なんでもない日常小話
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「くそ、地上は暑い…」
ぐったりしているカノンを尻目に、射手座は涼しい顔だ。
「そうか?ギリシアの夏はこんなもんだろ。暑い方がやる気が出るよ」
「お前は頭の中身も元気だな」
「カノン、君こそ暑いと言いつつその長髪を切ろうとしないじゃないか」
「サガが切らないからな」
「そういえばサガは夏でも暑苦しい法衣でも涼しい顔をしてるよね」
二人の視線が、丁度部屋へ入ってきたサガへ向けられる。
サガは、親友と弟の目の前へカキ氷を置くと首をかしげた。
「カミュほどには至らずとも、小宇宙で原子運動の速度を落とし、数℃体感温度を下げるくらいならお前達にも可能だろう」
「ああ、なるほど!早速やってみるよ」
ものは試しとアイオロスが小宇宙を燃やし始める。
暫くして、サガが微妙な顔をし始めた。
「…冷却ではなく燃焼していないか?」
「おいおい、カキ氷が溶けてきたぞ」
慌ててカノンが自分の分のカキ氷を口にかきこんでいる。
アイオロスは首を捻りながらも小宇宙をおさめた。
「うーん、どうもコツが掴めん。サガが冷やした空間にくっついていた方が早そうだ」
「私も自分の周囲ほどしか冷やせないが…」
「問題ないよ」
言うなり、アイオロスは立っていたサガを自分の膝上に引っ張り込んだ。身体全体でぎゅうっとそのまま抱きしめる。
見た目には暑苦しい事この上ないが、確かにサガの周囲は若干冷えていたので遠慮なく顔を擦り付ける。
「こら、ロス!私は冷房代わりか」
「ああ、肌が冷たくて気持ちいいね」
「変なところに触るな、くすぐったい」
ゴゴゴゴゴ
車田的効果音および暗雲とともに、急激に室温が下がった。
環境の変化に敏感な黄金聖闘士二名が冷気の発生源の方を見ると、カノンが冷蔵庫並みに冷気を発生させている。沸いた暗雲から今にも雷雨が発生しそうな勢いだ。
「うわあ、凄いね。それ海龍の能力?」
原因であるアイオロスがサガを抱きしめたままのん気に感心している。
「サガ、オレの傍に居た方が涼しいぞ」
剣呑な顔をしたカノンがサガに近づくと片側から身体を奪いとった。
アイオロスも腕を放さないので、サガは両側から挟まれる格好となる。
「ありがとうカノン。涼しいが…何故か空気が重くなったように感じるのは何故だろう」
鈍感なサガは事態が判っていなかった。
「こうして愛する者に囲まれて過ごせるのも、昔の私の罪を思えば過ぎた僥倖だな」
けれどサガが更にこんな言葉を続けて、その顔が本当に幸せそうだったものだから、アイオロスもカノンも張り合いは止めて、双方からサガに寄りかかる。
サガがそのままシェスタに入った後、小声でアイオロスは親友の弟に囁いた。
「両方がお母さんでもいいよね」
「どんな越前裁きだよ」
肩をすくめながら、二人もまた暖かな眠りに落ちる。
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カノンが海龍ならではの特殊能力を持っていたりしたら美味しいなあ
相当昔の参加サークル名&活動名を、今でも覚えてくださっている方がいらっしゃる事が嬉しく、また光栄です。昨年こっそり星矢に出戻ると同時にサイトを作成してみました。出戻ってみたらDVDは出ているわ、星矢関連漫画(エピGや冥王神話)は出るわ、マイスは出ているわ、ネットで星矢二次創作読み放題だわでパラダイス状態です(笑)
当事と変わらず至らぬ創作物を乱造しておりますが、生暖かく見守っていただければ幸いです(^▽^)
昔からの星矢ファンの方にこうして再びお目にかかることが出来るというのも、何かの縁かなと感じます。声をかけてくださって有難うございました!