今日も4/9の不健康なアイオリアと黒サガのお話続き
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何であれ1つ、お前の命令を聞いてやろう。
黒サガのその言葉を、アイオリアは何度も思い出していた。
(自分をからかうための、悪質な嘘かもしれない)
そう考えかけて首を振る。
サガは、嘘や隠し事はするかもしれないが、約束は破らない。
(ならば、何故あのような事を言ったのだろう)
いくら考えても、答えが判らなかった。
深く思索するのは、得意ではない。まして、他人の思惑を推し量るのは無駄なことのように思えた。
それならばいっそ、単純に自分の望みを伝えても良いのではないか。
「俺が望むこと…」
呟くアイオリアの目に、静かな決意が浮かんだ。
「決まったようだな、アイオリア」
夜更けに訪れた双児宮では、獅子の来訪を予見したかのように、黒髪のサガが入り口の柱にもたれ掛りながら待っていた。
「お前の望みは何だ?」
彼の紅い瞳を睨み返し、アイオリアは低く告げる。
「兄さんに、勝ちたい」
ほう、と黒のサガは目を光らせた。
「お前の兄は、時期教皇となる男。黄金聖闘士の中でも、最も優れた者しか付くことの出来ぬ地位だ。その男に、お前は勝つつもりなのか」
「関係ない。俺は兄を、アイオロスを超えたい」
「なるほど」
サガは寄りかかっていた柱から離れ、アイオリアの前へ立った。
「精神面については、私にはどうしようもない。それはお前が自分で鍛えるしかないし、優劣の決め方も判らん」
そう言いながらも、サガは楽しそうだった。
「だが、戦闘面でという限定つきならば…サジタリアスに勝てるよう、私がお前を鍛えよう」
私自身が勝つよりも、お前を通した方が面白そうな事であるしと、サガは付け加える。
そのサガへ、アイオリアは冷たく言い放った。
「言っておくが、俺はお前のことも超えるつもりでいるからな」
「それは楽しみだ。せいぜいしごかせて貰おうか」
アイオリアは暫し黙った後、ぽつりと付け加えた。
「…本当に、出来るだろうか」
「私とお前が組めば、出来るだろうな」
黒サガは、心底楽しそうにまた笑った。
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アイオロスの事を誰よりも良く知るアイオリアとサガが組めば、切迫ながらも英雄を負かす事ができるような気がしないでもないという妄想。戦闘だけで勝っても、それでは兄を超えられないという王道オチ。
そして、こんな黒サガに対しても、27歳アイオロスは「君だって随分と俺のこと好きだよねえ」という態度を崩さないと良い。
サガとリアの二人がかりでも手玉にとってしまうような黒ロスも希望。
⊂~∧☆∧ ∧★∧ ~>
⊂~ ミ`∪´) 人 (`∧´ミ ~>
⊂ ~/眠| |死\ ~ゝ
ちゃんと冥衣付き!二人はプ○キュア!
有難う御座います!コメントのお返事は夜にさせて下さいね!
そんでもって不健康な黒サガとアイオリアのお話。
聖戦後、白のサガに対しては幾分態度の柔らかくなったアイオリアも、黒のサガに対しては友好的態度から程遠い状態であった。
今までの経緯を考えれば、それは無理からぬ事で、こればかりは時間の解決することと周囲も放置している。
しかし、黒サガの側はアイオリアのそのような態度を微塵も気にしていない。むしろ、その拒絶を楽しむかのように、時折アイオリアの神経を逆撫でしては、じっと反応を見る。
ある日、とうとう怒りを爆発させたアイオリアは、黒サガに怒鳴った。
「ふざけるのも大概にしろ!俺は貴様の暇つぶしの玩具ではない」
獅子宮に響き渡る怒号すらも、黒サガの耳には涼風と変わらぬかのようだ。顔色も変えずにアイオリアの前に立った。
「ふざけてなど、おらん」
「では、何の用だ」
言外に、用が無ければ去れという意を込めている。
黒サガは目を細めて笑った。
「お前に、侘びをしようと思ってな」
「今更、口先だけの侘びなど必要ない」
アイオリアは切り捨てる。この黒サガが何を思っているのかは判らないが、サガ自身の贖罪は行動で示すべきものだと思っていた。今、目の前の男が形だけの謝罪など軽く口にしようものなら、殴りつけてやろうと拳を握る。
だが、黒サガは思っても見ない提案を持ち出した。
「あの時、私は幻朧魔皇拳でお前の意思を奪った」
「…ああ」
「それゆえ1つだけ、何であれ今度は私がお前の命令を聞こう」
アイオリアは絶句した。
黒サガはゆるりと微笑む。その笑みは暗黒の蛇を思わせた。
「お前が私の死を望むのなら、それも構わん…さあ、お前は私に何を望む?」
獅子宮の主が咄嗟の返事が出来ずにいるところへ、アイオロスが入ってきた。思わぬ助けが来たように感じて、アイオリアが視線を向ける。
反対に黒サガは、あからさまに顔を顰めた。
「何をしている、サガ」
「何も」
アイオロスに向ける黒サガの視線は、あきらかにアイオリアへ向けたものとは異なっていた。その事に気づいたアイオリアは、何となく胸が痛んだ。
「…サガの言うとおりだ。何でもないよ、兄さん」
黒サガの持ち出してきた提案を、兄にだけは話したくなくて、アイオリアは言葉を濁した。
(ああ、これは、イブの林檎だ)
アイオリアは、黒サガの差し出した甘い贈り物を、自分が受け取ってしまった事を自覚していた。
アイオロスに隠れて、黒サガと共有の秘密を育てる事が、兄に勝ちたいからなのか、13年前自分を置いていった兄への復讐なのか、アイオリアには良く判らなかった。
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黒サガがアイオリアを自分の側へ引き寄せようとするような、そんな関係に萌えます。でも白サガもシュラもシャカもアイオロスも、流石にそれへはいい顔はしません。
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爽やかな春風とともに、星矢が双児宮へと飛び込んできた。
窓辺で静かに読書をしていた黒髪のサガが、ゆっくりと顔を上げる。
最近では、サガの方もこの元気な後輩のペースに慣れてきて、騒がしい乱入も日常風景の一環として受け入れるようになっている。
「何事だ」
彼が一言だけで用件を聞くと、星矢の方はニコニコと笑顔を返した。
「いい天気だから、花見に行こう」
サガは目をぱちりとさせた。ギリシアに花見の習慣は無い。
「花見というのは、花を見るのか?」
「うん、そうだよ。アーモンドの花が綺麗なとこを見つけたんだ」
そう言う星矢の片手には編み籠が握られて、中には簡単な軽食が詰められている。それを見てまたサガは尋ねた。
「日本では、野外で食事をするという言い回しを花見と言うのか」
用を足す事を花摘と言い換える隠語例などを思い出しての問いであったが、星矢は首を振った。
「いいや、食事はオマケだよ」
星矢は待ちきれないようにサガの手をひっぱった。その性急さに呆れたような顔をしながら、サガの方も読みかけの本を閉じてテーブルへと置く。
「花をただ見るだけに、食事まで用意して外へ出かけるとは、ヒマなことだ」
「花をただ見るだけだったら、そうかもしれないけど」
そしてサガを立ち上がらせることに成功した星矢は、有無を言わせずそのまま外へと誘う。強引に黒サガの手を引いて十二宮の階段を下りていく星矢の姿は、すれ違う者たちの目を引いた。
星矢は屈託無く主張する。
「花を見るだけなら、外でご飯を食べるだけなら、一人で出かけても変わらないけどさ。俺がしたいのは、誰かと一緒に花を見て、誰かと一緒に綺麗だなと思い、誰かと一緒にものを食べて仲良くなる、そういう日本式お花見!」
サガはますます良く判らない顔をしている。
「それは、デートというものではないか?」
「ええっ、全然違う!日本の花見は大勢でやるものだから!…あれ?でも、二人で行くとそれっぽいのかなあ…」
思わぬ言葉を聞いたというような星矢の反応を見て、サガは手を引かれながらフっと笑った。
「そうか。私はデートでも構わぬと思ったのだが」
「え?」
思わず立ち止まった星矢とサガの間を、一陣の春風が吹き抜けて行く。
今度はサガの方が、黙ったまま星矢の手を引いて歩き出した。
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男同士でメルヘン。脳内が春なのもお目こぼしください。
タナサガ結婚式へのご祝儀拍手とコメントを有難う御座いました!凄く沢山拍手をいただけてびっくりです(>ω<)
絵を描くのがトロいので、それさえなければもう2~3話タナサガSSを書けたと思うのですが、こんな時でもないとペンを持たないのでヘボ絵もつけてみました。
お返事は次回にゆっくり書かせてください(ぺこぺこ)。萌えるコメントばかりで浮き立っておりました!
新婚。新婚といったらハネムーン!
タナトスとサガが行きそうな旅行先はどこですか。タナトスの趣味とサガの趣味を掛け合わせると、地獄温泉巡りツアーとかですか。
結婚招待状を貰っても、現実を無視して見なかった事にする筆頭はラダマンティスだと思います。カードを受け取って一瞥しても、そのまま引き出しに突っ込んで「さて、仕事の続きをするか…」みたいな。脳が受け入れ拒否。タナトスのことだからスルー出来るのかもしれません。これがハーデスの結婚だのパンドラの結婚だったら大変なことに。