バレンタインが近付くとロスサガでいちゃいちゃさせたくなります。
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サガは己の孤独に構わぬ人間だ。
しかし、黄金聖闘士でありながら気さくで誰にでも優しい彼は、人々から慕われ、いつも大勢に囲まれている。周囲が彼を一人にしないのだ。だから昔の俺は、サガのそんな性質どころか、その孤独にすらほとんど気づかなかった。時折のぞく翳りは、聖域の将来を担ってゆく責任ゆえの自戒あたりであろうと軽くみなしていた。黄金聖闘士は多かれ少なかれ孤高であるものだから。
身の内に秘めたもう一つの人格を隠し、弟のことまで隠さなければならない環境は、サガの対人感覚をだいぶ歪めたのではないだろうか。大勢の中に居ながらも他人に心を許すことが出来ず、また内面から他人のように語りかける存在があるという状態は、通常の意味での孤独というものを彼に理解させなかっただろうとも思う。
そして、彼の周囲にいた人間は、その後ことごとく彼の半魂によって排除されるか、配下として取り込まれた。そのこともサガの孤独を深くした。潔癖なサガは、己のせいで居なくなってしまった者に関して、自分が傷ついたと感じることすら許さなかったし、巻き込んだ者に対して寄りかかるような真似はしなかった。大切な者を求める資格など全くないと考え、それを寂しいと思う感情を封じてしまったのだ。
それは心の空虚を埋める術も知らないという事を意味する。ぽっかりと幾つも空いた穴をそのままに、サガは13年間過ごした。
サガは他人には優しかったけれども、自分自身に対してはたいそう厳しい男だった。
「なあサガ。13年のあいだに、俺がいなくて寂しいと思ったことある?」
傷をえぐる台詞だよなあと思いながら、俺は尋ねてみた。サガはまじまじと俺の顔をみて、そして首を振る。
「いいや。そのような余裕はなかった。お前を思い返すことは何度もあったが、それは寂しいという感情ではなかったように思う」
「ふうん」
サガが珍しく人馬宮へ立ち寄っているのは、双児宮へ戻ってもカノンがいないからだ。彼は海将軍としての任務で海界に行っている。
「じゃあ今、カノンが居なくて寂しい?」
「まあ…そうだな」
迷いながらも即座になされた言葉を聞いて、俺への台詞との差に少し拗ねる。
サガは俺の反応に気づいたのか、少し微笑んだ。その笑み方が子供をあやす時のそれのようで、俺は本格的に拗ねる。
「カノンの時は寂しいと思うのか」
するとサガはそっと近寄ってきて、椅子に座っている俺の肩に手を置いた。
「いつでも会える者に会えぬのは寂しい…だが、寂しいと感じるのも楽しい。元気にやっていると知っている分には辛くない」
サガの声はいつでも穏やかで、荒げられたのを聞いたのは13年前のあの夜くらいだ。
「アイオロス、お前の失われていた時間はとても辛かったが、お前は光となって常にわたしを助けてくれた。だから寂しくはなかったのだ」
嘘ではないのだろう。けれどもそれは、死んだ者だけがサガの傍にいられるという意味でもある気がする。俺はサガを抱き寄せた。
「君が遠くて、俺は寂しい」
「わたしは此処に居るのに、どうして?」
「心に入れてくれないから」
サガは驚いたように息を呑み、それから『そんなことはない』と小さく吐息をついた。
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この二人はときどき無意識に超甘々空間を展開している気がします。
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カノン島で暮らす生活は基本的に自給自足であるとはいえ、生活必需品の全てを二人で賄うのは流石に不可能だ。
聖域やその近辺の村まで行けば大抵のものは手に入るが、ちょっとした野菜や穀物程度なら、島唯一の小さな村へ足を運ぶのが常道だろう。
しかし、アスプロスは村へ下りる事を少し迷っていた。
その村でデフテロスは鬼扱いされているらしいのだ。ではデフテロスはどうやって買物をしているのかと、前に聞いたことがある。
「お前はいつも卵を村から貰ってきていたな…?」
「ああ、だが俺が行くと鬼が来たと皆逃げてしまうので、金だけ置いて必要分取っている。最近は俺を怖がって鶏が卵を産まなくなってしまったとかで、扉に魔よけの札を貼っている家まである」
「よく判らん。お前のような可愛い鬼などいないと思うのだが」
「…アスプロス」
見つめあうキックオフ状態(※年代限定比喩)は何時もの事だ。
アスプロスは、デフテロスが可愛いのは兄の前でだけだということを良く判っていなかった。
とにかく、その時の会話を思い出してアスプロスは唸る。
(同じ顔の俺もやはり鬼扱いされるのではなかろうか…いや俺のことはともかく、弟への誤解は解きたい。ここで暮らしてゆくのならば尚更)
それは生活の便のためというより、デフテロスへの対応を改めて欲しいと願う兄としての純粋な願いだった。差別と畏怖、形は違えど、昔と同じように人々から忌まれ遠ざけられる弟を見たくないのだ。
正直、アスプロスは村人に腹を立てても居た。
(大体、デフテロスが過去に何度も噴火をセブンセンシズで鎮めてきたからこそ、あの村は無事なのだ。感謝されこそすれ、疎まれる理由などないではないか?)
デフテロスが村を助けたのは修行と住まい確保の都合であって、実際には「役に立たない弱者はこの世から消えるものだ」という割とシビアな主義であることも兄はよく判っていない。
兄は兄で弟に対してぶ厚い色眼鏡をかけていた。
考え込んでいると、デフテロスが心配そうに覗き込んできた。
「どうしたのだアスプロス、何か悩みでもあるのか」
「いやその…ふもとの村人たちのことだが、お前への誤解を何とかしようと思って」
忌憚なく伝えると、デフテロスは首を横に振った。
「いや、俺は今のままで良い」
「しかし」
「鬼と思わせておけば、恐れて此処には誰も近付かぬだろう。俺は兄さんとの生活を誰にも邪魔されたくはない」
「デフテロス…」
つい先日修行を志して再チャレンジを目論み、前回以上の勢いで追い払われた白銀一同も、まさかそんな理由でだとは思いもしていないだろう。
(デフテロスの気持ちは嬉しいが、やはりこのままではいけない)
アスプロスは弟を説得して、一緒に村へ降りてみる事にした。
その結果、アスプロスの前では鬼が大人しいと理解した村人は、必要以上に二人をくっつけようとしたため、デフテロスは喜んだものの、家内安全+安産のお守りを貰ったアスプロスの方は何となく納得の行かぬまま山へ帰ったのだった。
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同じ顔なのに、アスプロスは鬼扱いされない予感。アスぷーの前では何だか可愛く見える鬼に、島民はまた色々勝手な解釈をしそうです。「鬼を従える聖者様だ」とか「いや油断するな綺麗な方も鬼に違いない」とか「とりあえず綺麗な方は友好的みたいだから、鬼といつも一緒にして鎮めてもらおう」とか。
そんなわけで突然島民たちに「あの鬼と結婚してくれませんか」とか言われるアスプロス。アスプロスは単語を聞き間違えたかと思って(カノン島の方言は聞き取りにくいな)と流しますけど、島民は本気だよ!
島民たちがだんだん慣れて来て、デフちーの可愛さを理解するようになると、今度はアスぷーが「デフテロスは俺のだ」主張しだしますよ!
それにつけても今日は風が強いですね(>△<)洗濯物が飛ばされる予感。
あれですよ、海のトリトンでのポセイドンが子供を作ろうとした方法なら、普通にカノンとも子供を成せると思うんですよ。なんといってもポセイドン様は神だし。
小宇宙は命の真髄なので、10センシズ位にまで高めれば聖闘士たちは子供を作れそうな気がします。子供というか生命創造という意味で。でも、そこまでいくともう人間の領域じゃあないですね(汗)。じゃあポセイドン様が産めばいいのか。ゼウスだって頭からアテナを産んでるんだし。わあ、見たいなあ「カノンの子供を産んでください」とポセイドン様に真顔で言うサガ。テティスが横から「でもジュリアン様の身体は使わないで下さい」と補足します。ポセイドンが「お前のところのアテナに頼めばよかろう」と呆れて突っ込むと、サガは真っ赤になって「女性にそのような事は申せません!」と言い返しますよ。色々間違ってる。
それはさておき、ラダvカノ→←サガなSS。
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ごくまれにではあるが、冥界軍のワイバーンが約束なくふらりとカノンに会いに来ることがある。例えば聖域へ外交文書を届けに来たついでに、そのまま双児宮へ立ち寄るというような。
今がまさにその状況なのであった。一応ワイバーンは遠慮がちに宮の外から訪問の許可を求めてきた。わたしは無言で弟を見る。
弟はといえば、咄嗟に壁の鏡へ目を走らせてから、わたしの視線に気づいて仏頂面に戻った。無意識に身だしなみを気にしたのだろう。それだけワイバーンを気に掛けているということだ。
カノンが一方的に相手を振り回しているのではないか思っていたが、そうでもないようだ。
「お前にも案外可愛いところがあるのだな、カノン」
「何だ急に」
顔を顰めて睨み返してきたものの、内心の動揺がわたしにはバレバレだ。
だいたいワイバーンが聖域に足を踏み入れた時点でカノンは気づいている筈で、心の準備をする余裕などいくらでもあったのだ。それは双児宮へ立ち寄るかどうかまでは判らなかったかもしれないけれど、会えると判ったとたん浮き足立っているのだから、いい年をして可愛いと言われても仕方があるまい。
ちなみに、カノンに限らず黄金聖闘士は全員ワイバーンの来訪に気づいている。気配を消してきたわけではないので、冥闘士の小宇宙を宮の守護者が気づかぬわけがない。それはつまり、公務の帰りに冥闘士が双児宮へ立ち寄っているという状況が全員に筒抜けということなのだが、カノンはそんな事よりもワイバーンと会えることの方に気が行ってしまっているようだ。気づいていたら、もっと仏頂面になることだろう。
「早くワイバーンに返事をしてあげなさい」
「な、何でオレが」
「彼の用があるのは、お前だろう?」
そう言ってやると、カノンは言葉につまり、それから赤くなってもごもごと何か言訳をした。
昔のカノンを良く知っている兄としては、太陽が西から昇るのではないかと思う反応だ。
カノンは変わった。女神の大いなる愛に触れたおかげだと思う。改心しただけでなく、周囲の人間に対して誠実な対応をするようになった。元敵将とも親交を深めているのだから、大した変化だと思う。
「愛は人を変えるものだな…」
女神の慈愛のちからをあらためて思いつつ呟くと、カノンが物凄い勢いで噛み付いてきた。
「ラ、ラダとオレは別にそんな関係では…!」
「隠すこともないのではないか?今は冥界とも講和しているのだし」
「隠してなどおらん!!」
「愛称で呼ぶほどの仲のくせに、何を今更。それよりも彼をあまり待たせてはいけない」
相手が冥闘士だからといって友情を伏せることもなかろうと思うのだが、カノンはますます赤くなり、ぷいとそのまま入り口へと早足に行ってしまった。照れると素直でなくなるところは昔のままだ。
(あれを友情と思うか)
不意に心の奥底で嗤う声がする。女神の盾で消えたはずの半身は、復活後にちゃっかりわたしの下へ舞い戻って、時折語りかけてくる。応えずに無視をしてやると、その闇は更に言いつのった。
(お前は認めたくないのだろう、カノンの変化を。自分以外を見る弟を)
久しぶりに出てきて見当違いのことを言う闇に、わたしも思わず微笑を零す。
「お前は、判っていない」
(なんだと)
「カノンがわたしを見なくなることは、ありえない。それならば、色々なカノンを見ることが出来たほうがいい」
そう、たとえカノンが誰を愛したとしても、それは変わらない。他の者へ目が移っても、わたしが呼べば必ず振り返るし振り返らせてみせる。
だから、カノンのワイバーンへの感情が友情だろうが愛情だろうが、わたしは構わないのだ。
それに、どちらにせよあれはまだ友情の範疇だ。これから恋へと変わっていくにしても。
「それよりも、どうして友情でないと思ったのだ?」
一体わたしの半身がどのような下世話な回答をするのかと、多少わくわくしながら聞き返すと、闇は舌打ちをして心の奥に沈んでしまった。カノンの可愛げをわけてやりたい。
外ではカノンが迷宮を解いて双児宮を開放している。
わたしはワイバーン用に購入しておいたとっておきの紅茶を入れるために、厨房へと向かった。
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今日もぱちぱち有難う御座います(>▽<)日々のエネルギー源です!
あっ、今日は節分ですか。鬼を追い払う日ですか!
平安時代などの追難の儀式で豆を投げられる鬼に、聖域で差別されてるデフテロスが重なってしまい、またパラレルな妄想に走るところでした。皆に豆を投げつけられてションボリしているデフちーを庇い慰める昔のきれいなアスぷーとか。
兄を殺した自分のことを、デフちーは鬼だと思ってそうです。だからカノン島住民に鬼呼ばわりされても特に訂正しないという。11巻を読み返してみたら、何気にデジェルが鬼呼ばわりしてました。通称っぽい感じでですが、聖闘士たちにも鬼呼ばわりされてるんですよね…ペルセウスたちへの対応を見る限り怖がられても仕方ないのかもしれませんが。あんなに素は可愛いのに!(対兄限定)
「弱者は死ね」という鬼デフちーと、お兄さんの前での乙女言動のギャップが堪らないですよ。
それはさて置き節分SSS。
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今日も衛星放送で日本の情報を欠かさないアテナ沙織である。
日本は節分の日ということで、画面には豆を撒く各地の行事の様子が映し出されていた。幼稚園では子供たちが手作りのお面をつけた鬼へ楽しそうに豆を投げつけている。微笑ましい風景だった。
紅茶を運んできたサガがそれを見て目を細める。
「アテナよ、あれも日本の風習ですか?」
「ええ、日本式の立春前日の季節行事です。豆を撒くのですよ」
カップを受け取り沙織も微笑んだ。サガは日本出身の沙織を慮り、日本の事を知ろうと努力をしてくれている。そして沙織が聖域で過ごしやすいようにと骨を折ってくれるのだ。
サガは画面を見ながら、感心したようにほぅと息を零した。
「”まめに働けるように”との願いを込めるのですね。働かぬものに投げつけて勤労を促すとは働き者の日本人らしい行事です。我々も見習わねば」
「サガ、お正月に説明したお節料理の由来と混ざっているようですが、微妙に違います」
沙織は微笑みながらも、今日も冷静に訂正しておいた。
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相変わらず風邪気味ですが小妄想で乗り切っております。
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アスプロスは朝食に出された卵を1つ手に取り、しげしげと眺めた。
小宇宙で物質を測れる聖闘士ならば、殻を剥くまでもなくゆで卵だと判る。それも固ゆで卵だ。
(デフテロスはゆで卵が好きだったのだろうか。以前はそうでもなかったように記憶しているのだが…)
カノン島でデフテロスと暮らすようになってから、卵料理といえばゆで卵なのだ。他の料理法を見たことがない。アスプロスもゆで卵を嫌いなわけではないが、こう毎回だと飽きる前に不思議に思う。デフテロスはあれでマメであり、不精ゆえの手抜き料理とも思えない。
じっと卵を見ていると、スープ鍋を運んできたデフテロスが兄に声をかけた。
「卵がどうかしたのか」
「いや、その…たまには半熟卵が食べたいかなと…」
思ったままに希望を述べると、デフテロスは困った顔になった。
「いつも村で卵を調達したあとには、火山内の近道を抜けてくるのだが、溶岩の中を通ると小宇宙で保護していても卵が固くなってしまってな…」
「ああ、それでゆで卵になっているのか」
「だがアスプロスが半熟卵を望むのなら、明日から溶岩地帯は3分以内で走りぬける」
「!!」
「もしそれでも固ゆでになってしまうようだったら、火山を吹き飛ばしてでも絶対に兄さんのもとへ半熟で届けてみせるから」
その目に本気を見たアスプロスは、慌てて弟を宥めた。
「い、いや、そこまで半熟に拘っているわけではない。デフテロスよ、卵に限らず茹だりそうな食材を持つときには、溶岩の中を通らずとも、次元移動を使えば良いのではないだろうか」
「!!!」
デフテロスが驚いたような顔でアスプロスを見る。
「こんな近距離に次元移動を使うという発想はなかった」
「…いや、普通の発想だと思うが…」
「さすが兄さんは思考回路が柔軟だな」
きらきらした目で兄を讃えだしたデフテロスを前にして、アスプロスは自分のせいで弟が火山を吹き飛ばすことにならなくて良かったと、内心で胸をなでおろした。
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くー、会社のディナーショーのサクラも家族としてきたのですが、風邪気味のため折角のご飯を残してしまいました。ただごはんなのに…(>ω<)