星矢関連二次創作サイト「アクマイザー」のMEMO&御礼用ブログ
黄金の枷の続きでカノンとサガ
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カノンは食事の間もずっと文句を言い続けていた。
「お前に枷など似合わないことこの上ない。そもそも何だそのセンスのないデザイン」
弟へおかずを取り分けてやりながら、サガが苦笑する。
「枷に見た目の善し悪しなど関係なかろう」
「あるさ。お前をさらし者にするための道具なんだろ?だったらせめて、見た目くらい良くしろっての…あ、鎖に気をつけろ。サラダの皿に入りそうだぞ」
サガの手首には枷が嵌められ、鎖がじゃらりとぶら下がっている。手首だけではない。首輪に足輪と罪人を示すそれらは、黄金聖闘士であるサガの行動を阻害まではせぬものの、日常生活にそぐわないことこの上ない。
すい、と袖をたくし上げるように鎖を流し、サガは意に介さず己も食事を続けている。
「さらし者にするのだから、嫌悪感を呼び起こさねば駄目なのではないか?」
「嫌悪感ではなく、あの男は同情を呼び起こすつもりだ。だいたい人権侵害だろ、こんな」
あの男、と呼ばれているのはアイオロスのことだ。サガは思わず噴出した。
「おまえがそんな言葉を使うとは思わなかった」
「うるさい。アテナはそういうのを大事にするんだろう」
「確かにそうなのだが…外で覚えたのか?」
サガはまだ笑っている。人権などという言葉は、聖域に馴染まない概念であった。女神の大切にするところを思えば不思議なことだが、それよりも優先されるものが多い世界なのだ。カノンの在籍する海界とて同じである。人の命よりも神の意志が尊ばれる世界。そうでなければ人類粛清など掲げられない。
「う…まあ、そうだが、使いどころの便利な言葉なんだよ。そんなことよりお前、嘘をつけないとか、困るだろ」
「いや、困らない。むしろ助かっている」
「本気か。お前も少しおかしいぞ」
「謝罪を、信じてもらえる」
カノンは眉を顰めた。
確かにその点では便利だろう。例えば13年間のサガに恨みを持つ者から糾弾を受けたとする。相手は魔拳により嘘がつけぬと知った上で、過去の悪事を暴こうとする。それに対し、サガはひたすら真摯に過去をさらけ出し、謝罪を行う。
幻朧魔皇拳の縛りなどなくともサガはそうするが、その状態で一切の言い訳や正当化がなされないことに、相手はまず驚き、次第にサガの高潔さを理解して心を打たれる。話を続けるにつれサガを許し、場合によっては敵対者から信奉者へ変わってしまうことすらある。
まずそれがアイオロスの第一の目的だろうと、カノンはふんでいる。
そしてサガだ。二重人格のサガにとって、自分のことは自分自身ですら信用がならない。だからこそ、本当の自分を信じてもらいたい…というのは何より希求レベルの高い望みであった。女神の前で自刃したとき、許しよりもそれを願ったことからも、それは証明されている。
その望みが、幻朧魔皇拳に冒されていれば、存分に叶うのだ。過去への負い目も加わって、サガは自分から魔拳を破ろうとは思わなくなる。ひいては、アイオロスが自分の上位にある状態を当たり前と感じるようになる。
そして、アイオロスはサガを補佐にほしがっている。
(サガを使い勝手の良い手駒にしたい…それが第二の目的ではないのか)
次期教皇としては当然の処置だが、サガの弟としては、腹立たしい。
「そうはいうがな、嘘をつけなくてアイオロスと上手くやれるのか?お前、アイオロスと自分は相容れないと思ってんだろ」
カノンは敢えて胸中とは逆のことを、良き弟を装って心配そうに突きつける。嘘ってのはこういう風に使うんだよと思いながら。
途端にサガはしどろもどろになった。
「わたしは確かにアイオロスに対して不穏な感情も持っている。それを隠すこともできない。しかし彼はそれでもいいと笑いとばすのだ。嫌われるのが当然なのに、それでもわたしに優しくしてくれる…彼の誠意に報いるために、せめて出来るだけのことをして尽くしたいと思う。そう思うようになったら、彼が教皇でも気にならなくなった」
着々と浸食されているようだと、カノンは頭を抱えた。
「あいつの方が、自分より上だと思うか?」
苦虫を噛み潰しながら、追撃の問いを吐き出すと、今度はサガは押し黙る。
(なるほど、嘘はつけなくても黙ることはできるのか)
カノンは問い方を変えた。
「あいつのこと、好きか?」
食卓に置かれたサガの指先がぴくりと震える。
「…わからない」
言葉ではそう言っているのに、わずかに瞳が熱く潤んでいる。
サガは嘘は言っていない。けれども、カノンは心のなかで熾火が劫火へと変わっていくのを感じていた。
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カノンは食事の間もずっと文句を言い続けていた。
「お前に枷など似合わないことこの上ない。そもそも何だそのセンスのないデザイン」
弟へおかずを取り分けてやりながら、サガが苦笑する。
「枷に見た目の善し悪しなど関係なかろう」
「あるさ。お前をさらし者にするための道具なんだろ?だったらせめて、見た目くらい良くしろっての…あ、鎖に気をつけろ。サラダの皿に入りそうだぞ」
サガの手首には枷が嵌められ、鎖がじゃらりとぶら下がっている。手首だけではない。首輪に足輪と罪人を示すそれらは、黄金聖闘士であるサガの行動を阻害まではせぬものの、日常生活にそぐわないことこの上ない。
すい、と袖をたくし上げるように鎖を流し、サガは意に介さず己も食事を続けている。
「さらし者にするのだから、嫌悪感を呼び起こさねば駄目なのではないか?」
「嫌悪感ではなく、あの男は同情を呼び起こすつもりだ。だいたい人権侵害だろ、こんな」
あの男、と呼ばれているのはアイオロスのことだ。サガは思わず噴出した。
「おまえがそんな言葉を使うとは思わなかった」
「うるさい。アテナはそういうのを大事にするんだろう」
「確かにそうなのだが…外で覚えたのか?」
サガはまだ笑っている。人権などという言葉は、聖域に馴染まない概念であった。女神の大切にするところを思えば不思議なことだが、それよりも優先されるものが多い世界なのだ。カノンの在籍する海界とて同じである。人の命よりも神の意志が尊ばれる世界。そうでなければ人類粛清など掲げられない。
「う…まあ、そうだが、使いどころの便利な言葉なんだよ。そんなことよりお前、嘘をつけないとか、困るだろ」
「いや、困らない。むしろ助かっている」
「本気か。お前も少しおかしいぞ」
「謝罪を、信じてもらえる」
カノンは眉を顰めた。
確かにその点では便利だろう。例えば13年間のサガに恨みを持つ者から糾弾を受けたとする。相手は魔拳により嘘がつけぬと知った上で、過去の悪事を暴こうとする。それに対し、サガはひたすら真摯に過去をさらけ出し、謝罪を行う。
幻朧魔皇拳の縛りなどなくともサガはそうするが、その状態で一切の言い訳や正当化がなされないことに、相手はまず驚き、次第にサガの高潔さを理解して心を打たれる。話を続けるにつれサガを許し、場合によっては敵対者から信奉者へ変わってしまうことすらある。
まずそれがアイオロスの第一の目的だろうと、カノンはふんでいる。
そしてサガだ。二重人格のサガにとって、自分のことは自分自身ですら信用がならない。だからこそ、本当の自分を信じてもらいたい…というのは何より希求レベルの高い望みであった。女神の前で自刃したとき、許しよりもそれを願ったことからも、それは証明されている。
その望みが、幻朧魔皇拳に冒されていれば、存分に叶うのだ。過去への負い目も加わって、サガは自分から魔拳を破ろうとは思わなくなる。ひいては、アイオロスが自分の上位にある状態を当たり前と感じるようになる。
そして、アイオロスはサガを補佐にほしがっている。
(サガを使い勝手の良い手駒にしたい…それが第二の目的ではないのか)
次期教皇としては当然の処置だが、サガの弟としては、腹立たしい。
「そうはいうがな、嘘をつけなくてアイオロスと上手くやれるのか?お前、アイオロスと自分は相容れないと思ってんだろ」
カノンは敢えて胸中とは逆のことを、良き弟を装って心配そうに突きつける。嘘ってのはこういう風に使うんだよと思いながら。
途端にサガはしどろもどろになった。
「わたしは確かにアイオロスに対して不穏な感情も持っている。それを隠すこともできない。しかし彼はそれでもいいと笑いとばすのだ。嫌われるのが当然なのに、それでもわたしに優しくしてくれる…彼の誠意に報いるために、せめて出来るだけのことをして尽くしたいと思う。そう思うようになったら、彼が教皇でも気にならなくなった」
着々と浸食されているようだと、カノンは頭を抱えた。
「あいつの方が、自分より上だと思うか?」
苦虫を噛み潰しながら、追撃の問いを吐き出すと、今度はサガは押し黙る。
(なるほど、嘘はつけなくても黙ることはできるのか)
カノンは問い方を変えた。
「あいつのこと、好きか?」
食卓に置かれたサガの指先がぴくりと震える。
「…わからない」
言葉ではそう言っているのに、わずかに瞳が熱く潤んでいる。
サガは嘘は言っていない。けれども、カノンは心のなかで熾火が劫火へと変わっていくのを感じていた。
6/11 12時頃 いつも楽しみに拝見してます~様>こちらこそ、このような場末サイトへ足を運んでくださりありがとうございます(^▽^)ジェミニ台風は、ただでさえ暴風雨っぽいのに、ツインで来ることもあるので大変です。サガの台風は、一見温和で穏やかな感じなのに、いつのまにか巻き込まれてそのパワーに逆らえず大変なことになってる感じ、カノンの台風は言葉どおりの暴風雨で、でも中心部分はぽっかりと無風な部分があって、その中で愛を諭されると凪ぐ感じです。
今日はヤギ台風の影響か梅雨のせいか雨模様ですが、頂戴したコメントで暖かい時間を過ごせました。ありがとうございました♪
6/11 18時頃 ヤギがあるならカニがあっても~様>カニ台風!なんとなく語感に笑ってしまって申し訳ありません(>ω<)そうですよね、十二星座の山羊座由来で日本語のヤギと台風が名づけられるのなら、カニだってありえますよね!(笑)それはさておき私もカニとサガの組み合わせが大好きです!デスマスクの価値観と白サガの価値観と黒サガの価値観がぶつかり合った時の化学反応を想像するともうたまりません。黒サガの価値観には大分影響を受けていると思うんですよ、デスマスク。さりとて白サガをおろそかにしているわけでもないという。
そして枷サガへのお言葉もありがとうございます。サガに鎖をつけたら、確かに年中組はそれぞれ内心いろいろ思うところありそうです。サガを介した年中組とアイオロス、もしくはカノンとの関係も美味しいですよね(>▽<)
またいろいろ蟹について語ってやって下さい。素敵なコメントをありがとうございました!
ほかパチパチ下さった皆様に御礼申し上げます。毎日の癒しです!
今日はヤギ台風の影響か梅雨のせいか雨模様ですが、頂戴したコメントで暖かい時間を過ごせました。ありがとうございました♪
6/11 18時頃 ヤギがあるならカニがあっても~様>カニ台風!なんとなく語感に笑ってしまって申し訳ありません(>ω<)そうですよね、十二星座の山羊座由来で日本語のヤギと台風が名づけられるのなら、カニだってありえますよね!(笑)それはさておき私もカニとサガの組み合わせが大好きです!デスマスクの価値観と白サガの価値観と黒サガの価値観がぶつかり合った時の化学反応を想像するともうたまりません。黒サガの価値観には大分影響を受けていると思うんですよ、デスマスク。さりとて白サガをおろそかにしているわけでもないという。
そして枷サガへのお言葉もありがとうございます。サガに鎖をつけたら、確かに年中組はそれぞれ内心いろいろ思うところありそうです。サガを介した年中組とアイオロス、もしくはカノンとの関係も美味しいですよね(>▽<)
またいろいろ蟹について語ってやって下さい。素敵なコメントをありがとうございました!
ほかパチパチ下さった皆様に御礼申し上げます。毎日の癒しです!