星矢関連二次創作サイト「アクマイザー」のMEMO&御礼用ブログ
タナトスと黒いほう
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冥府へと飛んだサガは、小高い丘の一角にたち、周囲をぐるりと見回した。
聖戦時、ハーデスの敗北とともに1度崩壊したこの世界は、新たに造り直されたものの、当初は荒廃した不毛の地でしかなかった。かつて存在した地獄の数々も『死後まで人間を罰しないこと』というアテナの希望により失われている。
しかし今、眼下には細々とではあるが血の川が流れ、その脇には針の山が生まれつつある。地獄が少しずつ復活しているのだ。
サガはそれらを冷めた目で眺めている。
その背に、後ろから声がかけられた。
「珍しいな、オレの呼び立てにお前のほうが応えるとは」
話しかけたのはタナトスだったが、サガは振り向くでもない。崖下から吹き上がった風で、黒に染まった髪がわずかになびく。黒髪は闇を司るほうのサガが表に出ている印だ。
「アレを指名するのならば、ここを待ち合わせ場所に指定はしまい」
「そういうわけでもないのだが」
サガの不遜な物言いを、タナトスは寛容に流した。聖戦前には決してありえなかったことだ。
「だがまあ、確かにお前に見せてやりたかった。この景色を」
タナトスの言葉に、ようやくサガが振り向く。
「わたしに?」
「そうだ。お前は地獄が失われることに、不満があったようだからな」
白のサガであれば否定したろう。それはアテナの意向に異を唱えるも同然だからだ。しかし黒のサガは苦笑しつつも頷いた。
「神に隠し事はできぬか。ああ、わたしは地獄が必要と考える。人間への抑止力として」
「聖闘士のくせに、そこはハーデス様と同じ意見か」
「同じではない。罰が永劫に必要とは思わぬ…しかし、良いのか?」
『良いのか』というのは、敗界が女神の希望を無視して、地獄を復興させようとしていることに対しての問いだ。このことが聖域側に伝われば、ひと悶着あるだろう。
だがタナトスは楽しそうに笑った。
「地獄を生んでいるのは我々ではない。人間だ」
「なに?」
「地上に流れた血が川をつくり、正義を求める人間が針山を育む。人は浄土にのみ救いを求めるわけではない。生前に悪行をなした者が、何の制裁もないまま往生した場合、残された被害者たちは何を求めると思う?死後の裁きだ。悪人が死後には地獄で裁かれると思うからこそ、人は恨みを地獄へ託し、救われることが出来る」
「……」
「ある意味、冥府のありようを決めているのは人間よ。我らとしては生の時間の帳尻を、死後の世界に持ち込んで清算しようとするなとも思うが、それが人間の望みとあらば神として叶えぬでもない」
「…なるほど、そう言われては女神も対応に苦慮するだろう」
黒のサガは反発するでもなく答え、脳裏にアテナを思い浮かべた。
(あの小娘ならば、タナトスへどう答えるだろう)
光り輝く地上の女神ならば、サガの持たぬ答えをタナトスに示すことが出来るのかもしれない。しかし、物思いに沈みかけたサガをタナトスが引き寄せた。
「オレといる時に他の神へ余所見をするな」
思わぬ言い分を向けられ、黒のサガが目を丸くする。
「わたしはお前のものではないが」
「おまえも『サガ』であろう。嫁は夫に従うものだ」
黒サガは一瞬だけ虚をつかれたような顔をしたものの、直ぐに切り替えした。
「亭主関白などいつの時代の価値基準だ。貴様の脳内は二百年前のままか」
「人間の基準などどうでも良い。それに、オレはお前とのデートを口論だけで済ませたくはないのだが?」
今度こそ黒サガは憮然としつつも黙り込み、手に負えないとばかりに白サガへ身体の主導権を押し付けた。
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もうちょっと丁寧に書き直したいココロ。でももう出勤時間(>ω<)
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冥府へと飛んだサガは、小高い丘の一角にたち、周囲をぐるりと見回した。
聖戦時、ハーデスの敗北とともに1度崩壊したこの世界は、新たに造り直されたものの、当初は荒廃した不毛の地でしかなかった。かつて存在した地獄の数々も『死後まで人間を罰しないこと』というアテナの希望により失われている。
しかし今、眼下には細々とではあるが血の川が流れ、その脇には針の山が生まれつつある。地獄が少しずつ復活しているのだ。
サガはそれらを冷めた目で眺めている。
その背に、後ろから声がかけられた。
「珍しいな、オレの呼び立てにお前のほうが応えるとは」
話しかけたのはタナトスだったが、サガは振り向くでもない。崖下から吹き上がった風で、黒に染まった髪がわずかになびく。黒髪は闇を司るほうのサガが表に出ている印だ。
「アレを指名するのならば、ここを待ち合わせ場所に指定はしまい」
「そういうわけでもないのだが」
サガの不遜な物言いを、タナトスは寛容に流した。聖戦前には決してありえなかったことだ。
「だがまあ、確かにお前に見せてやりたかった。この景色を」
タナトスの言葉に、ようやくサガが振り向く。
「わたしに?」
「そうだ。お前は地獄が失われることに、不満があったようだからな」
白のサガであれば否定したろう。それはアテナの意向に異を唱えるも同然だからだ。しかし黒のサガは苦笑しつつも頷いた。
「神に隠し事はできぬか。ああ、わたしは地獄が必要と考える。人間への抑止力として」
「聖闘士のくせに、そこはハーデス様と同じ意見か」
「同じではない。罰が永劫に必要とは思わぬ…しかし、良いのか?」
『良いのか』というのは、敗界が女神の希望を無視して、地獄を復興させようとしていることに対しての問いだ。このことが聖域側に伝われば、ひと悶着あるだろう。
だがタナトスは楽しそうに笑った。
「地獄を生んでいるのは我々ではない。人間だ」
「なに?」
「地上に流れた血が川をつくり、正義を求める人間が針山を育む。人は浄土にのみ救いを求めるわけではない。生前に悪行をなした者が、何の制裁もないまま往生した場合、残された被害者たちは何を求めると思う?死後の裁きだ。悪人が死後には地獄で裁かれると思うからこそ、人は恨みを地獄へ託し、救われることが出来る」
「……」
「ある意味、冥府のありようを決めているのは人間よ。我らとしては生の時間の帳尻を、死後の世界に持ち込んで清算しようとするなとも思うが、それが人間の望みとあらば神として叶えぬでもない」
「…なるほど、そう言われては女神も対応に苦慮するだろう」
黒のサガは反発するでもなく答え、脳裏にアテナを思い浮かべた。
(あの小娘ならば、タナトスへどう答えるだろう)
光り輝く地上の女神ならば、サガの持たぬ答えをタナトスに示すことが出来るのかもしれない。しかし、物思いに沈みかけたサガをタナトスが引き寄せた。
「オレといる時に他の神へ余所見をするな」
思わぬ言い分を向けられ、黒のサガが目を丸くする。
「わたしはお前のものではないが」
「おまえも『サガ』であろう。嫁は夫に従うものだ」
黒サガは一瞬だけ虚をつかれたような顔をしたものの、直ぐに切り替えした。
「亭主関白などいつの時代の価値基準だ。貴様の脳内は二百年前のままか」
「人間の基準などどうでも良い。それに、オレはお前とのデートを口論だけで済ませたくはないのだが?」
今度こそ黒サガは憮然としつつも黙り込み、手に負えないとばかりに白サガへ身体の主導権を押し付けた。
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もうちょっと丁寧に書き直したいココロ。でももう出勤時間(>ω<)