星矢関連二次創作サイト「アクマイザー」のMEMO&御礼用ブログ
まったり続いている前回SSの続き
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幽体となったサガは、黄泉比良坂を抜けて冥界へと降りていった。
冥界は聖戦において1度崩壊しているため、今サガが降り立っているのは、聖戦後に新しく再生されたものだ。
地形などは元のまま複製されているようだが、地獄と呼ばれるエリアはだいぶ以前と趣が異なっている。女神の要望により、死後、人間への罰を行わぬよう要請がなされているためだ。
サガは、血の大瀑布と呼ばれていた滝のあるエリアへと向かった。そこは地上で人々が流した血が集まって川となり、崖上から滝となって流れ落ちる場所だ。
やはり1度リセットされたせいなのか、川幅は細く、勢いもゆるい。
だが、流れ続けている血は確実に地上での戦火や暴力によるもので、聖戦後も変わらぬ人間の愚かさに、サガは悲しい心もちになった。
けれども、本日死界を訪れたのは、冥府見物のためではない。
目的のものを探すため、サガは辺りを見回したが、滝壺近くにはそれらしいものは見当たらなかった。
「何用だ」
突然声をかけられて、サガは反射的に身を硬くした。
相手が誰であるのかは、振り返るまでも無い強大な小宇宙で知れた。
冥府に携わる神の一人、タナトスだ。
「探し物をしております」
サガは神の前で膝をつき、正直に答えた。
生者が勝手に冥府を訪れることは、生死の境界線を崩すことであり、いわば不法侵入である。ハーデスが聖戦で敗れて以降、曖昧にされている規則ではあるが、神が異物の訪問を確認しにくるのは当たり前のことであるので(下位の冥闘士や使い魔ではなく神が降臨することは稀であるが)、まずは礼儀を見せるのが筋だ。
また、気性の激しいタナトスを怒らせるような言動は、慎んだ方が無難でもあった。
「このような辺鄙な場所で、一体何を探すと?」
瞳孔の無い銀の瞳が、射抜くようにサガを見る。タナトスはただサガを見たというだけだが、神に見つめられるということは、それだけで負荷がかかるものだ。
だが、サガは怯むことなく、まっすぐにタナトスを見つめ返した。
「この場所には、冥府で唯一つ命を持って育つという、木欒子の樹が生えていると資料で見ました。出来ればその実を…」
「お前はバカか」
しかし、返ってきた言葉が単刀直入な貶しであったため、サガは反応に困って首をかしげた。言葉が足りないと気づいたらしいタナトスが、続けて叱責する。
「お前達はその実を使い、冥闘士を封じ込める数珠を作り上げた。矮小な人間の冥闘士など居ようが居まいが、我ら双子神がおれば戦力に問題はないが、それでもハーデス様の御力を阻む宝具の存在は鬱陶しい。その原料である木欒子の実がまた欲しいなどと、このオレの前でよくぞぬけぬけと申したものだな。大体、冥府の物を地上に持ち出すということ自体禁忌であることを、最近の人間は知らぬのか」
言われてみるとその通りなので、サガはますます困ったように眉を寄せた。
タナトスは小馬鹿にした表情を変えることなく、サガを見下ろしている。
「だが、黄金聖衣を着用しての来訪でないということは、公務ではあるまい。また、木欒子は生ある樹ゆえ、冥府に属するものというわけでもない。何に使用するのか返答次第では許してやってもいいぞ。自ら死したお前は、オレの民であるも同然だからな」
サガの表情が、多少の驚きと感謝に満ちたものとなる。
幸いなことに、本日のタナトスの機嫌はいいらしい。
「有難うございます」
「まだ許しておらん」
「弟が…カノンが本日誕生日を迎えますゆえ、木欒子の実を加工して贈り物としたく…」
「お前はバカか」
偽り無く述べたというのに、再びタナトスから同じ罵倒が降ってきたので、サガはまた反応に困って瞳を揺らした。
「死の神の前で、誕生を祝う話を嬉々としてするな」
「失礼しました」
またしても言われた通りであるため、サガは深く頭を下げる。
だが、タナトスはフンと鼻を鳴らして肩をすくめた。
「双子の弟が誕生日なのであれば、お前もであろう。木欒子の樹はハーデス様が若木をこの崖の東側の川のほとりへと移し変えた。以前の大樹は実を散らした折に枯れてしまったのでな。まだそれほど実は付いておらぬが」
「1つで充分…温情いたみいります」
素直な感情を滅多に顔に上らせぬサガが、ぱっと顔を明るくしたのを見て、タナトスはまた呆れたような視線を向けたものの、さっさと行けと視線で促す。
「片割れを祝うのは当然だからな、仕方ない」
自身も双子であるタナトスが、どう考えたのかは判らない。
けれどもサガは感謝しながら頭を下げ、タナトスの示唆した場所へと急ぎ飛んだ。
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誕生日関連話だというのに、まだまだ遅れますよ!(汗)
関係ないですが、デフテロスが出てくるコマで、アスプロスを殺した後、その死体の前で屈みこんで、じっと死体を見つめているシーンがあるじゃないですか。
読者側からは背中しか見えませんが、あのシーンのデフテロスが、死んでしまったご主人様の前で佇むワンコのようで、あの場面でのデフテロスの心情を思うと、それはもう真面目に滾ります。もうデフテロスはお兄さん大好きすぎますよ…(>▽<)
今日もぱちぱち有難うございます!日々の癒しです!
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幽体となったサガは、黄泉比良坂を抜けて冥界へと降りていった。
冥界は聖戦において1度崩壊しているため、今サガが降り立っているのは、聖戦後に新しく再生されたものだ。
地形などは元のまま複製されているようだが、地獄と呼ばれるエリアはだいぶ以前と趣が異なっている。女神の要望により、死後、人間への罰を行わぬよう要請がなされているためだ。
サガは、血の大瀑布と呼ばれていた滝のあるエリアへと向かった。そこは地上で人々が流した血が集まって川となり、崖上から滝となって流れ落ちる場所だ。
やはり1度リセットされたせいなのか、川幅は細く、勢いもゆるい。
だが、流れ続けている血は確実に地上での戦火や暴力によるもので、聖戦後も変わらぬ人間の愚かさに、サガは悲しい心もちになった。
けれども、本日死界を訪れたのは、冥府見物のためではない。
目的のものを探すため、サガは辺りを見回したが、滝壺近くにはそれらしいものは見当たらなかった。
「何用だ」
突然声をかけられて、サガは反射的に身を硬くした。
相手が誰であるのかは、振り返るまでも無い強大な小宇宙で知れた。
冥府に携わる神の一人、タナトスだ。
「探し物をしております」
サガは神の前で膝をつき、正直に答えた。
生者が勝手に冥府を訪れることは、生死の境界線を崩すことであり、いわば不法侵入である。ハーデスが聖戦で敗れて以降、曖昧にされている規則ではあるが、神が異物の訪問を確認しにくるのは当たり前のことであるので(下位の冥闘士や使い魔ではなく神が降臨することは稀であるが)、まずは礼儀を見せるのが筋だ。
また、気性の激しいタナトスを怒らせるような言動は、慎んだ方が無難でもあった。
「このような辺鄙な場所で、一体何を探すと?」
瞳孔の無い銀の瞳が、射抜くようにサガを見る。タナトスはただサガを見たというだけだが、神に見つめられるということは、それだけで負荷がかかるものだ。
だが、サガは怯むことなく、まっすぐにタナトスを見つめ返した。
「この場所には、冥府で唯一つ命を持って育つという、木欒子の樹が生えていると資料で見ました。出来ればその実を…」
「お前はバカか」
しかし、返ってきた言葉が単刀直入な貶しであったため、サガは反応に困って首をかしげた。言葉が足りないと気づいたらしいタナトスが、続けて叱責する。
「お前達はその実を使い、冥闘士を封じ込める数珠を作り上げた。矮小な人間の冥闘士など居ようが居まいが、我ら双子神がおれば戦力に問題はないが、それでもハーデス様の御力を阻む宝具の存在は鬱陶しい。その原料である木欒子の実がまた欲しいなどと、このオレの前でよくぞぬけぬけと申したものだな。大体、冥府の物を地上に持ち出すということ自体禁忌であることを、最近の人間は知らぬのか」
言われてみるとその通りなので、サガはますます困ったように眉を寄せた。
タナトスは小馬鹿にした表情を変えることなく、サガを見下ろしている。
「だが、黄金聖衣を着用しての来訪でないということは、公務ではあるまい。また、木欒子は生ある樹ゆえ、冥府に属するものというわけでもない。何に使用するのか返答次第では許してやってもいいぞ。自ら死したお前は、オレの民であるも同然だからな」
サガの表情が、多少の驚きと感謝に満ちたものとなる。
幸いなことに、本日のタナトスの機嫌はいいらしい。
「有難うございます」
「まだ許しておらん」
「弟が…カノンが本日誕生日を迎えますゆえ、木欒子の実を加工して贈り物としたく…」
「お前はバカか」
偽り無く述べたというのに、再びタナトスから同じ罵倒が降ってきたので、サガはまた反応に困って瞳を揺らした。
「死の神の前で、誕生を祝う話を嬉々としてするな」
「失礼しました」
またしても言われた通りであるため、サガは深く頭を下げる。
だが、タナトスはフンと鼻を鳴らして肩をすくめた。
「双子の弟が誕生日なのであれば、お前もであろう。木欒子の樹はハーデス様が若木をこの崖の東側の川のほとりへと移し変えた。以前の大樹は実を散らした折に枯れてしまったのでな。まだそれほど実は付いておらぬが」
「1つで充分…温情いたみいります」
素直な感情を滅多に顔に上らせぬサガが、ぱっと顔を明るくしたのを見て、タナトスはまた呆れたような視線を向けたものの、さっさと行けと視線で促す。
「片割れを祝うのは当然だからな、仕方ない」
自身も双子であるタナトスが、どう考えたのかは判らない。
けれどもサガは感謝しながら頭を下げ、タナトスの示唆した場所へと急ぎ飛んだ。
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誕生日関連話だというのに、まだまだ遅れますよ!(汗)
関係ないですが、デフテロスが出てくるコマで、アスプロスを殺した後、その死体の前で屈みこんで、じっと死体を見つめているシーンがあるじゃないですか。
読者側からは背中しか見えませんが、あのシーンのデフテロスが、死んでしまったご主人様の前で佇むワンコのようで、あの場面でのデフテロスの心情を思うと、それはもう真面目に滾ります。もうデフテロスはお兄さん大好きすぎますよ…(>▽<)
今日もぱちぱち有難うございます!日々の癒しです!