というわけで、1つ前のブログ記事のアスデフ戯言をSSに…デフが乙女とかもう…
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一緒にカノン島で暮らすようになったものの、デフテロスとアスプロスの仲は清いままだった。
(寝台まで共有しているというのに、アスプロスは俺に触れようとしない…)
デフテロスとしても別に性急な深い関係を望んでいるわけではないのだが、兄が自分に対して無関心なのではないかと思うと不安がつのる。
いや、無関心ならばまだ構わない。知らぬところで嫌われていたら一体どうしたら良いのだろう。
過去にアスプロスから誤解され、捨て駒扱いされたトラウマは、未だにデフテロスへ根深く残っていた。ちなみに、兄弟としては現状が普通であるという思考には至っていない。彼は凶星を持つものとして差別を受けて育っていたため、他人との接触は一切許されておらず、一般的な人間関係における常識に多少疎かったのだ。
彼にとって一番身近な肉親サンプルといえばサーシャとアローンだった。これはこれで普通の兄妹関係ではない。しかし、デフテロスは神頼みとばかり、彼らを参考にすることとした。
(確か女神は花輪をつくり、兄とペガサスへ与えたと聞く)
花の腕輪はアテナの小宇宙を帯び、テンマを死の淵から救ったという。神ならぬ身の小宇宙では花輪にそのような効果を持たせることは適わないだろうが、気持ちくらいは伝わるのではないだろうか。
そんなわけで、デフテロスは望みを託して花輪を作ることにした。カノン島のような火山島では花を見つけること自体大変だったけれども、デフテロスは根気よく探した。アスプロス(白)の名にちなみ、島のあちこちから白い花だけを集め、兄に渡すまで萎れぬように小宇宙で保たせる。
なにぶん初めて作るものゆえに、腕輪サイズに収まるものを作ることが出来ず、完成したのは花冠だった。
それでも大小さまざまな花を集めた花冠は、なかなかに美しい。
完成させた純白の花冠を持ってデフテロスはアスプロスの前に立った。
「受け取れ、アスプロス」
花冠を突きつけられたアスプロスはといえば、平静を装っている様子だが、どこか引き気味のようでもある。デフテロスは挫けそうになったものの、そこはカノン島で2年間鍛えた我で踏みとどまる。
無言ながら花冠を受け取った兄の態度に勇気を振り絞り、彼はそのままアスプロスへ想いを告げた。
「俺は兄さんになら、何をされてもいいのだ」
相変わらず言葉の足りない台詞ではあったが、自ら意志を表明し、何かをするということに馴れぬデフテロスにとっては、精一杯の告白だ。そして大博打でもあった。
戦闘では何者をも恐れたことがないというのに、兄の前では拳が震える。
受け取って欲しいのは、デフテロス自身もだ。
しかし、望んだ返答はなかった。
アスプロスは告白を聞いた途端、顔色を変えた。先程までの表情を一転させ、怒っているようにさえ見える。
「デフテロス、二度と今のような言葉を口にするな」
少しして兄の口から吐き出されたのは、そんな否定の言葉。
一瞬で世界が暗くなる。
(否定される事には、慣れているつもりだったのだが)
デフテロスは俯いた。そのまま顔を上げることが出来ない。何でもないように振舞わねばと頭の片隅では考えているのだが、身体が動かない。
(怒るほど、アスプロスは嫌なのだ、俺が)
身体だけではなく、思考もうまく動かないまま、時間だけが流れていく。
そんな様子を不審に思ったのか、アスプロスが表情を少し和らげた。
「デフテロス、お前はもっと自分を大事にしろ」
「アスプロス」
続けられた言葉は、予想していた言葉と少し異なった。
「お前がたとえ、俺の犠牲になってもいいだの、俺に殺されてもいいだの思ったとしても、俺が嫌だ」
思わずデフテロスは顔を上げ、言い切ったアスプロスを見つめる。
アスプロスは視線を逸らさずに、渡された花冠を被る。
「白い花は死者への手向け…どうせこれも、自分が死んでも構わないという意思表明かなにかだろう?俺にたむけろと渡すのだろう?絶対にごめんだ。だいたいお前には葬式の花など似合わん」
弟をなじる兄は饒舌だった。そして、その内容は全くデフテロスの伝えたいコトとはかけ離れていた。
そうだった、アスプロスは昔からデフテロスの言動を真っ直ぐには受け取らないのだ(半分は闇の一滴のせいで)。どうしていいのか判らず、呆然と見つめるままのデフテロスへ、アスプロスは勘違いをしたままに決め付ける。
「この花は俺が貰う。お前は二度と俺に殺されても良いなどと言うな」
また誤解をうけたというのに、何故か今回は心が痛まなかった。
偉そうに命令口調で言うアスプロスは、思った以上に花冠が似合っていて、デフテロスは兄の勘違いを訂正するのも忘れてその姿に魅入っていた。
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今日もめるへん…眠いので推敲はあとで…