星矢誕生日おめでとう!(>▽<)
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双児宮の朝は早い。朝食作成をカノンに任せ、サガはソファーで本日必要な書類の最終チェックを行っていた。台所からは食欲をそそるスープの匂いが漂ってくる。
ふとサガは来訪者の気配を察知して顔をあげた。
それと同時に、元気な星矢の声が響き渡る。
「おはよーございまーす!入っていいかな」
「星矢」
まとめていた書類をバサリとテーブルへ置き、サガは嬉しそうに立ち上がった。『星矢>書類』の図があきらかだ。
「今からアテナのところへ行くのか?随分と早いな」
「沙織さんに呼ばれたのはもっと後なんだけど、その前にみんなに挨拶していけたらなって思って、少し早めに来たんだよ」
ムウやアルデバランのところも、簡単だけど挨拶をしてきたんだと星矢は笑う。
「急いでいないのなら、朝食を取っていかないか?カノンが今用意をしているのだ」
「えっ、いいのか?」
「勿論だ。アテナの用意する祝い膳には遠く及ばないが」
「あれ、知ってたの?」
きょとんとする星矢に、サガは花のほころぶような笑顔を向けた。
「今日はお前の生まれた日…なれば、アテナがお前を呼ぶ理由は1つしかあるまい」
そう言うと星矢は照れたように頭をかいた。
「大々的な生誕祭とかは断ったんだけどさ、そうしたら、じゃあ仲間内でのささやかなお祝いをしましょうって、沙織さんが」
大富豪の後継者として育った沙織の『ささやか』が、貸切ガーデンパーティーレベルのものであることを、まだ二人は知らなかった。
「それより、サガがオレの誕生日を知ってることに驚いた」
「わたしは、自分が任命した聖闘士の誕生日はすべて覚えている」
「凄いなあ。あ、じゃあ別にオレが特別ってわけじゃないのか。残念」
ちら、と悪戯っぽくサガを見上げた星矢へ、サガは慌てて付け足した。
「いや、お前は特別だ」
「ほんと?」
「本当だ。その、何も用意はしておらぬが…」
サガはすっと腰を落とし、星矢に視線を合わせた。
「双子座のサガより、ペガサスの星矢へ祝福を送る」
「え、ちょっと、サガ」
どこか慌てた様子の星矢の額へ、サガのキスが届こうとした寸前、
ゴ、と大きな音がして、サガの頭にカノンの拳骨が落ちた。
周囲に気の回っていなかったサガは、珍しく避ける事も出来ず頭を抑えている。
「な、何をするのだカノン!」
サガが抗議の視線を向けると、カノンは冷たい視線でそっけなく言い放った。
「それはこちらの台詞だっての。よくみろ、そいつはリュムナデスだ」
「ええっ?」
思わずサガは声を上げた。星矢の方をみれば、そこには既に星矢の姿はなく、素の姿であるカーサが多引き気味に立っている。
「な、何故カーサガここに…?」
「オレが呼んだ。今日の出張はこいつと一緒なのでな」
サガは赤くなって押し黙った。いつもならば、これほどあっけなく騙されることなどないのだが、今日が星矢の誕生日であることと、海将軍が聖域にいるわけがないという先入観が重なり、不覚をとったようだ。
「し、しかし彼はペガサスの誕生会の事を知っていたぞ」
「あ、それはオレが話したからなんだ!」
横合いから聞こえた星矢の声に、今度こそサガは光速で振り向いた。
「せ、星矢?本物の?」
どういう状況なのか目を白黒させているサガに、星矢が近付いてくる。
「カーサとそこで一緒になってさ。カーサがオレに化けるっていうから隠れていたんだけど」
「わたしをからかうつもりだったのか」
「ごめん!でも嬉しくって」
星矢はすまなそうに両手を目の前で合わせ、サガに謝る。
「だって、カーサは相手の大事な人間にしか化けられないっていうから…それだけでも嬉しいのに、オレの誕生日をサガが覚えててくれたなんて」
謝りながらも本当に嬉しそうな星矢の様子に、サガは真っ赤になって視線を逸らしている。
「あー、オレたちは先に朝食食ってるからなー」
呆れた様子を隠さずカーサと共に食卓へ向かったカノンを尻目に、星矢は『さっきのお祝い、ちゃんと欲しいな』とサガにねだった。
星矢はいろんな人にお祝いされるといいと思います。道すがら雑兵とかにも声をかけられるに違いない!
このあとはアテナと青銅仲間が昼間にお祝いしてくれて、夜は星華ねえさんと一緒に過ごすという王道です。昼間のパーティーのお土産のお菓子に、星華ねえさんの作ったご馳走(といっても庶民レベル)を食べながら、一日の出来事を星華に話す星矢。そんな時間が1番幸せですよね。