「そこに座って、サガ」
星矢に言われるままにチェアに腰を下ろす。座り心地は悪くは無いが、これから始められるであろう行為に、わずかな不安が先立つ。
見上げた視線からその気持ちを汲んでくれたのか、星矢が近づいてきて、顔の近くで囁いた。
「力を抜いて…すぐに気持ちよくなるから」
「星矢」
「大丈夫」
彼が大丈夫というのならば、安心していいのだろう。星矢は言葉だけでなく、手を伸ばして肘掛に乗せられた私の腕に触れてくれた。
「慣れてほぐれるまで、弱にするな?」
星矢はリモコンらしきものを、もう片手に持っている。その指がスイッチを押すと、わたしの身体を振動が襲った。
「…っ」
その器具の動きは緩慢でありながら、しだいに肉へ食い込むように圧迫してくる。強弱をつけてほぐされつつ、突き上げられる動きで、腰が浮きそうになる。けれども、それは確かに痛みだけではなかった。的確にツボを抑えたその動きは、じんわりと快感を生んでいく。
我慢できず、わたしは目を閉じた。
「サガ、痛くない?」
「…ああ、気持ちいい」
「じゃあ、もう少し強くするから」
星矢がリモコンを操作したのだろう、すぐに器具の振動が激しくなり、声が漏れそうになった。このような感覚は知らない。こんな無防備な姿を晒せるのも、星矢の前だからだ。
わたしは手を伸ばし、触れてくれていた星矢の手を、逆にぎゅっと握り締めた。
「カノン、なんだかサガと星矢のまわり、人だかりが出来ていますね」
「…何やってんだあいつら」
「あ、もしかしたらカノンは知らないのかな。あれは温泉場に付きもののマッサージチェアです」
「何だそれは。色気を振りまくための機械か」
「違いますよ。名前のとおり、椅子に座ると自動的にマッサージしてくれるんです…でも確かにサガさん色っぽいですね」
カノンが二人をその場から引き剥がしに行くまで、星矢とサガは温泉地に別種の独自空間を作り出していたのだった。
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まだ続いていた双子+星矢+瞬の慰安旅行妄想。温泉地のマッサージチェアはほんと神の器具…!
今日もぱちぱち有難うございます!元気のもとです(>▽<)ちょっとお出かけするのでご返信は夜にでもさせて下さい。