毎年7月から会社の制服はアロハとなります。涼しいし寸胴は隠れるし着替えやすいしアロハはいい!当然脳内では聖闘士にも着せるのです。
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女神が旅行土産にと黄金聖闘士達へよこしたのは、アロハシャツだった。
双子へ渡されたのは、色もデザインも全く同じ水色のトロピカル模様のもの。
サガは感涙にむせいでいたが、カノンはせめて色くらい変えてくれればいいのになと、こっそり胸のうちで呟いている。
だが、初夏を迎えるギリシアの気候に、アロハは有難い。
早速間違えぬよう名前をタグの裏に書いている兄に先んじて、カノンはアロハを着て外へと出かけた。
街から戻ってくると、途中で何人かの雑兵にすれ違った。
元聖域の敵対者でもあり、現海将軍でもあるためか、常日頃のカノンに対する雑兵や神官の態度は遠慮がちだ。
出会っても遠巻きに頭を下げられるか、良くて「こんにちはジェミニ様」と声をかけられる程度である。
もっとも、サガのほうも話を聞けば似たり寄ったりの状況らしく、ようするに双子座はまとめて厄介者扱いなのかもしれない。
それは、自分たちの過去の行いを考えれば仕方の無いことだ。
せめて無用な軋轢は避けようと、カノンはサガを真似て穏やかに歩く。
しかし、今日の雑兵たちの反応は違った。
「おかえりなさい、カノン様」
「そのアロハ、似合っておりますね」
一瞬立ち止まって真顔になるほど、カノンは驚いた。
未だかつて、こんなにフレンドリーに寄って来られたためしは無い。サガに化けているときは別だが。いや、今とて自分の中では随分サガの立ち振る舞いを真似ていた筈なのだ。しかし、名前を呼ばれた。
(気が緩んでいて、サガの擬態が疎かだったのだろうか)
それでも、カノンとしての自分に対する彼らの態度が緩やかな事は、孤独を気にも留めぬカノンをして心を和ませた。
(アテナの下さったアロハが、親近感を呼んでくれたのかもしれんな)
カノンは鼻歌を歌いながら、十二宮の階段を登っていった。
一方、すれ違った側の雑兵たちは、興奮気味に話していた。
「俺にもサガ様とカノン様の区別がついたぞ!」
「ああ、今までは区別が付かぬだけに、挨拶もしにくかったが…」
「『ジェミニ様』などという言い方で誤魔化していたものな」
「立ち振る舞いが違うときには判別もつくが、カノン様がサガ様の真似をしているときは、お手上げだったからなあ」
「サガ様もカノン様も、毎日あの服を着てくださればいいのに」
「ああ、アロハが全然似合わない方がサガ様だな」
「同じ顔なのに、どうしてカノン様はあれ程似合うのだろう」
雑兵たちの間では、暫しアロハシャツは魔法のアイテムとして囁かれる事になる。
しかし、同じサガでも黒サガ率が上がるとアロハシャツに馴染みだすことが判明し、再び雑兵たちは混乱する羽目になるのだった。
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黄金聖闘士って結構みんなアロハが似合いますよね。