夏休み妄想!
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「こんにちはー!」
元気な挨拶とともに双児宮へやってきたのは、ペガサスの星矢だった。
その星矢は、居住区エリアをのぞきこむと、アレ?という顔をした。
「サガは留守?」
いつもサガが座っているソファーには、カノンがラフな格好で寝転がっている。そのカノンは起き上がり、背もたれに深く寄りかかると、長い足をえらそうに組んだ。
「迷宮の小宇宙がオレのものだった時点で気づけ」
「いや、それはわかんないよ」
「フン、まだまだ未熟だな。それでサガに何の用だ」
「勉強を見てもらおうと思って」
星矢の手には、ノートと教科書の入ったクリアファイルが抱えられている。
ちらりとそれへ視線を走らせたカノンは、呆れの表情をみせた。
「お前、サガに中坊の宿題レベルの内容を聞くつもりか」
「そ、そうだけど…サガの教え方って、凄く分かりやすいんだ」
その言葉で、既に何度もこうして教えを請いに(というか宿題を見てもらいに)双児宮を訪れたであろうことが知れる。
カノンは眉をひそめながらも、星矢へ座るよう促した。
「オレが代わりに教えてやる」
「ホント!?」
星矢からしてみると、サガがいないのは残念ではあるけれど、カノンに教えてもらえるのもまた得がたい機会である。カノンはいい加減に見えて、実はとても頭がいいのだとサガが話してくれたこともあった。
星矢はうきうきとテキストを広げる。
「じゃあまず、この余桃の罪ってどういう意味?」
「お前…常識だろ。最近の青銅はそんなレベルなのか」
「うっ」
確かに勉強に熱心ではなかったけれども、カノンの常識水準もまた高い気がして、星矢は心の中でこっそり反駁する。
「とりあえず、お前の思うところの意味を言ってみろ」
それでもカノンは、ただ答えを示唆するのではなく、まずは星矢に考えさせた。そのやり方は、乱暴な口調ながらサガの教え方と共通するものだった。
「ええと、余った桃に関する罪だと思うんだけど…」
ただし、幾ら考えても、元となる故事を知らなければ分かるわけがない。
カノンは肩を竦めて説明しだした。
「例えばだ。シュラが食いかけのサガを『美味しいですよ』ってアイオロスにやったとするだろ?」
「サガは食べ物じゃないぞ」
「例えだって言ってんだろ。桃に置き換えろ」
「えええええ」
「アイオロスは喜んで『美味いな』って食っておきながら、あとで冷静になったら『食べかけのサガを寄越すなんて、教皇候補に不敬だろう!そもそもシュラはサガを食べたらダメだ』ってシュラを罰したわけだ」
「アイオロスはそんなこと言わないし、しないよ!」
「シュラがサガの代わりに食われるかもな」
「えええええ、シュラも桃なの?っていうか、その例えだと1番怒るのサガじゃないの?」
「オレも怒るな」
「ええと、桃を食べるのは罪ですって故事?」
「お前、こんなに分かりやすく例えたのに分からないのか。馬鹿ではないか?」
しかし、そのカノンの頭にはゴ…とげんこつによる鉄拳が落ちた。
いつの間に帰宅したのか、サガが氷点下の空気をまとわせて、カノンの座るソファーの後ろに立っている。
「カノン…子供相手にお前という奴は…」
「な、なんだよ、ちゃんと教えてたろ」
「今の与太話のどこがそうなのか、わたしを納得させてみろ…」
なんだか双子の間で千日戦争が始まってしまったので、星矢は仕方なくテキスト類を片付け、隣の巨蟹宮へ宿題を教えてもらいに行くことにした。
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案外デスマスクが1番分かりやすく教えてくれるよ!
今日もぱちぱち有難うございます(>▽<)毎日の清涼剤です!