星矢関連二次創作サイト「アクマイザー」のMEMO&御礼用ブログ
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K様に拍手返信がわりのSSです(>ω<)ノ
拙宅での押し絵と旅する男バージョン!あと寝てください!
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アイオロスの足並みは心持ち早い。もともと歩くのが早い人ではあったが、行く先が双児宮というせいもあるだろう。隣を歩くオレの足も自然と速まる。射手座と山羊座が道をゆくとなれば、阻むものもいない。神官も雑兵もみな道を譲る。
そうして到着した双児宮は、人の居る気配がなかった。
空間を操る技の得意な双子座であるから、無人に思わせるのもお手の物なのかもしれない。気にせずオレとアイオロスは中へと足を踏み入れる。
どこか澱んでいるような気がするのだが、我ら黄金聖闘士12人が蘇生したのだ。守護者が暮らすようになれば、また空気も流れ出すだろう。案の定、奥の間に人の姿が見える。
「サガ」
隣で先にアイオロスが声をかけた。
しかし、帰ってきたのはそっけない返事。
「兄さんはいない、いや、居ないと言うのは正確ではないかな」
あまり生気の無い目つきで彼は振り向いた。
胸には銀細工のほどこされた、まるいお盆のようなものを抱えている。
「カノンなのか?」
オレが尋ねると、カノンはそのお盆をオレたちの前に差し出して見せた。それは鏡だった。
「サガはこの中に入ってしまった。もう一人の自分を閉じ込めるのだと言って」
鏡の中を覗き込んでも、自分の顔しか映らない。
「普通の鏡ではないか」
「お前たちには会いたくないのだろう。オレが覗き込むときは、いつでも姿を見せてくれる」
カノンは鏡を自分に向け、その鏡に笑いかけた。
「ほら、ちゃんといる」
双子座は次元を操作する事の出来る技を持つ。しかし、鏡の中に入ることが出来るとは思わない。

聖戦後に蘇生されたのは各星座につきひとりだけ。
だから、オレたちは片割れを失った双子座を案じてここへ来たのだ。

カノンは兄の不在に耐えられず、鏡の中にサガを作り出したのだろうか。
その後もオレとカノンはたわいもない会話を交わしたが、カノンは早く鏡のなかの兄と二人だけになりたがっているように見えたので、早々に双児宮を辞することにした。

しかし、カノンは蘇生できなかったとアテナはおっしゃっていたはず。
アテナでもお間違いになることがあるのだろうか。
アイオロスは空を睨んだまま、ずっと黙っている。
振り返ると、鏡を抱きかかえたカノンの髪が、暗がりに煤けて黒くなったように見えた。

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