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「花に嵐のたとえもあるぞ」
双魚宮での酒の席で、ふとアフロディーテがサガへ微笑んだ。
「最初に貴方からこの詩を聞いたとき、私は『儚く弱い花であっても、その美しさの内に嵐を秘めていることがある』…そういう意味だと思いました」
そう言いながらサガの杯へ酒を注ぎ足す。サガが手にする小さな金杯は、酒とともに童虎が双魚宮へ持ってきたものだ。その童虎は酔ったシオンといつの間にか席をはずしている。
いま、サガとアフロディーテは二人だけで夜薔薇を肴に杯を重ねていた。
静かな空間に、ときおり甘やかな花の香が風に乗って流れてくる。
「イブセマスジの訳で教えたからね…花発多風雨といえば間違えないだろう?」
「花が咲くと風雨が散らしていくという意味ですね。人生とはそのようなものかもしれないが、私は散らされるだけの花は嫌でした」
きっぱりと言う美しい後輩を見て、サガは微笑みを返す。
「君は花であり嵐でもあるように見える」
「毒の間違いでしょう。それにサガ、言わせていただければ貴方こそ花に見えますが」
「どのようなところが?」
「蜜も色も香もあり…そうですね、ただ散るばかりではなく実を残すところが」
「買いかぶりだ」
受けた杯を、サガはくいと飲み干した。
そして今度はアフロディーテの杯へ酒を注ぐべく古酒の瓶を手にする。
「『どうぞなみなみ注がせておくれ』」
芝居がかった台詞で酒を勧められた双魚宮の主も、笑んで杯を空にする。
「『さよならだけが人生だ』」
アフロディーテは合わせたが、こう付け足す事も忘れなかった。
「でも、私は貴方という友と別れるつもりはサラサラありませんからね」
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ていうか車田先生!「風魔の小次郎」TV実写ドラマ化て…見ますよ(゜◇゜)!
そしていつもぱちぱちして下さる皆様に御礼申し上げます!