白黒サガ
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聖戦が終わり、一度死んでリセットされたせいなのか時効なのか、アテナの盾で払われていたわたしは、再び蘇生したサガの中に還っていた。
サガはもうわたしを追い出そうとはしなかった。わたしが何かを目論んでも、アテナが阻止するであろうと信じているのだ。忌々しい。
ただ、全てが明るみに出たうえ、アテナが他の神々の侵略を退けた今となっては、わたしの野望も意味がない。サガはわたしを連れたまま、聖域を出た。
ひっそりとした森の奥に小屋を見つけ、隠者のように暮らす事を選んだサガ。アテナには許されているのだから、お前ほどの力があれば、黄金聖闘士として世に栄光を知らしめる事も可能だろうと囁いたが、興味がないという。
「黄金聖闘士として聖域に戻れば、教皇であるアイオロスに傅く事になるが?」
どこか楽しそうに言うサガの言葉を聞いて、それは嫌だと納得する。
カノンも生きていて、海界へと渡ったらしい。風の噂では、冥界のワイバーンと友人になったとか。物好きなことだ。
その話をするとき、サガはとても嬉しそうだ。深い穴の底から太陽を見上げるような、そんな顔をしている。
弟に会いたいのなら、呼びつければいいではないか。
そういうと、きまってサガは首を振る。
「いいのだ、わたしにはお前がいる」
そう言って、淡い笑みを浮かべた片割れは、笑んだまま遠くの空を見た。
そういえば、かつての部下であった者たちにも、この場所を教えようとしない。
毎日一人で起きて、自分が食すだけの野草を摘んだり、魚を釣ったりするだけで、夜には一人で寝る。
お前にはわたしだけがいればいい。かつて何度もわたしはそう言った。
これは望んだとおりの『サガ』ではないか?
あれほど望んだ『わたし』を手に入れたはずなのに、しかし、何かが足りない気がする。一体何が足りないのだろうか。
何度考えてもわたしには判らなかった。
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昨日は祝日であったせいか、びっくりするほどいっぱいパチを頂きました!
10連打をしてくださった方々もありがとうございます(>▽<)元気を沢山いただきました。