星矢関連二次創作サイト「アクマイザー」のMEMO&御礼用ブログ
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「デスマスクよ、Ω理論によれば、集めた小宇宙の人数が多いほど、その力が究極に近づくらしいのだ」
「そうらしいな」
黒髪のサガが興奮気味に話しかけてきたので、デスマスクは適当に相槌をうった。
「つまり、わたしの中の皆と小宇宙を合わせれば、力が増幅されて…なんだ、その目は」
「いやその、アンタのなかの連中は、皆っつうか全員サガだから、何人いても一人だろ。そもそもアンタたち、協力しあえんのか?」
「……」
サガは多重人格者だ。白サガ・黒サガ・統合サガなどと呼ばれる人格がいるものの、それぞれ友好的とは微妙に言いにくい。

「そうか…必要なだけ人格を増やしてみようかとも考えたのだか」
「出来るのかそんなこと。そんな無理をしなくたって、今のままでアンタ充分強いんだから良いじゃねえか」
「…強くなどない」

こちらのサガが、己の弱さを認めるかのような発言をしたことに、デスマスクは心底驚いた。

「何かあったのか?」
「わたしは星矢のようにタナトスを倒せる力はない。そのような弱い自分でいることに我慢がならんのだ。改めて神に負けぬほどの…いや、神になることを目指して研鑽しようかと思ってな」
「えっ、もしかしてとうとうタナトスに我慢出来なくなって実力行使しようと思ってるのか」

それなら止めようと考えたデスマスクである。フウフ喧嘩の被害規模が大きくなるだけであり、公平な目で見てタナトスはそれほど悪い夫には見えなかった。ニンフたちと浮気三昧であること以外には。
しかし、珍しく黒髪のサガは言い淀んだ。

「いや…タナトスも嫁が人間よりは神であるほうが外聞も良かろう」
「アンタ、熱でもあるんじゃないか。ちょっと測らせろ」

思わず手を伸ばしてサガの額に手を当てるデスマスクであった。平熱だ。
サガはそれを払いのけもせず唇を噛んでいる。
熱は無いが、何か相当に思いつめてはいるようだ。
こちらのサガがタナトスの嫁であることを認める発言など、天地がさかさまになるのではなかろうかとデスマスクは心の中でこぼした。

「力がなければ、わたしは何の存在価値もない。せめて居場所を寄越したタナトスと対等であれるほどには、強くあらねばな」
「何言ってんだよ、アンタらしくねえぞ」
「わたしらしいとはどういうことだ?力が足りぬゆえに、皆もわたしを必要とせんのだろう」
「……」

ああ、とデスマスクは内心で額を抑える。
昨年の同じ日に、このサガは浮気を決行すべく周囲の人間のもとをまわり、全員から断られたという経緯を持つ。それは「浮気」であるからこそ断った面子ばかりなのだが、愛情音痴のサガはそれを「己を必要とするものなどいない」という結論で受け止めたのだ。
それ以来、確かにこちらのサガは少し大人しくなったように思う。タナトスへの態度も軟化している。
とても、らしくない。

サガは口元を歪めて、無理やり笑ったかのような表情を見せる。

「神となれば、わたしを必要とする者も出るかもしれぬ」
「……本当に、アンタは馬鹿だな」

ここで『オレがいる』と言えない己も馬鹿なのだがと、デスマスクは何度目かの嘆息をついた。
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