星矢関連二次創作サイト「アクマイザー」のMEMO&御礼用ブログ
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突然押しかけてきた黒髪の兄に、カノンは驚いた顔をみせたが、すぐにソファーへ座るよう促した。
ちなみにカノンはエリシオンの離宮の1つをヒュプノスから貰っている。カノンにとってはサガの居る場所が自分の居場所であるとの思いがあり、タナトスは自分の対であるというヒュプノスと利害や思惑が一致したためだ。
そしてサガにとっても実家とは十二宮ではなく、カノンのもとである。
ある意味、これは初めて黒サガがカノンを頼った瞬間でもあった。
「何があったんだ?」
「離婚を切り出された」
端的に答えた黒サガはどかりとソファーへ腰を下ろす。どこか微妙に不機嫌そうだ。
「オレは嬉しいが、おまえら上手く行ってそうな感じだったのに、どうしたんだよ」
「上手く行っていたと思っていたのはアレだけで、タナトスの側は結婚など最初から迷惑なだけであったということだろう」
むすりと答える黒サガに、カノンは心の中で『あれ?』と思った。白いほうのサガならいざ知らず、こちらのサガであればタナトスとの離婚は諸手を上げて喜ぶであろうと予測していたのだ。
「なんだ、不満なのか」
「当たり前だ!このわたしの価値が分からんなど、やはりあの男は二流神よ」
「…ふうん。それで原因は?何をして怒らせたのだ」
「原因などない。結婚を解消するのに離婚という手段があることを、ようやく奴が認識しただけのこと」
「その言い分だと、おまえは前から気づいていたのだな」
カノンが問うと、黒髪のサガははっとしたような表情になり、それから気まずそうに視線を逸らした。
「アレが…もうひとりのわたしが楽しそうであったゆえ、口をだすこともないかと…わたしにとっても聖域で過ごしてあの男の配下となるより快適ではあるしな…」
あの男というのはサガの親友であり、次期教皇でもあるアイツのことだろうなあとカノンはふんだ。黒サガもサガだけあって、相当にねじくれている。己の好意がどこにあるのか、自覚出来ないタイプなのだ。善性や正の感情の大部分を受け持つのが白サガであるためかもしれない。
カノンはため息をつきながらもサガを諭す。
「ある意味これは好機ではないか?向こうから言い出したんだ。円満に別れられるだろ。お前だって何故男神の嫁なんかにならねばならんのだと、散々愚痴を言っていたじゃないか」
「そうなのだが、別れるのならば惜しまれ悔しがらせた上で別れたい。こちらが振られるような形態は論外だ」
「お前な……」
タナトスもタナトスだが、サガも大概である。
カノンはこめかみを押さえながら尋ねた。
「じゃあ、どうするつもりなのだお前は」
それに対して帰ってきた返事は、カノンにとって斜め上すぎるものであった。
黒サガはソファーの上でふんぞりかえったまま、こう言い切ったのだ。
「浮気をしようと思う」
「……」
何故そうなるのか、頭の回転の速いカノンにもまったく流れが見えない。
「……ちなみに、何で?」
「このわたしがモテると判れば、わたしの価値を理解して悔やむであろうからな!」
「……」
黒サガもサガだけあって、恋愛方面はからっきし駄目なのだなと、カノンはまた思った。
「そんなわけで、愚弟よ。丁度いいからおまえが相手をしろ」
「ごめんこうむる」
時をおかぬカノンの否定に、黒サガが本気でショックを受けた顔をしていたが、そんな顔をされるほうが心外だとカノンは思った。
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