星矢関連二次創作サイト「アクマイザー」のMEMO&御礼用ブログ
サイトへ移動するときに推敲しようそうしよう。
いつものクロスオーバー。海界マーブルの続き。
============================
見上げれば天空代わりの海面が、ゆらゆらと青みの濃い光を放っている。海界での当たり前の風景だ。
岩に腰掛けたデフテロスは、先ほどから話しかけてくるカーサを無視している。以前兄に化けて騙されたのをまだ怒っているのだ。
その兄のほうは、聖域から預かった書状を持って、ポセイドン神殿へ行っている。デフテロスは兄の戻りを待ちながら、こうして時間つぶしをしているというわけだ。
「悪かったと言ってるじゃないスか。大体あれは、アスプロスの方から持ちかけてきた話で」
「………」
「マーブル状態の精神を探るのはいい鍛錬になるってんで、頼み込んで本人の許可を貰ったのに、アスプロスの内面を覗こうとするたびにアンタに攻撃されちゃたまらないんだが」
「………」
そう、以前アスプロスへ訓練のために心を覗かせてもらうことを頼み込んだカーサは、「まず弟にその技を試しているのを見てから」という言い分を聞き入れたことがあるのだ。
アスプロスに化けたカーサのことを、疑いつつも騙されたデフテロスは、すっかりリュムナデスに対して壁を作ってしまっている。
全く無反応のデフテロスを見て、カーサは呆れたように息をつき、それから正攻法でいくことにした。あくまで『リュムナデスとして』の正攻法だ。
「デフテロス」
突如、カーサの声がアスプロスの声色に変わった。びくりとデフテロスが振り向く。
リュムナデスが兄に化ける事は想定していて、そのようなものに二度も誑かされるつもりは無いデフテロスであったが、人の心を読むことに長けたリュムナデスはその上を行った。
まだ杳馬に闇を落とされていない、子供の頃のアスプロスの姿をとったのだ。
黄金聖闘士ですらない、幼い雑兵時代の少年アスプロスが、デフテロスの顔を覗き込む。
「お前は俺のことが、嫌いなのか?」
キラキラと曇りの無い瞳、真っ直ぐで揺るぎの無い表情、全てがデフテロスの愛した兄そのものだった。
一瞬、デフテロスの表情が怒ったように歪む。
次の瞬間、デフテロスの両手が、アスプロスの細い首を締めるようにかけられた。
「貴様、殺してやる!」
だが、アスプロスはそれでも笑い、デフテロスを見つめ返している。
「お前が本当にそうしたいのなら。そして、俺を超えていくのなら」
リュムナデスの真価は、外面を写す事ではなく、内面を写すところにある。見目だけ同じ相手を倒す事については躊躇しない人間でも、中身まで最愛の者と同じ存在を倒す事は難しい。
暫くたったあと、デフテロスも首にかけた両手を離した。戦場であれば情愛を切り捨てる覚悟はあるものの、この程度の出来事で、偽者であれ兄の似姿を壊す事は、奥底のなにかが拒否した。
そのまま持ち上げられた両手の掌が、少年アスプロスの頬を包み込むように触れる。
目の前の兄の背丈は、今のデフテロスの半分もない。
(こんな小さな身体で、あの頃のアスプロスは精一杯俺を守ってくれたのだ)
カーサが具現化せずとも、デフテロスの心のなかに今でもハッキリと当時の兄の姿は思い浮かぶ。
過酷な生活環境にくわえ、差別の横行していた聖域で、生き残ることが出来たのはアスプロスのお陰だ。謙遜でも色眼鏡でもなく、本当にそうなのだ。
「…カーサ、貴様はずるい」
初めてデフテロスは海将軍の名を口にした。
「俺はアスプロスだ」
少しムッとした顔で少年が睨む。本物か偽者かという違いだけで、全てを写し取った彼が『アスプロス』なのは間違いない。
「お前を許してやる。だから、少しこのままでいさせろ」
デフテロスはそう言って、小さなアスプロスを抱きしめた。
「ほお…仲がいいのだな」
しかし、近くから聞こえてきたいつもの兄の声で、デフテロスは文字通り飛び上がった。
声をした方をむくと、仕事を終えて戻ってきたアスプロスが、白い法衣に似つかわしい輝かんばかりの笑顔でこちらを見ている。少なくともデフテロスには本当に輝いて見える。
だが、デフテロスの背中には冷や汗が流れた。
(あの笑顔は、相当怒っている…)
動揺しているデフテロスへ、アスプロスはにっこりと笑顔のまま告げる。
「闇と業にまみれた俺などよりも、その綺麗な昔の俺のほうが良いのは当然だからな。俺は聖域に帰るが、お前はゆっくりしてくればいい」
「ち、違うのだ兄さん」
他人であるカーサの目など気にする余裕もなく、間の悪さにデフテロスは泣きそうだった。
一方、カーサは冷静だった。
ちらりとアスプロスに視線を向けると、アスプロスはデフテロスに気づかれぬよう、目で僅かに笑い返す。
(ああ、やっぱりな…わざと煽ってやがる。この男は、弟が自分のことで必死になるのが嬉しいのだ)
ごちそうさまと言うべきか、闇の一滴で歪んでしまった兄を持つ弟の運命に同情するべきか。
馬に蹴られる前に、さっくり逃走すべく後ずさりを始めたカーサの脳裏へ、アスプロスからの小宇宙通信が届く。
『今度こっそり、デフテロスの子供の頃の姿になってくれ』
その場から逃げながら、同じ方法がサガとカノンに効くかどうか算段を始めたカーサも、ある意味懲りないアスプロスの同類なのだった。
============================
思い立ったが吉日ということで、マイスのケースを注文してみました!
大手工房さんのこれです(>▽<)!届いて使ってみて、具合が良かったら双子神用も注文してみようかなあ…
いつものクロスオーバー。海界マーブルの続き。
============================
見上げれば天空代わりの海面が、ゆらゆらと青みの濃い光を放っている。海界での当たり前の風景だ。
岩に腰掛けたデフテロスは、先ほどから話しかけてくるカーサを無視している。以前兄に化けて騙されたのをまだ怒っているのだ。
その兄のほうは、聖域から預かった書状を持って、ポセイドン神殿へ行っている。デフテロスは兄の戻りを待ちながら、こうして時間つぶしをしているというわけだ。
「悪かったと言ってるじゃないスか。大体あれは、アスプロスの方から持ちかけてきた話で」
「………」
「マーブル状態の精神を探るのはいい鍛錬になるってんで、頼み込んで本人の許可を貰ったのに、アスプロスの内面を覗こうとするたびにアンタに攻撃されちゃたまらないんだが」
「………」
そう、以前アスプロスへ訓練のために心を覗かせてもらうことを頼み込んだカーサは、「まず弟にその技を試しているのを見てから」という言い分を聞き入れたことがあるのだ。
アスプロスに化けたカーサのことを、疑いつつも騙されたデフテロスは、すっかりリュムナデスに対して壁を作ってしまっている。
全く無反応のデフテロスを見て、カーサは呆れたように息をつき、それから正攻法でいくことにした。あくまで『リュムナデスとして』の正攻法だ。
「デフテロス」
突如、カーサの声がアスプロスの声色に変わった。びくりとデフテロスが振り向く。
リュムナデスが兄に化ける事は想定していて、そのようなものに二度も誑かされるつもりは無いデフテロスであったが、人の心を読むことに長けたリュムナデスはその上を行った。
まだ杳馬に闇を落とされていない、子供の頃のアスプロスの姿をとったのだ。
黄金聖闘士ですらない、幼い雑兵時代の少年アスプロスが、デフテロスの顔を覗き込む。
「お前は俺のことが、嫌いなのか?」
キラキラと曇りの無い瞳、真っ直ぐで揺るぎの無い表情、全てがデフテロスの愛した兄そのものだった。
一瞬、デフテロスの表情が怒ったように歪む。
次の瞬間、デフテロスの両手が、アスプロスの細い首を締めるようにかけられた。
「貴様、殺してやる!」
だが、アスプロスはそれでも笑い、デフテロスを見つめ返している。
「お前が本当にそうしたいのなら。そして、俺を超えていくのなら」
リュムナデスの真価は、外面を写す事ではなく、内面を写すところにある。見目だけ同じ相手を倒す事については躊躇しない人間でも、中身まで最愛の者と同じ存在を倒す事は難しい。
暫くたったあと、デフテロスも首にかけた両手を離した。戦場であれば情愛を切り捨てる覚悟はあるものの、この程度の出来事で、偽者であれ兄の似姿を壊す事は、奥底のなにかが拒否した。
そのまま持ち上げられた両手の掌が、少年アスプロスの頬を包み込むように触れる。
目の前の兄の背丈は、今のデフテロスの半分もない。
(こんな小さな身体で、あの頃のアスプロスは精一杯俺を守ってくれたのだ)
カーサが具現化せずとも、デフテロスの心のなかに今でもハッキリと当時の兄の姿は思い浮かぶ。
過酷な生活環境にくわえ、差別の横行していた聖域で、生き残ることが出来たのはアスプロスのお陰だ。謙遜でも色眼鏡でもなく、本当にそうなのだ。
「…カーサ、貴様はずるい」
初めてデフテロスは海将軍の名を口にした。
「俺はアスプロスだ」
少しムッとした顔で少年が睨む。本物か偽者かという違いだけで、全てを写し取った彼が『アスプロス』なのは間違いない。
「お前を許してやる。だから、少しこのままでいさせろ」
デフテロスはそう言って、小さなアスプロスを抱きしめた。
「ほお…仲がいいのだな」
しかし、近くから聞こえてきたいつもの兄の声で、デフテロスは文字通り飛び上がった。
声をした方をむくと、仕事を終えて戻ってきたアスプロスが、白い法衣に似つかわしい輝かんばかりの笑顔でこちらを見ている。少なくともデフテロスには本当に輝いて見える。
だが、デフテロスの背中には冷や汗が流れた。
(あの笑顔は、相当怒っている…)
動揺しているデフテロスへ、アスプロスはにっこりと笑顔のまま告げる。
「闇と業にまみれた俺などよりも、その綺麗な昔の俺のほうが良いのは当然だからな。俺は聖域に帰るが、お前はゆっくりしてくればいい」
「ち、違うのだ兄さん」
他人であるカーサの目など気にする余裕もなく、間の悪さにデフテロスは泣きそうだった。
一方、カーサは冷静だった。
ちらりとアスプロスに視線を向けると、アスプロスはデフテロスに気づかれぬよう、目で僅かに笑い返す。
(ああ、やっぱりな…わざと煽ってやがる。この男は、弟が自分のことで必死になるのが嬉しいのだ)
ごちそうさまと言うべきか、闇の一滴で歪んでしまった兄を持つ弟の運命に同情するべきか。
馬に蹴られる前に、さっくり逃走すべく後ずさりを始めたカーサの脳裏へ、アスプロスからの小宇宙通信が届く。
『今度こっそり、デフテロスの子供の頃の姿になってくれ』
その場から逃げながら、同じ方法がサガとカノンに効くかどうか算段を始めたカーサも、ある意味懲りないアスプロスの同類なのだった。
============================
思い立ったが吉日ということで、マイスのケースを注文してみました!
大手工房さんのこれです(>▽<)!届いて使ってみて、具合が良かったら双子神用も注文してみようかなあ…