『アザラシを捕まえてバーベキューにしよう』とか言ってるんだぜ!俺たちの思ってる海水浴と違う!」
「…ああ、それは違うかもしれないな」
星矢の言い分を、多少遠い目でサガは聞いた。シベリアも夏はそれなりに暑いのだが、カミュたちが暮らすあたりは永久凍土のエリアだ。星矢と瞬が海水浴を楽しむには厳しい気候だろう。
横から瞬も言葉を添える。
「その、カノンならいい場所を知っているのではないかなと…」
「ふむ、そうだな」
サガは頷いた。海将軍だからと言わないのは瞬の配慮に違いない。
弟が後輩たちに頼られているのは、内容がなんであれ、少し嬉しい。
「カノン、どうだ?」
と振り向くと、ちゃんと話は聞いていたのか、ぶっきらぼうながらエーゲ海の無人島の名前を挙げてくれた。海将軍としてのカノンが所持する拠点のひとつで、砂浜も岩場もあるという。
「じゃあ早く行こう!」
「お二人と一緒に海に行けるなんて嬉しいです」
子犬のようにサガへじゃれつく星矢と、控えめな喜びを表現している瞬は、まだまだ子供だ。聖戦時には黄金聖闘士をも上回る力を発揮するようにはとても見えない。
『一緒に行くとはまだ言ってねえ』と言いかけたカノンの頭を小突き、サガは水筒とバスケットを探すために戸棚を開いた。
そう言いながら、すっかり準備万端で飛び込んできたのは、青銅の後輩・ペガサスの星矢だ。その後ろから多少遠慮がちに瞬がついてくる。
「星矢、サガにも予定があるのだから、急には難しいのでは」
「無理だったら諦めるけど、今日はお休みだよな?」
突然の闖入者を、リビングで珈琲を飲んでいたカノンは『うるせえぞ』という目で睨み、朝食後の皿を片付けていたサガは目を丸くする。
「先ほど、カミュたちが海水浴へ行くからと、ここ双児宮を通り抜けていったばかりだ。今から追いかければ、一緒に行けるのではないか?」
二人分の食器を棚の中へしまい、振り返ったサガは優しく答える。
水瓶座のカミュがめずらしく氷河と一緒に夏の海へ行くと言うので、微笑ましく見送ったのがほんの数分前のこと。途中でアイザックとも合流予定だという。師弟水入らずではあるが、星矢と瞬であれば皆喜ぶだろう。
「ホントは一緒に行くつもりだったんです。氷河も一緒に行こうと言ってくれていましたし、泳ぐのにうってつけの、とても綺麗ないい場所があるって」
瞬が申し訳なさそうに言い、カノンの方へもぺこりと頭を下げる。
「では、どうして?」
「だって、良く聞いたら『シベリアの海も夏は流氷が減って水がぬるむ』だの『アザラシを捕まえてバーベキューにしよう』とか言ってるんだぜ!俺たちの思ってる海水浴と違う!」
「…ああ、それは違うかもしれないな」
星矢の言い分を、多少遠い目でサガは聞いた。シベリアも夏はそれなりに暑いのだが、カミュたちが暮らすあたりは永久凍土のエリアだ。星矢と瞬が海水浴を楽しむには厳しい気候だろう。
横から瞬も言葉を添える。
「その、カノンならいい場所を知っているのではないかなと…」
「ふむ、そうだな」
サガは頷いた。海将軍だからと言わないのは瞬の配慮に違いない。
弟が後輩たちに頼られているのは、内容がなんであれ、少し嬉しい。
「カノン、どうだ?」
と振り向くと、ちゃんと話は聞いていたのか、ぶっきらぼうながらエーゲ海の無人島の名前を挙げてくれた。海将軍としてのカノンが所持する拠点のひとつで、砂浜も岩場もあるという。
「じゃあ早く行こう!」
「お二人と一緒に海に行けるなんて嬉しいです」
子犬のようにサガへじゃれつく星矢と、控えめな喜びを表現している瞬は、まだまだ子供だ。聖戦時には黄金聖闘士をも上回る力を発揮するようにはとても見えない。
『一緒に行くとはまだ言ってねえ』と言いかけたカノンの頭を小突き、サガは水筒とバスケットを探すために戸棚を開いた。
ややややや。