星矢関連二次創作サイト「アクマイザー」のMEMO&御礼用ブログ
夜も更けて日付が更新されるころの双児宮
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いつもと変わらぬ夕食を平らげたあと、サガが小さなケーキを皿にのせて持ってきた。テーブルに置かれたそれを覗きこめば、表面に粉砂糖で西暦の数字が描かれている。
素朴に焼かれただけの丸型ケーキは、ヴァシロピタであった。
ケーキの中にコインを入れ、切り分けられた中からそれを引き当てた者は、その年は幸運であるといわれている。ギリシアの新年の風習の1つだ。
しかし、そんなものを兄弟二人で食うのは、いったい何年越しであろうか。
「コイン2枚じゃないだろうな?」
思わず確認したのは、過去にサガがそうしたことがあるからだ。
まだ幼かったサガは、1つしかない聖衣になぞらえて、二人ともにコインが来るようにと願ったのだろう。本来1つだけ入れるコインを2つ詰めたのだ。
今ならそこに籠められた優しさも汲める。
しかし、当時のオレは、スペアの身を憐れまれたような気がした。
それで、無言でコインを床に叩きつけたのだ。サガは悲しそうな顔をしたものの、何も言わなかった。互いの擦れ違いを象徴するような記憶の1つだ。
サガはテーブルの上で、まず女神の分をお供え用に切り分け、それから残りを2つに分ける。
「あのときは失敗したからな。聖闘士たるもの、同じ間違いはしない」
ふふと笑って、どちらかを選ぶよう勧めてくる。
超常の力を使えば、どちらにコインが入っているかなど簡単に判るのだが、当然そんなものは封印だ。ちょっとばかり大き目に見える方を選ぶと、サガがそれを小皿に取分けて、オレの前に置いた。
「おまえとわたしに、アテナの加護がありますように」
そんなことを言いながら、サガは己の分も取分けて椅子に座る。
心ばかりオレもアテナに祈り、ケーキへフォークを差し入れると、さっそく先端に当たるものがある。
「アテナはオレに微笑んだようだぞ」
勝ち誇ってコインを取り出して卓上に置くと、サガはもぐもぐとケーキを食しながら、己のケーキからもコインを取り出してみせた。
「おま、2枚ではないと言ったではないか!」
子供の頃のような怒りはないが、先ほどの言葉との齟齬に、思わずつっこむ。
サガは口の中のケーキを上品に飲みこんだあと、心外だと言う顔をした。
「そんなことは言っていないが、2枚では無い」
「は?」
目の前でケーキの端を切り崩し、サガは更にコインを1枚掘り当てて見せる。
「ヴァシロピタは、大勢で楽しむ分にはよいが、二人で行うとどうしても…片方だけが選ばれるような気がしてならない。それゆえ、コインを増やしたのだ」
「……それ、有りなのか?」
そういえばサガはこういう奴だった。
頑固で、勝手で、まっすぐで、自分を曲げる位なら現状を変える。
兄はにこにこと笑顔でオレをみた。
邪気のない、それでいて悪戯っぽい笑顔だ。
「掘り当てたコインの多い方が、より女神に愛されているということで良いか」
「おいまて、何だその突然のマイルールは」
「あと、掘り出した分が互いのお年玉だ」
「それは少なすぎないか」
文句を言いながら、オレも笑っていた。
たとえケーキのなかにコインがなくても、オレたちはもう大丈夫なのだ。
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今年は本当に公式からの供給的な意味で良い年でした…
来年も供給が約束されている幸せ(>▽<)ノ
そして、拙宅のような隅っこサイトに足をお運び下さった皆様にも心より御礼申し上げます。来年もよろしくお願いいたします(ぺこ)
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いつもと変わらぬ夕食を平らげたあと、サガが小さなケーキを皿にのせて持ってきた。テーブルに置かれたそれを覗きこめば、表面に粉砂糖で西暦の数字が描かれている。
素朴に焼かれただけの丸型ケーキは、ヴァシロピタであった。
ケーキの中にコインを入れ、切り分けられた中からそれを引き当てた者は、その年は幸運であるといわれている。ギリシアの新年の風習の1つだ。
しかし、そんなものを兄弟二人で食うのは、いったい何年越しであろうか。
「コイン2枚じゃないだろうな?」
思わず確認したのは、過去にサガがそうしたことがあるからだ。
まだ幼かったサガは、1つしかない聖衣になぞらえて、二人ともにコインが来るようにと願ったのだろう。本来1つだけ入れるコインを2つ詰めたのだ。
今ならそこに籠められた優しさも汲める。
しかし、当時のオレは、スペアの身を憐れまれたような気がした。
それで、無言でコインを床に叩きつけたのだ。サガは悲しそうな顔をしたものの、何も言わなかった。互いの擦れ違いを象徴するような記憶の1つだ。
サガはテーブルの上で、まず女神の分をお供え用に切り分け、それから残りを2つに分ける。
「あのときは失敗したからな。聖闘士たるもの、同じ間違いはしない」
ふふと笑って、どちらかを選ぶよう勧めてくる。
超常の力を使えば、どちらにコインが入っているかなど簡単に判るのだが、当然そんなものは封印だ。ちょっとばかり大き目に見える方を選ぶと、サガがそれを小皿に取分けて、オレの前に置いた。
「おまえとわたしに、アテナの加護がありますように」
そんなことを言いながら、サガは己の分も取分けて椅子に座る。
心ばかりオレもアテナに祈り、ケーキへフォークを差し入れると、さっそく先端に当たるものがある。
「アテナはオレに微笑んだようだぞ」
勝ち誇ってコインを取り出して卓上に置くと、サガはもぐもぐとケーキを食しながら、己のケーキからもコインを取り出してみせた。
「おま、2枚ではないと言ったではないか!」
子供の頃のような怒りはないが、先ほどの言葉との齟齬に、思わずつっこむ。
サガは口の中のケーキを上品に飲みこんだあと、心外だと言う顔をした。
「そんなことは言っていないが、2枚では無い」
「は?」
目の前でケーキの端を切り崩し、サガは更にコインを1枚掘り当てて見せる。
「ヴァシロピタは、大勢で楽しむ分にはよいが、二人で行うとどうしても…片方だけが選ばれるような気がしてならない。それゆえ、コインを増やしたのだ」
「……それ、有りなのか?」
そういえばサガはこういう奴だった。
頑固で、勝手で、まっすぐで、自分を曲げる位なら現状を変える。
兄はにこにこと笑顔でオレをみた。
邪気のない、それでいて悪戯っぽい笑顔だ。
「掘り当てたコインの多い方が、より女神に愛されているということで良いか」
「おいまて、何だその突然のマイルールは」
「あと、掘り出した分が互いのお年玉だ」
「それは少なすぎないか」
文句を言いながら、オレも笑っていた。
たとえケーキのなかにコインがなくても、オレたちはもう大丈夫なのだ。
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今年は本当に公式からの供給的な意味で良い年でした…
来年も供給が約束されている幸せ(>▽<)ノ
そして、拙宅のような隅っこサイトに足をお運び下さった皆様にも心より御礼申し上げます。来年もよろしくお願いいたします(ぺこ)