朝からLC双子妄想。
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まだ陽の気配もない早朝、デフテロスはぱちりと目を覚ました。
朝食をつくるのはデフテロスの分担だ。そのため、兄よりも早起きしてパン生地をこね、生地をねかせている間に水を汲みにゆく。途中で果物やハーブを採ることもあれば、街で卵を入手することもある(鶏小屋から勝手に貰ってお金を置いてくるというやり方だが)。戻ってきたらパンを焼いて、兄が顔を洗うための乾布と水盆の用意する。もちろん兄の目覚めに合わせてハーブティーを淹れることも忘れない。結構忙しいのだ。
だがその前に、隣に眠るアスプロスの寝顔をじっと見る。デフテロスにとって、この時間が何よりの至福だった。アスプロスも目を覚ませば離れていってしまうので(それが普通だが)、密着した状態で思う存分兄の顔を眺めていられるのは、このときくらいなのだ。
兄は小さく寝息を立てながら枕に頭を預けている。眠っているときは昔のように安らかな表情だった。挑発的で上から目線の瞳も閉ざされている(もっともデフテロスは、そんな風にはちっとも思っていなかった)。
だが、今日は凝視しすぎたのだろうか。アスプロスもぱちりと目を開けた。
「…どうした?デフテロス」
寝起きの、少し甘ったるいような半睡の声。
この声を聞くのは、生涯自分だけでありたい。そんな衝動に駆られたデフテロスは、思わず兄に尋ねた。
「嫁(俺)が欲しくはないか」
突然の問いにアスプロスは目を丸くしたものの、すぐに答が返った。
「いらん(お前がいるから)」
返事を聞いてちょっとがっかりしている弟の反応をみた兄は、デフテロスが家事や自分から解放されたいがための問いだと思い込み、「明日は自分が朝食を作ろう」などと見当違いの思いやりを発揮している。
当然括弧内の思いは相手に届くことはなく、今日も双子は擦れ違い両思いのまま、兄弟としての一線を越えることなく一日を過ごすのだった。
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昨日はカノンの記憶喪失話の続きをもそもそ書いていたのですが、なかなかサガが思いっきりカノンを甘やかす場面まで行き着かない…いや彼らの場合はサガが甘えた方がカノンは喜ぶのかも…(>ω<)
今日もぱちぱち有難うございます!出勤前の心の癒しです。