星矢関連二次創作サイト「アクマイザー」のMEMO&御礼用ブログ
それでも最初は平穏な空気だったのだ。
黒髪のサガが尋ねてきた時、アイオリアは驚きはしたものの、もうひとりのサガへするように挨拶をして迎え入れた。過去をなかったことには出来ないものの、恨みつらみに拘るよりも、辛酸を糧とした今の自分を誇りにして、真っ直ぐに前を見て行こうと決めていたのだ。
平穏でなくなったのは、サガの一言からだった。
「わたしと寝てみる気はないか」
「は?」
何を言われているのか理解するまでに時間が掛かったのは、決してアイオリアののみこみが悪いせいではない。それくらい突拍子もない言葉であっただけだ。
「わたしの浮気の相手をしろ」
「浮気……?タナトスはどうした」
「エリシオンにいる」
「本気なのかどうか知らぬが、おまえの夫だろう」
「フン、その夫から離縁を言い出された。それゆえにわたしの価値を見せ付けてやろうと思ってな」
鼻で笑うサガと対照的に、すうっとアイオリアの目が細くなる。
「俺を馬鹿にしているのか」
闇のサガは何故アイオリアが怒っているのか判らない。怒っていることすら判っていないかもしれない。
「このわたしが誰かを誘うなど、滅多にないことなのだぞ」
「汚らわしい」
アイオリアもまた、こちらのサガの思考回路に慣れていない。それほど親しくもない。そのため、言葉の奥の真意を汲み取るような芸当は出来なかった。
よって会話は平行線だった。
黒サガはきょとんとすら見える表情でアイオリアを見る。
「わたしは、汚らわしいか」
「冥界の悪神などと通じているだけでも汚らわしいのに、操すら立てられんのか。おまえは誰でもいいのか?その堕落した因業に俺を巻き込むな!」
「誰でもいいわけではないぞ」
サガがタナトスとの結婚生活で身に付けた習慣の1つに、『嘘をつかないこと』がある。タナトスは自らの前で人間が偽ることを嫌い、また大概の思考は神の前で隠そうとしても無駄である。寝ぼけて大らかに虚言を流したポセイドンと違い、タナトスは婚姻まで結んだ相手の嘘を許さないだろう。
だが、本音を漏らさぬこちらのサガが口にする言葉は、嘘ではないけれども真実でもなかった。
「おまえは、アイオロスに似ているからな」
これが、アイオリアの怒りを決定的にした。
アイオリアは物も言わず黒サガの胸ぐらを掴むと、そのまま引きずるようにして扉の外へ叩きだす。それきりサガに扉が開かれることも声がかけられることもなかった。
「……なにが、不満なのだ」
自分の言葉がアイオリアを傷つけたことは察したサガであったが、何がいけなかったのか、聡い頭脳を持ちながらさっぱり判らないのであった。
当然、自分が傷ついたことには全く気が付いていなかった。
黒髪のサガが尋ねてきた時、アイオリアは驚きはしたものの、もうひとりのサガへするように挨拶をして迎え入れた。過去をなかったことには出来ないものの、恨みつらみに拘るよりも、辛酸を糧とした今の自分を誇りにして、真っ直ぐに前を見て行こうと決めていたのだ。
平穏でなくなったのは、サガの一言からだった。
「わたしと寝てみる気はないか」
「は?」
何を言われているのか理解するまでに時間が掛かったのは、決してアイオリアののみこみが悪いせいではない。それくらい突拍子もない言葉であっただけだ。
「わたしの浮気の相手をしろ」
「浮気……?タナトスはどうした」
「エリシオンにいる」
「本気なのかどうか知らぬが、おまえの夫だろう」
「フン、その夫から離縁を言い出された。それゆえにわたしの価値を見せ付けてやろうと思ってな」
鼻で笑うサガと対照的に、すうっとアイオリアの目が細くなる。
「俺を馬鹿にしているのか」
闇のサガは何故アイオリアが怒っているのか判らない。怒っていることすら判っていないかもしれない。
「このわたしが誰かを誘うなど、滅多にないことなのだぞ」
「汚らわしい」
アイオリアもまた、こちらのサガの思考回路に慣れていない。それほど親しくもない。そのため、言葉の奥の真意を汲み取るような芸当は出来なかった。
よって会話は平行線だった。
黒サガはきょとんとすら見える表情でアイオリアを見る。
「わたしは、汚らわしいか」
「冥界の悪神などと通じているだけでも汚らわしいのに、操すら立てられんのか。おまえは誰でもいいのか?その堕落した因業に俺を巻き込むな!」
「誰でもいいわけではないぞ」
サガがタナトスとの結婚生活で身に付けた習慣の1つに、『嘘をつかないこと』がある。タナトスは自らの前で人間が偽ることを嫌い、また大概の思考は神の前で隠そうとしても無駄である。寝ぼけて大らかに虚言を流したポセイドンと違い、タナトスは婚姻まで結んだ相手の嘘を許さないだろう。
だが、本音を漏らさぬこちらのサガが口にする言葉は、嘘ではないけれども真実でもなかった。
「おまえは、アイオロスに似ているからな」
これが、アイオリアの怒りを決定的にした。
アイオリアは物も言わず黒サガの胸ぐらを掴むと、そのまま引きずるようにして扉の外へ叩きだす。それきりサガに扉が開かれることも声がかけられることもなかった。
「……なにが、不満なのだ」
自分の言葉がアイオリアを傷つけたことは察したサガであったが、何がいけなかったのか、聡い頭脳を持ちながらさっぱり判らないのであった。
当然、自分が傷ついたことには全く気が付いていなかった。