星矢関連二次創作サイト「アクマイザー」のMEMO&御礼用ブログ
昨日はいい風呂の日だったから…
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ぼんやりとした意識が固まり始め、己が人間であったことを思い出すころには、周囲の様子もだんだんに判ってきた。
薄暗い虚無がどこまでも続いている。その虚無のなかで、サガはぽつんと上体を起こして座っているのであった。身体を見下ろすと、死出の装いである。死んだときに纏わされたのであろう。
亡者としてただ苦痛を受けるだけの存在であったときと異なり、今のサガには自我がある。それゆえに、何故自分が目覚めさせられたのかは、理解していた。
「さっさと起きろ」
忌々しそうに命じる声がして、振り向くとそこには黒光りする闘衣を纏った男がいた。冥衣だ。闘気の鋭さと身のこなしからして、上位の冥闘士と思われる。随分と大きな羽を背負っている。
慎重にサガが立ち上がると、その男はついて来いと踵を返した。
「どこへ?」
端的に問うと、込められた疑念をすべて汲み取ったようで、蔑みを隠さぬ応えがあった。
「貴様らは冥界軍の先兵として蘇生を許された。ハーデス様は心優しいお方ゆえ、走狗であれ冥衣を賜るとの仰せだ。その前に、まずは身を清めさせよとの命が下されている」
不服ながら従っているという空気がありありと伝わってくる。聖闘士ごときがと視線が語っている。正規の冥闘士ではなく、聖域の人間を使役することが気に食わないのだ。そして信用もしていないのだ。
疑惑の視線を、サガは素知らぬ顔で無視した。
空間を飛んで案内された先には、泉があった。四方を荒れた岩壁で囲まれた小さな泉であったが、底からこんこんと水の湧き出でる様子が潤いを感じさせた。教皇宮の沐浴施設には遠く及ばなくとも、水に浸かることが出来るということだけで正直ありがたい。死衣装は煤ぼけて土にまみれていてる。
サガはするりと衣を脱ぎ捨て、泉へ足を浸けた。空っぽの肉体へ、しっとりと水気が滲みこんでいくようだ。ああ、とサガは思わず声を漏らす。”感覚を得る”ということ自体、死後にはなかったことだ。
監視の冥闘士のことなど気にせず、手足を禊ぎ、身体を清める。水を被り、埃まみれ髪を梳いて洗い流す。身体中が満たされたと感じたころ、気づくと冥衣が己を覆っていたのであった。
「お前は、ここを使わぬのか?」
冥闘士へ声をかけたのは、親切心からではあったが、返ってきたのは冷たい無言の視線だ。肩をすくめるも、サガとて返事を期待したわけではない。監視役の男が敵の前で裸になるわけがないのだった。
いまや同じ黒輝の冥衣を纏ったサガは、気持ちよさそうに髪を払った。
気持ち悪い。ラダマンティスは思った。
聖域へ攻め込むのに、聖闘士の亡者を使うということ自体がどうなのだ。
パンドラの命のままに亡者を血の池へ連れていくと、亡者は嬉しそうに自らその穢れへと浸かり、身体を浸している。
仮にも地獄であるので、罪人には苦痛を生むはずの血溜まりなのだが、効かぬということであればこの亡者が罪を持っていないのか、罪の自覚がないのか、もしくはハーデス様によって感覚を変えられているのか、いずれにせよまともではない。
地獄というのは精神世界だ。亡者の見る世界は、生者である自分の見えている世界とは異なるのかもしれない。しかし理解する気にもならない。
亡者のぬけるような白い肌が、血の池へ浸かるごとに赤みを増していく。まるで罪と穢れで出来た血を吸収して命を吹き込んでいるかのようだ。血でありながら乾いてこびりつくことなく、水のようにサガのなかへと滲みこんでいく。不思議なことに、濡れた髪も艶々と輝きを増しているようだ。
しかし、その美しさが気持ち悪い。これはあくまで亡者の美だ。
心の中でラダマンティスが悪態をつくと、いつの間にか冥衣姿となったサガが、こちらを見ている。
「お前は、ここを使わぬのか?」
声までも色を増している。亡者の声は、生者に毒しかもたらさないというのに。
(汚らわしい、死人が)
そう思いつつ、否定しきれない何かが彼の心に忍び込む。
その何かは、死を魅力的であるかのように思わせる汚濁だ。いや、冥界の王を主と仰ぐ冥闘士にとって、死を美しいと思うことは正しいのだろうか。
ラダマンティスはギリ…と唇を噛んで視線を逸らした。
己へ命の輝きを教える者が、目の前の男の弟であることなど、彼はまだ知る由もなかった。
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あっ、でも蘇生したサガが入る血の池地獄は別府あたりので!
アイアコスあたりと温泉旅行してほしいココロ!
何でアイアコスなのかというと、私の趣味でしかない!(>ω<)
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ぼんやりとした意識が固まり始め、己が人間であったことを思い出すころには、周囲の様子もだんだんに判ってきた。
薄暗い虚無がどこまでも続いている。その虚無のなかで、サガはぽつんと上体を起こして座っているのであった。身体を見下ろすと、死出の装いである。死んだときに纏わされたのであろう。
亡者としてただ苦痛を受けるだけの存在であったときと異なり、今のサガには自我がある。それゆえに、何故自分が目覚めさせられたのかは、理解していた。
「さっさと起きろ」
忌々しそうに命じる声がして、振り向くとそこには黒光りする闘衣を纏った男がいた。冥衣だ。闘気の鋭さと身のこなしからして、上位の冥闘士と思われる。随分と大きな羽を背負っている。
慎重にサガが立ち上がると、その男はついて来いと踵を返した。
「どこへ?」
端的に問うと、込められた疑念をすべて汲み取ったようで、蔑みを隠さぬ応えがあった。
「貴様らは冥界軍の先兵として蘇生を許された。ハーデス様は心優しいお方ゆえ、走狗であれ冥衣を賜るとの仰せだ。その前に、まずは身を清めさせよとの命が下されている」
不服ながら従っているという空気がありありと伝わってくる。聖闘士ごときがと視線が語っている。正規の冥闘士ではなく、聖域の人間を使役することが気に食わないのだ。そして信用もしていないのだ。
疑惑の視線を、サガは素知らぬ顔で無視した。
空間を飛んで案内された先には、泉があった。四方を荒れた岩壁で囲まれた小さな泉であったが、底からこんこんと水の湧き出でる様子が潤いを感じさせた。教皇宮の沐浴施設には遠く及ばなくとも、水に浸かることが出来るということだけで正直ありがたい。死衣装は煤ぼけて土にまみれていてる。
サガはするりと衣を脱ぎ捨て、泉へ足を浸けた。空っぽの肉体へ、しっとりと水気が滲みこんでいくようだ。ああ、とサガは思わず声を漏らす。”感覚を得る”ということ自体、死後にはなかったことだ。
監視の冥闘士のことなど気にせず、手足を禊ぎ、身体を清める。水を被り、埃まみれ髪を梳いて洗い流す。身体中が満たされたと感じたころ、気づくと冥衣が己を覆っていたのであった。
「お前は、ここを使わぬのか?」
冥闘士へ声をかけたのは、親切心からではあったが、返ってきたのは冷たい無言の視線だ。肩をすくめるも、サガとて返事を期待したわけではない。監視役の男が敵の前で裸になるわけがないのだった。
いまや同じ黒輝の冥衣を纏ったサガは、気持ちよさそうに髪を払った。
気持ち悪い。ラダマンティスは思った。
聖域へ攻め込むのに、聖闘士の亡者を使うということ自体がどうなのだ。
パンドラの命のままに亡者を血の池へ連れていくと、亡者は嬉しそうに自らその穢れへと浸かり、身体を浸している。
仮にも地獄であるので、罪人には苦痛を生むはずの血溜まりなのだが、効かぬということであればこの亡者が罪を持っていないのか、罪の自覚がないのか、もしくはハーデス様によって感覚を変えられているのか、いずれにせよまともではない。
地獄というのは精神世界だ。亡者の見る世界は、生者である自分の見えている世界とは異なるのかもしれない。しかし理解する気にもならない。
亡者のぬけるような白い肌が、血の池へ浸かるごとに赤みを増していく。まるで罪と穢れで出来た血を吸収して命を吹き込んでいるかのようだ。血でありながら乾いてこびりつくことなく、水のようにサガのなかへと滲みこんでいく。不思議なことに、濡れた髪も艶々と輝きを増しているようだ。
しかし、その美しさが気持ち悪い。これはあくまで亡者の美だ。
心の中でラダマンティスが悪態をつくと、いつの間にか冥衣姿となったサガが、こちらを見ている。
「お前は、ここを使わぬのか?」
声までも色を増している。亡者の声は、生者に毒しかもたらさないというのに。
(汚らわしい、死人が)
そう思いつつ、否定しきれない何かが彼の心に忍び込む。
その何かは、死を魅力的であるかのように思わせる汚濁だ。いや、冥界の王を主と仰ぐ冥闘士にとって、死を美しいと思うことは正しいのだろうか。
ラダマンティスはギリ…と唇を噛んで視線を逸らした。
己へ命の輝きを教える者が、目の前の男の弟であることなど、彼はまだ知る由もなかった。
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あっ、でも蘇生したサガが入る血の池地獄は別府あたりので!
アイアコスあたりと温泉旅行してほしいココロ!
何でアイアコスなのかというと、私の趣味でしかない!(>ω<)