今日は日食でしたね!曇っているので見れないと思い込んでいたら、雲の合間より見えた場所もあるようで、ちょっぴり残念。
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「チャオ」
イタリアワイン片手に双児宮を訪れたデスマスクは、ソファーに寛ぐサガの髪の色が漆黒であることなど意にも介さず、目の前の椅子へ腰をおろした。
長きのあいだ上司と部下の関係(もしくは共犯者)であった二人だが、サガが偽教皇の座を退いた今は単なる同僚にすぎない。もっとも、聖域における上下関係の厳しさは、先輩後輩の間にも厳然たる一線を引く。デスマスクの態度は砕けているようで、常にサガを立てるものであった…形式的には。
「何の用だ」
「皆既蝕を肴に酒でもと思いまして」
「何の話だ」
「アンタも飲みますよね?」
デスマスクが指を広げると、手品のようにワイングラスが2つ現れる。食器棚からテレポートさせたのだろう。次に現れたのはコルク抜きで、彼は慣れた手つきで栓を抜く。
黒サガは身を起こして頬杖をついた。
「お前ならば肉眼を通さずとも、屋内に居ながらにして天体観測も容易いのかもしれぬが、皆既日食はハーデスとの聖戦の折にあったばかりだし、月食も時期が合わぬ」
「オレが見に来たのは、天体の蝕じゃあないんでね」
琥珀じみた色合いの赤ワインを、先にサガの前へと置いたグラスへ注ぐ。意を汲んだ黒サガは妙な顔をした。
「私を、蝕扱いするな」
「似たようなモンだろ。アンタはサガという光を覆う彼の同位体だ。今も完全にもう一人のアンタを隠しながら、それでいて押さえ切れぬ黄金の小宇宙が、アンタを透かして強く輝いている。まるで金環食のように」
「イタリア人は、皆お前のように口がまわるのか?」
怒る前に呆れたのか、黒サガはグラスを手に取る。とりあえず土産を受け取る気になっているようだ。デスマスクの持ち込む飲食物にハズレはない。そう黒サガに思わせている時点で、ある意味餌付けに成功しているとも言える。
自分のグラスにもワインを満たし、デスマスクはそれをサガのグラスにカチリと合わせて乾杯と笑った。
「じゃあ直球で、アンタに会いたかったからだと言っていいですかね」
「最初からそう言えば良かろう」
「オイオイ、言って良いのかよ」
「当たり前だ」
不思議そうに、しかし高圧的に黒サガは告げる。
(ああ、こいつも所詮サガだからなあ)
身内と判じた相手の感情には疎いジェミニの鈍さを、喜んだものか残念がるべきか、デスマスクは胸中で苦笑した。
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たまには年下らしく甘えに来るデスマスク。
エピGでの黒サガとデスマスクの距離感は本当にたまらんです。
先日のたわごとまんまの双子話
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サガの手により双児宮へ突然TVとDVD一式が運び込まれたと思ったら、「カノン、ちょっとそこへ座りなさい」などと真剣な顔で言われた上、『大自然の映像集・海の生態(3)』なんぞを放映され始めた日には、一体オレはどう対応すれば良いのだろうか。
サガは食い入るように画面を見ている。視線の先にはタツノオトシゴが育児嚢で卵を保護する様子が映されていた。
「…雄が輸卵管を体内に差し込まれて受精するというというのも、考えてみると凄い事だな」
しかも、ようやく発せられた言葉がこんな内容だったので、オレはとりあえず兄の頭の心配をすることにした。
「サガ、暑さで脳をやられたか」
「な、何を唐突に失礼な」
「唐突なのはお前だ。何だこれは」
「いや、その…」
もごもごと歯切れ悪く言いよどんだのち、意を決したのかサガが顔を上げてこちらを見た。
「た、たまには、お前と猥談でもして、親睦を深めようと思って」
「目的は分かった。しかし、それで何故この状況だ」
「交尾映像でもあれば猥談も可能かと思って…お前はシードラゴンだしな…」
「アホかーーーー!!!」
直球すぎるが、それ以外の言葉が出てこない。
どこから突っ込めばいいのだ。
「し、しかし、アレが…黒の私が、お前が乗ってきそうな話題は猥談あたりが無難だろうと…」
「そこにも突っ込みたいが、オレが海龍だからタツノオトシゴの産卵映像って何だ!」
「関連はあるだろう」
「微塵も無いわ!むしろ魚類の交尾で猥談が出来ると思ってるお前が凄いわ!海龍がタツノオトシゴで猥談出来るのなら、双子座のお前は双子がやってれば興奮するのかよ!」
「え」
サガがいきなり黙るものだから、不自然な沈黙が流れた。
しかも何か赤くなって視線を逸らした。ちょっと待て、今のは単なるツッコミで、意味など考えもしていなかったのだが、お前がそんな反応をすると妙な空気が流れるだろう!
サガは黙ったまま、何も言わないで映像に視線を戻した。
画面は珊瑚の産卵へと移り変わっている。
兄の無言をどう受け止めてよいのか判らず、オレは仕方なく隣で一緒に、退屈だけれども美しいその画面を眺め続けた。
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一泊ですが友達と小旅行におでかけです(^-^)
わーい!美術館いくぞー!お祭りみるぞー!
…帰ってきたら原稿描くぞ…締め切り遅れたらごめんなさい(ぺこぺこ)
そしてまた昨日のSSの続きナリ。
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水泳勝負に負けたままのサガは、まだアイオロスに対して静かな闘争心を燃やしていた。そんなサガの横で、カノンが行儀悪くソファーへ横になりながら雑誌をめくっている。
サガはカノンへ話しかけた。
「アイオロスに遠泳で負けたのだ」
「ふんふん」
「体力的にはむしろ私に分があると思うのに」
「ふんふん」
「彼より筋肉が重くて水に沈む分、余計に力を使うという事だろうか。体重も私のほうがあるしな…」
「ふんふん」
「水競技で彼に挑みたいのだが、何が良いだろうか…聞いているのかカノン」
「ふんふん、シンクロナイズドスイミングとかでいいんじゃね?」
「誰と何をシンクロナイズするのだ。第一それでは芸術点で私のほうが有利になってしまう」
「何が有利だ。そもそも誰が判定するんだよ」
「そのあたりの聖闘士に頼んで」
「やめろよどんな拷問セクハラだよ。誰も見たくないだろそれ」
「失礼な。私の裸は芸術だともう一人の私も言っていたぞ」
「しかも裸でやるつもりだったのかよ!」
ようやく雑誌から顔をあげたカノンを、サガがむっとした顔で見下ろしている。おそらく構って欲しくてわざと突っ込み待ち発言をしていたのだろう。サガにしては珍しい誘い受だ。
「お前がシンクロナイズドスイミングでやれと言ったのだ」
「…悪かったよ、真面目に聞かなくて」
カノンは身体を起こした。それによって空いた面積へ、サガも腰を下ろす。
「サガ。水泳でもお前は勝てると思うぞ」
「しかし髪が…」
「そんなものは三つ編にでもすればいいのさ。少なくともオレなら勝てる」
「そうか?」
「海将軍筆頭を舐めないでもらおうか。水泳は得意分野だ。遠泳のコツは波のクセを掴み、その力を利用すること。訓練すればお前も伸びる」
「カノン…」
「まあ試しにオレがアイオロスと勝負するから、それ見て参考にしろ」
その後カノンは本当にアイオロスへ勝負を挑み、勝利を得た。
アイオロスはさして悔しそうでもなく、さっぱりしたものだ。
「オレがサガに勝って、カノンがオレに勝ったってことは、カノンが1番上ってことだね」
しかし、その何気ない一言によって、サガの競争魂はカノンに向けられることになる。サガの視線がカノンにだけ向けられるのは、アイオロスも悔しい。
二人から毎日のように勝負を持ちかけられることになったカノンは、もうアイオロスとサガの勝負事に口を挟むのは止めようと決意した。
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パチパチ有難う御座います(>▽<)お返事は旅行後にさせて下さいね!
元気をいっぱい頂きました。
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早朝、空の白み始めたころに人馬宮を訪れたのは、珍しくも白サガと呼ばれる方のサガだった。
大抵の場合、表に出てくるのは人格統合されたサガもしくは黒サガであったので、希少な機会とアイオロスは素直に喜んだ。
しかし、サガの方はいつものような柔和な面持ちではない。
どこか鋭い視線に本気が伺える。
サガはおもむろに口を開いた。
「アレの代わりに、私と再戦願おうか」
「ええっ?」
そう言われてアイオロスは昨日の出来事を思い出した。
ひょんなことから南の孤島で黒サガと遠泳勝負をする羽目になり、自分が勝利したことを。
勝敗をわける原因となった長髪を黒サガが切ると言い出して、それを止めるのにとても苦労したのだった。
サガは基本的に負けず嫌いだ。それはどのサガであれ変わらない。
黒サガの時にはそれが闘争心や野心となって表れ、白サガの時には向上心や克己心となって表れるだけだ。
半身のこととはいえ、己が負けたことで白サガのスイッチも入ってしまったのだろう。
「でも、その髪では平等な競争にならないから、遠泳勝負は無しにしようって、昨日話したよね」
「身体の条件など言訳にならぬ。しかし、アレとお前が既に話をつけた内容を蒸し返すつもりはない。遠泳以外の水勝負で決着をつけさせてもらう。無論、髪がハンデとならぬものでな」
「…たとえば」
「潜水ではどうだ」
アイオロスは考え込んだ。
種目がどうあれ負けるつもりは無いが、潜水を競うというのはとても危険な事なのである。そしてサガは本気だ。限界を超えても、勝つまでは水面に上がろうとしない彼の姿が目に浮かぶようだ。第三の判定者もなく、医者がいるわけでもない南の島での勝負は、安全面に問題がありすぎる。
サガもそれくらい判っているだろうに。
(昔からサガは、勝負事になると無茶をするところがあった)
アイオロスは苦笑した。
しかし、アイオロスも判っていなかった。サガがそこまで勝敗にこだわるのは、アイオロスに対してだけだという事を。
少し考えた後、アイオロスは頷いた。
「いいよ。その代わり、無理をしてどちらかが溺れたときには、もう片方が口移しの人工呼吸で助けること」
アイオロスは真面目に言ったのに、潜水勝負は中止になった。
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自分の代わりにアイオロスと戦うと言い出した白サガをみたら、黒サガは何気に凄く喜ぶかもしれないなと思いました。
サガにとってアイオロスはやっぱり特別な相手なのです。
拍手ありがとうございました!創作とやる気の源です。
そんなわけ(1つ前ブログ参照)で海ロスサガ
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「あれっ?」
アイオロスは振り返って頓狂な声を上げた。
カノンが留守の朝方を狙い、双児宮に押しかけて半ば強引にサガの手を掴んだままテレポートしたものの、転移先で落ち着いてみれば、いつのまにか手の先にいたのは黒髪のサガ。
黒サガは、常のごとく挑戦的な瞳でアイオロスを睨んでいる。
「このような人気のない場所へ連れ出すということは、ようやく雌雄を決する気になったのだな」
ここは南海の孤島。白い砂浜が湾をつくり、海はエメラルドのごとく煌いている。誰もいない空間に、立つのはアイオロスと黒サガだけ。
デートのつもりで連れ出したサガの変容にもめげないのが、アイオロスの大人物たる所以だ。黒サガ相手にも予定を変更することなく話しかける。
「ええと…この美しい風景を見て、何か思うところはない?」
「海だな」
「ああ」
「水泳勝負ということか」
「……ええと」
「拳を使わなければ、私闘禁止の掟に触れぬ。そういうことであろう」
「………。むこうの小島まで遠泳競争しよっか」
「受けてたつぞ、サジタリアス」
しかし、恋愛の機敏に無縁の黒サガはその上をいった。
その後、遠泳勝負には勝ったものの(サガは長い髪のぶん水の抵抗が多かった)、そのことは一層黒サガの競争心を煽ることとなる。
「髪を切ってくるゆえ、また明日もう1度勝負しろ」
そんな事を言い出した黒サガに、アイオロスは一生懸命思いとどまるよう説得せねばならなくなるのだった。
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でもアイオロスはこんなんでも「デートした!」と言い張る。
白サガも黒サガに「お前ばかりアイオロスと(デートして)…」とか言い出す。
黒サガとはいえ自分が負けたのが何気に悔しくて、一緒に水泳競争に燃え出す白サガもいいかも…