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聖闘士を目指してひたすら修行に励んでいたあの頃、アイオロスとわたしは良く二人で星を見た。星の見えるような時間にならなければ、訓練生は自由な時間をとれなかったということもある。
同期の者たちは、たいてい日中の修行が終わると同時に疲れ果てて泥のように眠りに付いたが、幸いわたしたちには多少の余力があった。
旧態依然とした聖域では、夜ともなれば守衛地以外の灯りは落ち、静かな闇が訪れる。そのぶん天蓋には煌々と星が輝いていた。
「綺麗だな」
「ああ」
そんな凡庸な会話を交わしたと思う。
「あの満天の星々の全てよりも、きっとこの星は美しいに違いない」
空を見上げてアイオロスがそう言うと、まるでそれが唯一つの真実であるかのように思えた。
「サガよ、俺たちは星を護るものとなろう」
そう笑いかけてくれた瞳のなかに、わたしは星を見ていた。
それも今は昔のはなし。
聖戦が終わり、新たなる生を受けたわたしたちは、新たなる日常をも手に入れた。
少年のまま蘇ったアイオロスは、昔と同じように「星を見よう」わたしを誘った。
28歳になったわたしにも、彼は変わらず輝いて見える。
わたしは少しだけ迷い、それから首を横に振った。
「アイオロス、私は星を砕くものとなったのだ」
そう言うと、アイオロスはただ寂しそうに微笑んで「そうか」とだけ答えた。
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このところ受け持ち以外の仕事でバタバタです(>ω<)サイトめぐりとパラ銀での御本で萌え補給!LC18巻とND2巻も早く届かないかなあ。
というわけでまた星矢とLCクロスオーバー双子。ややアスデフ。
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カノンからしてみると、どう見てもアスプロスのデフテロスに対する態度はでか過ぎるのだった。
身の回りの世話や家事をさせるのは序の口で、下手をすると弟を模造品扱い、踏みつけにしている場面にいきあたったこともある。
それでも、デフテロスの方は嫌がっているように見えない。むしろ幸せそうにアスプロスへ近寄っていく。その事がまたカノンを苛立たせる。
「お前、それでいいのか?」
納得がゆかず、思わず強い語調でデフテロスへ尋ねると、デフテロスは『それがどうした』という眼差しで答えた。大概の場合、彼の視線成分はアスプロスへ向ける以外、ほぼ無関心で構成されている。同じ黄金聖闘士相手には多少マシになるが、それでも彼の世界はアスプロスで出来ていた。
「俺はアスプロスが聖闘士として正道を歩もうとしてくれるだけで嬉しい。他には何も望まん」
本気で言っていることは、その表情で一目瞭然であった。
「星を背負って生まれたものが聖闘士として勤めを果たすのは当然だろう。それだけで満足とは、どれだけ兄への期待値が低いのだデフテロス」
「そうか?」
カノンへ向けられた視線は、ただただ真っ直ぐで。
カノンは口を噤む。当然と言ったものの、その当然の事が、かつての自分には出来なかったことを思い出したからだ。
(そうだ、サガも今のこいつと同じように、正しく聖闘士であること、ただそれだけしか俺に望みはしなかった)
そんなサガに対して、13年前の自分は女神を殺せだの教皇を殺せだの共に世界を支配しようだの、一体どれだけを望み、唆したのだろうか。
サガが内なる闇と戦っていたのを知りながら、自分と同じ悪へと引き寄せる為に偽善者と決め付けた言動を思い返すと、今さらながら恥ずかしくなる。
しかしカノンは首を振った。過去を恥じて内に篭るのはカノンの性に合わない。それに、かつてサガの言葉の真意を理解せず、増長していた自分だからこそ言えることもある。
「兄を思うのならば、あまり甘やかすな」
真面目に進言に、やはりアッサリとデフテロスは返した。
「甘やかされているのは俺のほうだ」
「は?」
思わぬ返答に戸惑うカノンへ、デフテロスは目を輝かせながら力説してきた。
「あれはアスプロスが俺に甘えさせてくれているのだ。それに、二人だけのときの兄さ…アスプロスの可愛さと美しさときたら、眩しいくらいなのだぞ」
「………それは本気で言っているのか」
「何故、冗談を言う必要があるのだ」
宇宙語を聞いているような気がして頭を抱えているカノンを尻目に、デフテロスは兄を見つけてその傍へ駆けて行く。遠い目で見送ったカノンの横へ、いつの間にか笑いながらサガが立っていた。
「何がおかしい」
思わず突っかかると、サガは微笑みながら目を細めた。
「『兄を思うのならば、あまり甘やかすな』…他人へはそのように言うわりに、お前はわたしを甘やかしているなと思って」
「ちょっとまて、オレは甘やかした覚えなどない」
「そうか?」
ふわりと穏やかに笑うサガの笑顔をみているうちに、『あれはアスプロスが俺に甘えさせてくれているのだ』と言ったデフテロスの言葉が理解できるような気がして、その事がまた何となく悔しくて、カノンは眉を顰める。
サガはまるで独り言のように、そっと呟いた。
「自覚がなくともお前は優しい。今もデフテロスが虐げられていないか心配したのだろう?13年前のわたしは自分のことに手一杯で、その優しさに気づく事が出来なかった」
許せ、と伝わる小宇宙にどう応えて良いのか判らず、ますますカノンは仏頂面で眉を顰めた。
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カノンもたまにはもっと直球にサガへ甘えるといいな!
お風呂に入ろうと思ったら、お湯が出ません。修理が必要ですと表示で訴えるエコキュート。ちょ、お風呂に浸かれないなんて、サガだったら泣きますよ?(泣きません)
とりあえず全面的に湯が出ないので冷水シャワーシャンプーしてきます。まさか自宅で滝修行をする羽目になるとは思いませんでしたが、シベリアで生活しているカミュになりきれば、水道水など温泉も同然のはず!
…(´・ω・`)
とりあえずLC双子同居シリーズで温泉妄想。弟がまた乙女。
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火山島であるカノン島には、地熱により温泉が幾つも沸いている。
その中でも暮らしている小屋に近く、人目につかぬ場所を探し出して、アスプロスとデフテロスは自分たち用の入浴施設を作った。施設といっても、着替えの服を置くための棚や仕切りといった程度の簡単な空間しかない。かろうじて屋根は付いているが、壁は三面しかないため、雨はしのげるものの吹きさらしである。掘っ立て小屋とも呼べぬ代物だ。
それでも、二人だけで使うには充分だった。聖域での集団入浴を思えば、専用の露天風呂があるというのは、贅沢なことでもある。
特にデフテロスにとっては幸せだった。影の存在として扱われてきた彼は、皆と同じように浴場を使うことなど許されなかった。誰も居ない時間を見計らい修行場の水場を使うか、泉で汚れを洗い流すしかなかったのだ。
アスプロスの方は他の者たちと一緒に修行をしていたため、付き合い上彼らとともに修行後の汗を流しに浴場へ行く事もある。自分ではない誰かに肌を見せている兄を思うと、邪な想いなど当時はなかったとはいえ、取り残されたような気になり、デフテロスが寂しがっていたのは確かだ。
アスプロスが黄金聖闘士となり、双児宮に住めるようになってからは、宮付きの簡易沐浴場を使えるようになった。環境は劇的に改善したが、それでもこのように堂々と外でアスプロスとともに湯を使えることなど、夢のまた夢で、デフテロスは今日も兄と温泉に浸かりながら幸福を噛み締めている。
「デフテロス」
岩に寄りかかるようにして湯船に寝転がり、空を見上げていたアスプロスが、ふいに弟を見た。
「何だろう兄さん」
「その…いれてもいいか?」
咄嗟にデフテロスの脳裏に浮かんだことと言えば1つしかない。
思わず真っ赤になって頷くと、アスプロスは起き上がってデフテロスの隣へ座った。跳ね上がる心臓を押さえつつ、デフテロスは温泉の中で兄の手を握る。アスプロスはにこりと笑ってデフテロスの手を握り返した。
「良かった、今日は火山活動が活発なせいか、少し湯が熱くてな」
目をぱちりとさせたデフテロスの前で、アスプロスは念動力と次元操作を駆使して、川から引き込んだ水を温泉へ足しはじめている。
「……」
無言になったデフテロスが無意識に小宇宙を燃やしたため、集まったマグマがアスプロスの冷やした温度を上回り帳消しにしていく。気づいたアスプロスに呆れられても、温泉とデフテロスの顔の火照りは冷える事がなかった。
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兄に求められたらそれだけで幸せ絶頂なので受け攻めは二の次のデフテロス。兄の前以外では普通に格好よく鬼なデフテロスのはず…!
そして明日にはパラ銀でA様に購入して頂いた御本の山が届くんだ…!日頃チェックさせて頂いているサークルさんの新刊はほぼ抑えたはず!お陰で今回はほとんど通販しなくても済みそうです(>▽<)
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アスプロスは手元のパンを手にとり、しげしげと眺めた。
毎朝デフテロスが用意する丸パンは、その言葉の通り本当に丸いのだ。
基本的には聖域で食していたものとなんら変わらぬ材料であるはずなのだが、全方面にこんがりとキツネ色に焼けたそれは、火の通りが均一のためか、中はふっくらと柔らかくとても美味い。
「これはお前が焼いたのか?」
デフテロスに尋ねると、弟はこくりと頷いた。
「そういえばどこで調理をしているのだろう。パン用の竈はないようだが…」
粗末な修行用の小屋に、きちんとした台所など付いているわけもなく。
火を必要とするものは、外で薪を集めて燃やして調理しているのだが、そういえばデフテロスは火をおこした様子もない。
はっとアスプロスは気づいた。
「これも溶岩竈か!」
「ああ、パン生地を丸めて…溶岩洞窟の上のほうで浮かせていると焼ける」
小宇宙で溶岩を球として浮かせることのできるデフテロスには、パン生地を浮かせる事など造作もないのだ。
「なるほど、お前特製パンというわけだな。とても美味い」
にこりと微笑んでぱくりとパンを齧ると、デフテロスは嬉しそうに返事をした。
「兄さんがそれを好きなら、今度は出来るだけ巨大サイズで…」
アスプロスが慌てて普通サイズを希望したのは言うまでもない。
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強火の遠火も意図せずして実行できるデフ用溶岩釜(火山)です。
今日はお友達と小旅行(>▽<)桜を見て美味しいものを食べて温泉三昧泊予定!寒いですが、寒い方が温泉の真価が発揮されるはず!
そして温泉ときたらサガ!サガがどこかに浸かっていないかな!あ、もしサガが温泉に入っていたら全裸でも写真とって来ますね。私が捕まらないように祈っててください。
あと、寒いので寝るときもくっついて暖をとる双子妄想中。
サガとカノンの場合、一応部屋も寝台もそれぞれ持っている設定にしておりますが、LC双子の場合、デフちーはアスプーのストーカー影に慣れているので、部屋が共用でも全然問題なさそうですよね。
時代的にもあのころの平民生活なら部屋は共用で済ませている予感なんですが、時代背景はよくわかっていないのでテキトーです。
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デフテロスは考え込んでいた。兄とともに生活を始めて同じ布団で眠るようになり、幸せ絶頂であるはずなのに、このところ寝苦しい夜が続いているのだ。
物理的に暑苦しいというわけではない。一組しかない布団は粗末で夜は冷え、互いの体温が丁度よい防寒対策になっている。ふと触れる兄の肌は戦士にしてはなめらかできめ細かく、間近での呼吸がときおり感じられてくすぐった…
ここまで考えて、デフテロスは自分の心拍数があがっている事に気づいた。顔が火照り、何故かとても落ち着かない。
(これは一体どういうことだ)
眉間にしわを寄せていると、突然後ろから声がかかった。
「どうしたのだ、デフテロス」
アスプロスの声だ。びくりと振り返ると、アスプロスが真っ直ぐに、しかし心配そうな顔をしてこちらを見つめている。自分が兄を背後から見ることには慣れているが、いざ自分が視線を向けられると落ち着かない。そして強く真摯な瞳…わけもわからず胸が苦しくなり、目を逸らす。
逸らしてからはっとした。
(これは、アスプロスが話してくれた状態では…!)
すれ違った過去の心境を語ってくれたアスプロスが、昔はデフテロスの視線が疎ましかったのだと打ち明けてくれた事がある。
(オレは兄さんの視線が疎ましいのか…?無意識下では兄さんと一緒に寝たくなくて拒否反応を起こしているのか…?)
自分が兄を疎んじているかもしれないということが、デフテロスにはショックだった。
黙ってしまったデフテロスに、アスプロスが眉を潜めて首を傾げる。
何か返事をせねばと気は焦っている。しかし、そんな事を兄には言えない。絶対にいえない。自分が情けなく、悲しくなる。アスプロスもかつてはそうだったのだろうか。
(心が落ち着くまで、別場所で眠ったほうがいいのかもしれない)
デフテロスの理性はそう判断を下そうとした。
しかし、瞬時に感情が『いやだ』と叫ぶ。目にじわりと涙が浮かんだ。
驚いてアスプロスが駆け寄ってくる。
「このところあまり寝て居なさそうだったから、心配していたのだ。今日の食事はオレが作るから、お前は少し横になって仮眠を取れ。眠らぬと情緒不安定になるものだからな」
頬を撫でたアスプロスの手の感触は温かく、そしてやはり胸が騒いだ。
アスプロスが夕飯用の狩りに出かけたあと、デフテロスは寝台に寝転がり天井を見上げた。なるほど一人だと平穏なもので、すぐに睡魔が下りてくる。しかし、かわりに何とも言えない物足りなさが生まれていた。
眠りに身を任せながら、やはりアスプロスと一緒がいいと結論付けてデフテロスは布団を被った。
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それではいってきます(^▽^)ノ