星矢関連二次創作サイト「アクマイザー」のMEMO&御礼用ブログ
そのとき、デスマスクは珈琲を挽いているところであった。
良い豆が手に入ったので、午後の一服を楽しもうとしていたのである。
そこへ突然現れた黒髪のサガを見たときの感想は『タイミングいいなあ』であった。
デスマスクの印象として、どちらかといえばサガは『タイミングの悪い』人間である。そのせいで二割ほど人生を損しているのではないかと思うほどだ。とはいえ、もともと持っている才能や英気や美貌が他人より抜きん出ているのだから、それでもマイナスにはならないだろう。ちなみに『タイミングの良い』人間の筆頭はアイオロスだ。
「どうしたんスか?」
とっておきの客用珈琲カップを取り出し、自分のカップの隣へ置く。
サガはもてなされるのが当然のように木製のチェアへ座ったが、デスマスクは密かに眉をひそめた。長年のつきあいだけあって、サガのわずかな小宇宙の乱れを見落とすことはない。珍しくこちらのサガが意気消沈しているようにみえる。
「アレが、フラれた」
「はあ?」
「それでわたしもフラれた」
「何言ってるのか全然判らないんですケド」
話を聞きながらも手は休めずに、挽きたての珈琲を布製のフィルターでドリップする。香りが部屋へと充満した。
「だから、浮気相手を探しているのに、誰からも断られる。わたしはそれほど価値のない人間か?」
「……」
通常であれば、これでもまだ説明不足すぎて何のことか意味不明である。だが、デスマスクはだてに長年共に過ごしてきたわけではなかった。丁寧に順番に質問していく。
「それで誰にフラれたって?」
「カノンとシュラとアフロディーテとアイオリア」
「うおおおおおい、そんなに声かけたのかよアンタ!何でまた!」
「タナトスを見返してやろうと思ったのだ」
「タナトスの浮気の仕返しにか?あの神の女好きはいつものこったろ!アンタは気にしてないと思っていたんだが」
「そのようなことは気にしておらん。ただ、アレを離縁をすると言い出して…」
デスマスクの目が点になる。正直よく数年も結婚生活がもったものだと思っていたので、タナトスからの離婚の言及は予測の範疇内である。予想外なのは黒サガの反応の方だ。
「嬉しいだろ?やっと男の嫁なんて立場から開放されるんだぜ?」
「それは嬉しいが、アレの…もうひとりのわたしの価値を否定されるのは許せん」
「それがなんで浮気に繋がるんだよ…って、見返すためというのはそれか!?」
デスマスクからするとトンだ恋愛音痴としか表現のしようがない行動である。しかも、それで浮気の誘いをかけまくったのに断られ続けて自爆を重ねているようなのだ。
「考えてみれば、わたしは誰にも必要とされたことがない。私自身にすらだ。世界を手にするだけの力を持っているのに、何がいけないのだ」
いくら馴染みのデスマスクの前とはいえ、このサガが他人の前で愚痴を零すなど、相当に打ちのめされている。本人も半分ほどしか自覚がないようだが。
デスマスクはそっとサガの前に珈琲を差し出した。
(さて、俺にも浮気の誘いが来たらどうしようかね)
おそらく、というかほぼ100%そのつもりで来ているのだろう。安売りなどサガに似合わないことこの上ない。
サガが大切であるがゆえに、または真面目であるがゆえに断った面子と異なり、デスマスクは浮気くらい問題ないかなとは思っている。サガを楽しませる自信もある。
ただ、そのあとが怖い。
サガを受け入れた自分は、多分タナトスとアイオロスを相手にすることになるだろう。
それも怖くない。
怖いのは、それによってデスマスクを相手にした事を、サガが後悔するかもしれない未来だ。
(しょうがない、全力ではぐらかすか)
自分までが断った時のサガの顔を見たい気もしたが、デスマスクはそこまで酷い男ではなかった。
冷めぬうちにと自分も珈琲カップを口につける。
焙煎の苦味が舌先に広がった。
良い豆が手に入ったので、午後の一服を楽しもうとしていたのである。
そこへ突然現れた黒髪のサガを見たときの感想は『タイミングいいなあ』であった。
デスマスクの印象として、どちらかといえばサガは『タイミングの悪い』人間である。そのせいで二割ほど人生を損しているのではないかと思うほどだ。とはいえ、もともと持っている才能や英気や美貌が他人より抜きん出ているのだから、それでもマイナスにはならないだろう。ちなみに『タイミングの良い』人間の筆頭はアイオロスだ。
「どうしたんスか?」
とっておきの客用珈琲カップを取り出し、自分のカップの隣へ置く。
サガはもてなされるのが当然のように木製のチェアへ座ったが、デスマスクは密かに眉をひそめた。長年のつきあいだけあって、サガのわずかな小宇宙の乱れを見落とすことはない。珍しくこちらのサガが意気消沈しているようにみえる。
「アレが、フラれた」
「はあ?」
「それでわたしもフラれた」
「何言ってるのか全然判らないんですケド」
話を聞きながらも手は休めずに、挽きたての珈琲を布製のフィルターでドリップする。香りが部屋へと充満した。
「だから、浮気相手を探しているのに、誰からも断られる。わたしはそれほど価値のない人間か?」
「……」
通常であれば、これでもまだ説明不足すぎて何のことか意味不明である。だが、デスマスクはだてに長年共に過ごしてきたわけではなかった。丁寧に順番に質問していく。
「それで誰にフラれたって?」
「カノンとシュラとアフロディーテとアイオリア」
「うおおおおおい、そんなに声かけたのかよアンタ!何でまた!」
「タナトスを見返してやろうと思ったのだ」
「タナトスの浮気の仕返しにか?あの神の女好きはいつものこったろ!アンタは気にしてないと思っていたんだが」
「そのようなことは気にしておらん。ただ、アレを離縁をすると言い出して…」
デスマスクの目が点になる。正直よく数年も結婚生活がもったものだと思っていたので、タナトスからの離婚の言及は予測の範疇内である。予想外なのは黒サガの反応の方だ。
「嬉しいだろ?やっと男の嫁なんて立場から開放されるんだぜ?」
「それは嬉しいが、アレの…もうひとりのわたしの価値を否定されるのは許せん」
「それがなんで浮気に繋がるんだよ…って、見返すためというのはそれか!?」
デスマスクからするとトンだ恋愛音痴としか表現のしようがない行動である。しかも、それで浮気の誘いをかけまくったのに断られ続けて自爆を重ねているようなのだ。
「考えてみれば、わたしは誰にも必要とされたことがない。私自身にすらだ。世界を手にするだけの力を持っているのに、何がいけないのだ」
いくら馴染みのデスマスクの前とはいえ、このサガが他人の前で愚痴を零すなど、相当に打ちのめされている。本人も半分ほどしか自覚がないようだが。
デスマスクはそっとサガの前に珈琲を差し出した。
(さて、俺にも浮気の誘いが来たらどうしようかね)
おそらく、というかほぼ100%そのつもりで来ているのだろう。安売りなどサガに似合わないことこの上ない。
サガが大切であるがゆえに、または真面目であるがゆえに断った面子と異なり、デスマスクは浮気くらい問題ないかなとは思っている。サガを楽しませる自信もある。
ただ、そのあとが怖い。
サガを受け入れた自分は、多分タナトスとアイオロスを相手にすることになるだろう。
それも怖くない。
怖いのは、それによってデスマスクを相手にした事を、サガが後悔するかもしれない未来だ。
(しょうがない、全力ではぐらかすか)
自分までが断った時のサガの顔を見たい気もしたが、デスマスクはそこまで酷い男ではなかった。
冷めぬうちにと自分も珈琲カップを口につける。
焙煎の苦味が舌先に広がった。