以下タナサガホワイトデー
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「手を出せ」
そう命ずるタナトスの言うままにサガが片手を差し出すと、手のひらへギフト用にラッピングされた包みがぽてぽて3箱分降ってきた。
見れば、それはサガが先月にタナトスへ贈ったものと全く同じブランドの、同じチョコレートセット。
「これは…?」
落とさぬよう両手で持ち直し尋ねてみれば、タナトスはフンと鼻を鳴らした。
「バレンタインで日本式にチョコを受け取ったら、ホワイトデーで三倍返しをするものと決まっているらしい」
「な、なに!?そうなのか?」
サガは慌てた。
「それでは、バレンタインとは受け取ったものが必ず損をするシステムではないか」
「そのようだな…だが、借りはきっちりと返したぞ」
行事の内容を正確に把握していないくせに、三倍返しの部分だけはきっちり正確にこなそうとするタナトスだった。
律儀なのではない。人間に借りを作るのが癪なのだ。
タナトスはほとんどホワイトデーを理解していなかったが、サガも全く理解していない。
申し訳なさそうに、両手に受け取ったチョコへ目を向ける。
その様子を見て、タナトスは怒ったように付け加えた。
「俺の用意した菓子が不満か」
「そのようなことは…え?」
サガは驚いて顔を上げた。
「まさか、貴方が自分で買ったのか?」
「俺を何だと思っているのだ。お前とは違い、人間界での買い物くらい造作も無い」
「神なのに自分で…」
微妙に意思の疎通がない会話にもかかわらず、サガの顔には先ほどまでの恐縮の色だけでなく、嬉しさを押し殺すような、困ったような苦笑が浮かんだ。
サガは、自発的な喜びの表現をするのが下手だった。
「不満など無い。貴方が手ずから用意してくれたチョコだ…弟や友人にも分けさせて貰おうかな」
ちなみにサガは地雷作成能力にも長けていた。
未来の不穏要素2箱を横のテーブルへ置き、1箱だけ包みを開いて中身を取り出す。
「有難う、タナトス」
チョコレートを指で摘んで口にしたサガは、そのまま死の神へ口付けて甘い返礼をした。
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タナサガエンド話が後回しに…
アルテミスの月衛士(←早速サテライトで辞書登録しました)の防具?の兎耳部分が、戦闘態勢の時にはぴんと立っていて、平時は垂れてるというのが何とも本当にウサギ型です。あの耳部分はどうなっているのか。危険状態や小宇宙を読み取って自動可動するのですか。
瞬とサガは、うさ耳をつけても何の違和感もなさそうなのが凄い。
とくにサガは28歳かつ身長188センチもありながら全く違和感がないというのは驚嘆に値するんじゃないか。まったくもって人類の宝ですよ。
などと思いながらも、車田絵のゴールドセイント全員に脳内でうさ耳をつけていったところ、なんと全員違和感無いではないですか。
な、なにィ…これは一体…!
黄金聖闘士が全員特異なのか、うさ耳が万能アイテムなのか。
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ハーデスの惑星直列技「グレイテスト エクリップス」のせいで太陽が隠れてしまい、アテナは対抗策を考えていた。
「完全発動前に解除してくれるようハーデスに頼んではみますが、駄目でしたら太陽神の方に働きかけてみようかと思います」
そのアテナの前で膝をつき、礼をとりながらサガが尋ねる。
「なるほど、太陽神も自分の領域を侵食する此度の永久日食は不快な筈。良い手かと思います。しかし、何故このサガを呼ばれたのでしょうか」
使者としてではないだろうとサガは判断している。
アテナの兄であり、十二神の中でも実力ある太陽神に対して願い事をするのであれば、女神自らの足を運ばねばならないだろう。
女神はにこりと微笑んだ。
「隠れた太陽を呼び出す儀式に力を貸して欲しいのです」
「私が…ですか?」
「貴方の身体は神の芸術品と評判です」
己の半分の年齢にも達しない少女神にそのような事を言われて、サガは顔をわずかに赤らめた。
「この非常時に戯れをおっしゃるのはお止め下さい」
「戯れではありません。日本では隠れた太陽神を引っ張り出すには、裸で踊ると決まっているのです。全裸であれば、貴方に適うものはいないとアイオロスも言っておりました」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「場所は天岩戸にあたる兄の神殿前で良いと思います」
「・・・・・・・・・・お手向かいして宜しいですか?」
ハーデス討伐前に第二次サガの乱が起こりそうだったので、シオンは「神殿から出てきた太陽神も、裸で踊っているのが男性であったら怒ると思います」という人間的正論でアテナを諌めておいた。
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花粉にやられています。ずびずば。
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「カノン、やらせろ」
黒い髪のサガが真剣な目つきで隣に立ったかと思うと、突然こんなことを言い出したものだからオレは固まった。
な、なんだ朝から。しかも命令形か。もう少し風情を考えろ。折角記念すべきサガからの告白が…いやいや、違うだろうオレ。なに手を震わせてるんだ落ち着け。
つとめて平静を装おうと努力したものの、コントローラーを握る手が動かないもんだから、やっと5面まで進めたオレの戦闘機はTV画面の中であえなく撃沈されている。残り機もないから、また最初の面からゲームスタートか。くそ。
どう返事を返したものか、超高速で頭を回転させているオレをよそに、サガもTV画面を見た。
「終わったのか。丁度いい、次は私にやらせろ」
…………。
オレはまた固まった。
「何をだ」
「そのゲームに決まっているだろう」
…………。
黒サガは自分が何をしでかしたのか全く気にした様子もなく、嬉々として説明口調で話している。
「以前のギリシアではTVゲームが法で禁じられていたが、EUの反発によりその法も緩和され、結局廃止された。法的に問題ないとなれば、世俗の文化に触れる良い機会かもしれん。幸い、ゲーム機はお前が以前より違法所持していると思い出したのだ」
…………。
この怒りは直接本人にぶつけていいよな。
「ふざけんな!愚兄に貸すゲーム機などないわ!あと物を頼むとき命令形にすんな!それから期待させんな!」
大声で一気に言うと、サガは目を丸くして、それから鋭く目つきを変えた。
「ゲームくらいで心の狭い男め」
朝から大喧嘩になったので、恋愛パラメータも多分2~3ほど下がった。
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数えてみたらサガ攻本が1番多かった!(サガカノやサガシュラ等)。次がらぶらぶロスサガ本!年中組本やアイオロス本も読み応えがあって、もうどの御本も発行してくださって有難うございますという感じです。
それはさておきシュラ黒チャットで狂犬シュラを書くという宿題を出されました!にも関わらず先に書くのはへたれシュラ。
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(久しぶりにチェンジシリーズ)
シュラは激しく困惑していた。
人生でこれほど困惑したことは、かつてなかろうと思われた。
紫龍との戦いでアイデンティティの変動を引き起こされた時とて、これほど困惑はしなかった。いや、あの時は道が見えた分、むしろ成すべきことはハッキリしていた。
「…どうしましょうか、サガ」
もう思考を放棄して目の前の黒サガに頼るしかない。
目の前の黒サガはといえば、全く困った様子はない。それどころか楽しんでいるようで、口元には笑みが浮かんでいる。
「暫くこのままでも構わぬ。身体が入れ替わる経験など早々なかろう」
自分の姿で言い放った黒サガを見て、シュラはがっくりと肩を落とした。
シュラの次元斬りと黒サガの精神攪乱技の乱発によって巻き起こされた時空のねじれが、互いの精神と身体の入れ違えを引き起こし、気づけば黒サガの身体にはシュラの精神が、シュラの身体には黒サガの精神が入り込んだという状況だった。
もともと精神が乖離しやすい黒サガだからこそ起こった現象かもしれない。
シュラは溜息をつきながら改めて今の身体を確認してみる。
まず長い黒髪。短髪だったシュラにとって、この量の髪は結構重く、頭を動かすたびに靡くのが鬱陶しい。眺める分には大好きだったサガのこの髪も、いざ自分のものとなると勝手が違う。
そして指。サガの爪は綺麗に整えられていた。指も鍛えられていながらしなやかだ。
次に小宇宙を高めてみる。燃え上がったのはカプリコーンの小宇宙だった。他人の身体でもそこは問題ないようで、とりあえずシュラは安心した。
一方サガも小宇宙を高めていた。いつもシュラがするように右手にそれを集中させている。小宇宙が鋭さを増すにつれて、シュラはサガの意図に気が付いた。
「サガ!暴発するのでやめてください!俺の身体であろうと貴方に聖剣は無理ですから!」
シュラは焦って止めに入った。入ろうとした。
しかし、シュラは着用する法衣の裾を踏んづけてつんのめった。
流石にバランスを取って転ばずに済んだものの、黄金聖闘士にあるまじき失態だ。サガが小宇宙を止めて目を丸くしながらシュラへと視線を向ける。サガを止めるという目的は果たせたものの、シュラは赤面した。
改めて足元を確認すると、法衣は地面を引きずるような長さである。
いつもはサガが当たり前のように捌いているので気づかなかったが、これはかなり邪魔だ。階段を上るときなど裾を踏まぬ自信がない。
ドレスを着た女性がスカートを慎ましく摘みあげて歩くように、シュラは法衣をたくし上げて歩かねばならなかった。
シュラは思わず愚痴を零した。
「俺はこの格好で麿羯宮まで上がらなければいけないのですか」
サガはそんなシュラの足元をじっと見てから、顔へと視線を上げた。
「それほど歩きにくいか?」
「ええ、まあ…」
そう応えるとサガは思わぬ行動にでた。
「服程度で歩行に支障が出るとは、修行が足りぬな」
ひとこと言い放つと、シュラの身体を肩に担ぎ上げたのだ。
「サ、サガ!?降ろしてください!」
抗議の声をあげるも、素直に聞き入れるような黒サガではない。
「暴れるな。歩きにくいのであれば麿羯宮まで運んでやろう。それとも異次元経由で飛ばされるのが良いか」
淡々と告げ、もう上宮へ向けて歩き出している。
シュラとしては異次元経由の方が100倍マシであったのだが、それをサガに伝えるタイミングを掴めぬままに事態は進行していく。
結局シュラは先ほど以上に真っ赤になりながら、十二宮の公道を荷物のように運ばれる羽目になったのだった。
だが、本当の災難が訪れるのは翌日以降であるという事をまだシュラは気づいていない。
この出来事は、それを目にした雑兵や神官たちによって「シュラ様が自宮へ黒サガ様を抱きかかえて運んでいた」という噂となり(しかも様々な憶測や尾ひれがオプションとして追加されていた)、それを耳にしたカノンやアイオロスが血相を変えて麿羯宮へ押しかけるという迷惑な後日談に発展していくのだった。
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サガとシュラで入れ替わりを行えば、宿題の狂犬シュラ(でも中身黒サガ)かつ綺麗なシュラ(類似・綺麗なジャイアン=中身白サガ)も可能じゃないですかもしかして!
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「タナトス、その…これを」
サガが何やら包みを渡してきた。
片手に乗るほどの小さな包みは、綺麗な包装紙で包まれている。
地上の品物なのだろう。
サガが何かを冥府へ持ち込むのは珍しいことだ。
ましてや神に捧げ物を用意するなどということは初めてではなかろうか。
何せたかが人間の作る品で、神の目にかない、受け取るに相応しい物などはそうない。かろうじて芸術品などが挙げられるが、そのランクのものをサガ程度の収入で入手出来るとも思えない。
それでもこの男が何を持ってきたのか興味がわき、目の前で包みをあけてみると、中には菓子が入っていた。
サガが遠慮がちに告げる。
「地上では今日、世話になった相手に感謝を表す日なのだ。貴方の口には合わぬかもしれないが」
人間の食べ物を差し出すなど不敬と捨て置いても良かった。
おおかたサガの口調からしても、その覚悟はあるのだろう。
タナトスは破り捨てた包装紙を見た。それなりに目にした事のある老舗の菓子ブランドのものだった。こういった方面に疎いサガなりに、気を使って選んだのだろう。
「ふん…theo broma(神の食べ物)の名に免じて貰ってやる」
そう言うと、サガの顔がぱっと明るくなった。
箱を開けてチョコを1つ摘むと、カカオの苦味と控えめな甘さが口に広がる。
たまには下界の味も悪くないと、珍しくタナトスは思った。
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カカオの学名はTheobroma(神の食べ物)。
死の神であるタナトスを関わらせても問題ないイベントは、多分に商業的イベントであることに気づきました(><;)
今日もぱちぱちありがとうございます!夜にお返事書かせて下さいね!