星矢関連二次創作サイト「アクマイザー」のMEMO&御礼用ブログ
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「嫁が出て行ってしまった」
慌てた様子でタナトスが駆け込んできたので、ヒュプノスは遠い目をした。
「とうとう愛想をつかされたか」
ヒュプノスは大そうタナトスを愛しているのだが、表面にそれが現れないため、傍目にはぞんざいに扱っているようにしか見えない。
「違うわ!離縁の話をしただけだ」
「お前から離縁を言い出したのなら、慌てることはあるまい」
「結婚解消の方法があると言っただけで、離縁するなどひとことも言っておらん」
「……お前は短慮なだけでなく、馬鹿なのか」
繰り返すがヒュプノスはタナトスをとても大事にしている。しかしそれが表面に現れないため、とても損をしていた。
タナトスもさすがにムッとする。
「お前に相談したオレは確かに馬鹿であったな」
そのままくるりと背を向けて出て行こうとしたので、慌ててヒュプノスはタナトスの法衣の裾を踏んで引き止めた。
「離婚する気はないということか」
「玩具を捨てるのは、オレが飽きてからだ!勝手に出て行くなど恩知らずも甚だしい!」
いろいろ言い分が図々しいのは、神なので仕方がない。
ヒュプノスは密かにため息をつく。タナトスと自分が水入らずの時間をもてるのは、もう少し先になりそうだ。
「ならば拾いに行けばよい。拾い上げたうえで勝手に出て行くなと命ずれば戻ってくるであろう」
「戻ってくるだろうか」
「人も玩具も、必要とする者のところに落ち着くものだ。出て行かせるつもりがないのなら、手元で使い捨てればよい」
とても嫁に対する会話とは思えないが、人間を塵芥とも扱っていなかった彼らからすると、これでも格段の進化なのである。
「そ、そうだな…戻ってきて欲しいわけではないが、アレはニンフたちのアプローチからのいい弾除けになるからな」
「……」
「話を聞いてくれて感謝する、ヒュプノス」
そわそわと出て行ったタナトスの姿は、家出した妻を追いかける夫そのものであったが、本人としては使い勝手の良い玩具を拾いに行くだけのつもりでいる。

「水が器に従うというのは、神にも当てはまるのだな」
形式だけの婚姻が、心の形を変えることもある。
残されたヒュプノスは不満そうにぼそりと呟いたが、己の撒いた種がそれなりにサガへ痛い目を見せているであろうことを想像して、少しだけ溜飲を下げた。

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でもヒュプノスはサガが嫌いでもないという不思議。
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