猫ロス設定SSS続き
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半人半獣族のアイオロスは、普段は大型獣の格好をしています。馬ではなく一応猫科です。
それがサガの勘違いによって攫われてきて以来、双子の家に飼われているわけですが、サガがあまりにもアイオロスに構うので、カノンは時々面白くありません。ましてカノンはアイオロスが本当は青年の姿になれることも知っているのです。サガが同じ布団へアイオロスを引っ張り込むたびに「オイオイ…」と思っています。
一方アイオロスも、あんまり双子の仲が良いので最初は驚きました。
「獣族も舐めて毛づくろいをしあったり、甘噛みして気持ちを伝えたりするけど、人間もそうなんだね」
それは多分違います。
そして、サガとの寝心地があまりに良かったので、その双子の弟であるカノンとの同衾も試してみたのですが、夜中にこっそり布団へもぐりこんだところ、カノンの自由奔放な寝相で酷い目にあった上、カノンの側も寝苦しさで目を覚ましたため見つかってしまい、その時点で布団から蹴り出されてしまったのでした。
どうも双子の弟のほうの寝心地は良くないなと、遅ればせながら学習したアイオロスです。
それでいてサガと寝ているときのカノンの寝相は良いようなのです(サガはカノンともしばしば一緒に寝ています)。ちょっぴり納得がいきません。
そんなこんなですが、適当な共同生活に三人が慣れはじめた頃、カノンは兄にふと尋ねてみました。
「なあ、お前すごくアイオロスを可愛がっているよな」
「猫かわいがりという言葉があるように、猫は可愛がるものだろう」
「まだ猫と言うか…その猫が、もし人間になったらどうする?」
部屋の隅で横たわっていた獣形態のアイオロスが顔をあげ、ぎろりとカノンを睨みます。
アイオロスは何故かサガの前では単なる獣の振りをしています。カノンは別に口止めをされたわけでも、黙っていてやる義理もないのですが、何となくそれに付き合ってやっています。
アイオロスはカノンがバラすのかと危惧したのですが、カノンはあくまで「仮に」という前提で進めました。
動物が人間になるなどとは想像もしていないサガは、勿論弟の冗談だと思っています。
「それは擬人化というやつか?」
「ちょ、ちょっと違うような…」
「アイオロスが人間だったら、きっとこの見かけのとおり、可愛いのだろうな。頭に耳がついていて」
ほわ…とトリップしているサガへ、カノンは『…それオスだぞ』と突っ込んでいます。
「いや、そういうのではなく、ほら、狼男とかあるだろ、そういう風にだな」
「ああ、猫も化けると言うからな」
サガはまた考え込みました。
「狼男ではなく猫男というのだろうか?それとてきっと可愛らしいに違いないぞ。猫だしな」
「……」
目をキラキラさせて想像しているサガを見て、カノンは兄の夢を壊すような真実を話すのは止めようと考えましたし、猫男と呼ばれたアイオロスは遠い目でますます正体をバラすのは止めようと決意したのでした。
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拙宅サガはネーミングセンスもないです。
拍手くださった皆様、ありがとうございました!