星矢関連二次創作サイト「アクマイザー」のMEMO&御礼用ブログ
前回LOVELESSの続きですが構成に失敗しているので多分あとあと書き直すと思います(>x<)
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自らの指弾で頭を撃ち抜いたサガは、そのままゆっくり腕を下ろした。
漆黒だった髪の色は次第に褪せてゆき、くすんだ灰色とも渋銀とも呼べぬ色合いに変わってゆく。その銀は、いつものサガの空色めいた光沢をみせる明るい銀髪とはだいぶ異なっていた。
紅の邪眼も色を薄め、紫がかった蒼の瞳に変化している。その瞳がぱちりと瞬き、どこか焦点のあわぬ視線でタナトスの顔を見つめた。
「わたしは、一体…アレは何を…」
どうやら白のサガがまた表面に押し戻されたようだ。
変化を見せたサガを目の前にして、タナトスが「なるほど」と呟く。
口端をもちあげるようにして笑い、サガの面をタナトスの掌が撫でてゆく。それを振り払うことなく、サガは死の神へ問いかけた。
「貴方にはわかるのか、アレが何をしたのか」
「半魂のお前にわからぬことのほうが、不思議だが」
頬を撫でていた手にサガの髪が触れ、タナトスは指先でその髪をくるくると弄んだ。そのまま、釣竿のリールを巻き上げるようにして、サガへ口付ける。触れるだけの軽いものではあったものの、衆人の前での狼藉に対してサガは声をあげることもなく、どこか茫然とそれを受け入れている。
「知りたいか?お前の中で何が起こっているか」
タナトスは当然のように悪びれる様子もない。
横合いからアイオロスの怒りの声があがった。
「やめろ、サガに何をする」
神相手への敬意は払いつつも、毅然と睨む瞳には迷いがない。
タナトスは声のしたほうへ振り向き、指をぱちりと鳴らした。すると、今まで金縛り状態であった者たちの拘束が解かれ、自由に動けるようになる。アイオロスはすぐさまサガの元へと走った。
「大丈夫か、サガ」
タナトスを睨みつけ、間へ割り込みながらサガを背に庇おうとして、アイオロスの身体は反射的に固まった。それだけでなく、咄嗟にサガへ対して防御の姿勢をとる。それは、危険に対して意識する前に動く戦士としての本能だった。次の瞬間、サガから凄まじいまでの殺気が立ち上り、真っ直ぐにアイオロスへと叩き付けられた。
「触れるな!」
銀河をも砕く破壊力が至近距離で炸裂する。
意外にもアイオロスを庇ったのはタナトスだった。
ローブの背を引き裂いて現れた冥衣の巨大な羽が、アイオロスを包みこみ、攻撃の威力を左右へ流す。
周囲の地面はサガの攻撃で抉られ、砕けた瓦礫が土煙とともに辺りへ飛散した。
「…違う…わたしは…アイオロス…」
攻撃を放ったサガの方が真っ青な顔をして、その中心で膝をつく。そのまま頭を抱え、意味をなさぬ何事かを呟いた。タナトスが再び羽を広げると、その中で庇われていたアイオロスも驚いたようにサガを見つめる。
「サガ、一体どうして」
「簡単なことだ」
タナトスがサガへと歩み寄り、うずくまったサガを抱き上げた。サガは抵抗することなく、その腕の中に納まっている。神の小宇宙で包み込まれると、サガは誘導されるように目を閉ざし、意識を放棄した。
「エロスの矢の効果を相殺するために、この男は幻朧魔皇拳で効果対象を拒絶するよう、感情を固定したのだ。そして、それでも余剰する好意は、それ以外の有象無象へと振り分ける…もともと博愛傾向のあるサガにとっては、無難な選択であろうな」
アイオロスはぽかんとタナトスを見た。
「しかし、それならどうして私が」
「とぼけるな。お前はサガを呼んだ。そしてサガは矢に貫かれて最初にお前を見た」
銀の瞳がアイオロスを睨みつける。しかし、その瞳はすぐに嘲笑へと変わった。
「神を拒否して人間ごときを選ぶなど、引き裂いてやろうかと思ったが、あのサガはお前をも拒んだ。禁断の技を自身に放ってまでな。拒絶の魔拳を使うのならば、最初から余所見をする必要などあるまいに、下賎な人間の考えることは理解できん。だが、これはこれで面白い見世物よ」
アイオロスは一瞬怯んだものの、すぐに言い返す。
「サガは誇り高い男だ。誰相手であれ、気持ちを操られることなど良しとしない」
タナトスもまた問い返した。
「お前はそれでいいのか、サジタリアス」
「なに?」
「お前に咎はない。にも拘らず、一方的に拒絶されることを、お前は許すのか」
アイオロスは黙りこんだ。許すも許さないも、それはサガが決めることだ。
それでもタナトスへ反駁しなかったのは、死の神の言葉に隠された小さな痛みを感じたからだった。もちろん気のせいかもしれない。タナトスは死の神として人に忌まれるのは慣れているはずだし、塵あくたと蔑む存在に嫌悪されたところで露ほども心は動かないかもしれない。
ただ、考えてみれば黒のサガがタナトスを拒絶するのは、タナトスに咎があってのことではない。自決をした白のサガが死に惹かれるからといって、それはサガの側の問題であり、タナトスのせいではない。
タナトスが黒サガの意思を強引に捻じ曲げようとした理由が、なんとなくアイオロスには理解できた。
抱いたサガを見下ろし、表面上は倣岸にタナトスが吐き出す。
「矢を受けたのは黒の半魂のみゆえに、白の半魂を表へ出して影響を抑えたか…しかし、エロスの矢はアポロンですら動かした神具。人間の悪あがきがどこまで通じるものか。相反する矯正を無理に続けることで、魂が砕けるのも時間の問題」
「そんな」
「現に、お前が近づいたことで、不安定になっている」
アイオロスは唇を噛んだ。
「どうすればいい」
元はといえば、お前の行動が原因だろうという言葉は飲み込む。
タナトスは肩を竦め、そんなことも判らないのかという表情で、アイオロスへ告げた。
「幻朧魔皇拳とやらを、解くのだな」
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コメントくださった皆様、本当に有難うございます!にも拘らず、お返事遅れております(ぺこぺこ)。そして誕生日を覚えていてくださったM様、不意打ちに感激しました(;△;)今日はちょっとバテバテなので御礼は改めてとさせて下さい。すごく嬉しいコメントばかりでした!
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自らの指弾で頭を撃ち抜いたサガは、そのままゆっくり腕を下ろした。
漆黒だった髪の色は次第に褪せてゆき、くすんだ灰色とも渋銀とも呼べぬ色合いに変わってゆく。その銀は、いつものサガの空色めいた光沢をみせる明るい銀髪とはだいぶ異なっていた。
紅の邪眼も色を薄め、紫がかった蒼の瞳に変化している。その瞳がぱちりと瞬き、どこか焦点のあわぬ視線でタナトスの顔を見つめた。
「わたしは、一体…アレは何を…」
どうやら白のサガがまた表面に押し戻されたようだ。
変化を見せたサガを目の前にして、タナトスが「なるほど」と呟く。
口端をもちあげるようにして笑い、サガの面をタナトスの掌が撫でてゆく。それを振り払うことなく、サガは死の神へ問いかけた。
「貴方にはわかるのか、アレが何をしたのか」
「半魂のお前にわからぬことのほうが、不思議だが」
頬を撫でていた手にサガの髪が触れ、タナトスは指先でその髪をくるくると弄んだ。そのまま、釣竿のリールを巻き上げるようにして、サガへ口付ける。触れるだけの軽いものではあったものの、衆人の前での狼藉に対してサガは声をあげることもなく、どこか茫然とそれを受け入れている。
「知りたいか?お前の中で何が起こっているか」
タナトスは当然のように悪びれる様子もない。
横合いからアイオロスの怒りの声があがった。
「やめろ、サガに何をする」
神相手への敬意は払いつつも、毅然と睨む瞳には迷いがない。
タナトスは声のしたほうへ振り向き、指をぱちりと鳴らした。すると、今まで金縛り状態であった者たちの拘束が解かれ、自由に動けるようになる。アイオロスはすぐさまサガの元へと走った。
「大丈夫か、サガ」
タナトスを睨みつけ、間へ割り込みながらサガを背に庇おうとして、アイオロスの身体は反射的に固まった。それだけでなく、咄嗟にサガへ対して防御の姿勢をとる。それは、危険に対して意識する前に動く戦士としての本能だった。次の瞬間、サガから凄まじいまでの殺気が立ち上り、真っ直ぐにアイオロスへと叩き付けられた。
「触れるな!」
銀河をも砕く破壊力が至近距離で炸裂する。
意外にもアイオロスを庇ったのはタナトスだった。
ローブの背を引き裂いて現れた冥衣の巨大な羽が、アイオロスを包みこみ、攻撃の威力を左右へ流す。
周囲の地面はサガの攻撃で抉られ、砕けた瓦礫が土煙とともに辺りへ飛散した。
「…違う…わたしは…アイオロス…」
攻撃を放ったサガの方が真っ青な顔をして、その中心で膝をつく。そのまま頭を抱え、意味をなさぬ何事かを呟いた。タナトスが再び羽を広げると、その中で庇われていたアイオロスも驚いたようにサガを見つめる。
「サガ、一体どうして」
「簡単なことだ」
タナトスがサガへと歩み寄り、うずくまったサガを抱き上げた。サガは抵抗することなく、その腕の中に納まっている。神の小宇宙で包み込まれると、サガは誘導されるように目を閉ざし、意識を放棄した。
「エロスの矢の効果を相殺するために、この男は幻朧魔皇拳で効果対象を拒絶するよう、感情を固定したのだ。そして、それでも余剰する好意は、それ以外の有象無象へと振り分ける…もともと博愛傾向のあるサガにとっては、無難な選択であろうな」
アイオロスはぽかんとタナトスを見た。
「しかし、それならどうして私が」
「とぼけるな。お前はサガを呼んだ。そしてサガは矢に貫かれて最初にお前を見た」
銀の瞳がアイオロスを睨みつける。しかし、その瞳はすぐに嘲笑へと変わった。
「神を拒否して人間ごときを選ぶなど、引き裂いてやろうかと思ったが、あのサガはお前をも拒んだ。禁断の技を自身に放ってまでな。拒絶の魔拳を使うのならば、最初から余所見をする必要などあるまいに、下賎な人間の考えることは理解できん。だが、これはこれで面白い見世物よ」
アイオロスは一瞬怯んだものの、すぐに言い返す。
「サガは誇り高い男だ。誰相手であれ、気持ちを操られることなど良しとしない」
タナトスもまた問い返した。
「お前はそれでいいのか、サジタリアス」
「なに?」
「お前に咎はない。にも拘らず、一方的に拒絶されることを、お前は許すのか」
アイオロスは黙りこんだ。許すも許さないも、それはサガが決めることだ。
それでもタナトスへ反駁しなかったのは、死の神の言葉に隠された小さな痛みを感じたからだった。もちろん気のせいかもしれない。タナトスは死の神として人に忌まれるのは慣れているはずだし、塵あくたと蔑む存在に嫌悪されたところで露ほども心は動かないかもしれない。
ただ、考えてみれば黒のサガがタナトスを拒絶するのは、タナトスに咎があってのことではない。自決をした白のサガが死に惹かれるからといって、それはサガの側の問題であり、タナトスのせいではない。
タナトスが黒サガの意思を強引に捻じ曲げようとした理由が、なんとなくアイオロスには理解できた。
抱いたサガを見下ろし、表面上は倣岸にタナトスが吐き出す。
「矢を受けたのは黒の半魂のみゆえに、白の半魂を表へ出して影響を抑えたか…しかし、エロスの矢はアポロンですら動かした神具。人間の悪あがきがどこまで通じるものか。相反する矯正を無理に続けることで、魂が砕けるのも時間の問題」
「そんな」
「現に、お前が近づいたことで、不安定になっている」
アイオロスは唇を噛んだ。
「どうすればいい」
元はといえば、お前の行動が原因だろうという言葉は飲み込む。
タナトスは肩を竦め、そんなことも判らないのかという表情で、アイオロスへ告げた。
「幻朧魔皇拳とやらを、解くのだな」
============================
コメントくださった皆様、本当に有難うございます!にも拘らず、お返事遅れております(ぺこぺこ)。そして誕生日を覚えていてくださったM様、不意打ちに感激しました(;△;)今日はちょっとバテバテなので御礼は改めてとさせて下さい。すごく嬉しいコメントばかりでした!