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カノンが兄の部屋に入ったとき、ふと卓上を見ると写真が飾ってあった。
一体誰の写真を置いているのだという好奇心から手にとって確認してみると、それは幼少の自分とサガの二人が、双児宮を背後に並んで笑っているものだった。
自分は聖域ではその存在を秘めていたため、このような記録媒体に姿を残した覚えは無い。ましてサガと二人で写真を撮った覚えなどない。
「何だこれは?」
不思議に思っていると、サガがそれに気づいて恥ずかしそうに言い訳をした。
「それは私の作った写真…念写だ。お前の存在が明らかとなった今ならば問題ないだろうと思って、蘇生後に撮ってみたのだ」
思い出を形としても取って置きたくてというサガの言葉を聞き、カノンは内心照れたものの、表面上は素っ気無く写真立てを元の位置へ戻した。
そして、早速自分もその念写とやらを試してみようと自室へと戻ったのだった。
数日後、今度は黒サガがカノンの部屋を訪れた。
黒サガが居心地の良い寝場所を求めて勝手に弟の部屋に立ち入るのはいつもの事で、ノックをしても返事は待たない横暴さの事を、カノンは既に諦めていた。
今日も干したての弟の布団の上に転がった黒サガは、枕の下に違和感を覚えて手を差し込んだ。出てきたのは1冊のミニアルバム。
「ほう、枕の下にあるのはオカズとやらと相場が決まっているらしいが」
「てめえ、人のプライバシーを何だと思っているんだ!」
カノンが慌ててそれを取り上げようとするものの、黒サガは巧みに避けつつそのアルバムを開いた。
「………」
「………」
「…何故このような健全な写真ばかりなのだ。却って恥ずかしいのだが」
「ど、どうでも良いだろ」
「このような写真ならば、念写である必要はないのではないか?」
「サガには内緒にしたかったんだよ!普通に撮ったら絶対気づくからなアイツは」
サガの笑顔ばかりを念写したポラロイド写真集を、黒サガは遠い目で黙って伏せた。
<~オマケ~>
「そういえば、私の写真はないのか」
「えっ、お前の方がそういう事を気にするとは意外なんだが」
「サガではない私の写真など、必要ないということか」
「ひがむなよ。そうじゃなくて…その、言うと怒りそうだしなあ」
「怒らぬから言ってみるがいい」
「お前の方の笑顔って、馬鹿笑いか何かを企んでいそうな邪悪笑いしか想像できなくてさ。そういうのばっかり念写するのはちょっと」
怒らないと言ったのに、カノンは思いっきり黒サガに殴られた。
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