星矢関連二次創作サイト「アクマイザー」のMEMO&御礼用ブログ
今日は地元で1番大きなお祭りで、それ目的に観光客がいっぱい宿泊する予定なんですが、朝5時現在凄い大雨です。太陽神頑張ってくれっていったのに…(>M<)
いや、太陽神は毎日変わらず同じだけがんばってるのか。雨の神様が太陽と地上の間でがんばってるだけですか。
もし今日電車止まったら大変だなあ。むーん。
それはさておき昨日のAA妄想まんまで28歳統合サガと14歳ロスSS
=============================
「サガ、君は俺のことをどう思っている?」
アイオロスの瞳は怖いくらいに真っ直ぐで、それはどこか星矢を思い浮かばせた。どうと突然聞かれても困るものがあるが、真摯な問いには真剣に答えるべきであると思う。
それゆえ、わたしは今のわたしの思うところを述べる事にした。
「昔からの敵」
今のわたしは精神を統合させていて、割合でいえば黒のこころ80%、白のこころ20%といった混ざり具合だ。黒白などという区分が正しいのかはよく判らないが、元々こころに正確な名称を付ける事など出来ないのだし、暫定的にニ人格を区分けしてそう呼んでいる。
こころの配分によって物事の判断結果が変わることもあるので、精神を統合させたときには、今まで以上に客観的な視点で事象を捉えるよう心がけているつもりなのだが、それが却って良くないのか、時折失敗する。
今も失敗したようだ。アイオロスの真っ直ぐな瞳が揺らいだかと思うと、その瞳が潤んだ。泣かせてしまったのだろうか。
しかし、アイオロスはぐいと拳で目元をこすると、笑顔を作った。
「ごめん、なんか、汗が目に入ったみたいで」
笑顔になったのではない。明らかに笑顔を作ったのだ。
それ位は、わたしとて判る。
何やら視線を感じてそちらに目をやると、部屋の隅で雑誌をめくっていたカノンが、こちらを呆れた目で見ている。少し咎めるような感情も伝わってくる。
(お前な、子供をあまり苛めんな)
小宇宙通信など使わずとも、わたしとカノンは視線だけで意思を通じ合う事が出来るのだ。
(苛めてなどいない。黄金聖闘士の14歳は子供ではない。それに、アイオロスが、この程度で揺らぐとは思わなかったから)
(…お前、さすがに酷いぞ、それ)
カノンはさらに呆れたようだ。
酷かったろうか。
言われるとそうかもしれない。わたしの知るアイオロスは誰よりも毅然とした聖闘士の鑑のような男だった。その男が、傷つくほどの内容だったということか。ならば、わたしの言葉は酷かったのだろう。
少し胸が痛んだ。
わたしはまだ、統合した精神状態に慣れていなくて、悪意も善意も混ざった思考(わたし以外の人間はそれが普通らしい)というものを、1つずつ学んでいるような状況だ。
その拙さは何の言訳にもならないし、彼とは確かに対立するばかりの過去であったけれども、嫌いなわけではないのだ。それは伝えておきたい。
わたしはアイオロスを見た。
「アイオロス、お前は何時でもわたしの前に立ちふさがった。しかし、それはお前だから出来たのだ」
まだ赤みの残る目元のまま、アイオロスも私を見る。
「わたしに対峙出来るものなど、お前しかいなかった。わたしが最悪の事態を招く事を、お前が止めてくれたのだ。だから、お前が敵で良かったと思う。わたしはお前が」
「…敵じゃない」
アイオロスが言葉をさえぎった。
「友達だからだよ、サガ」
訴えるような、また泣きそうな眼差しで、ぎゅっと拳を握っている。
「………」
もしかしたら、カノンが正しいのだろうか。13年前は、誰もわたしたちの事を子供だなどと思わなかったし、実際そのように扱われもしなかったけれども、14歳というのは、実はまだ子供なのだろうか。あれほど大人びてみえたアイオロスでさえ。
こんなに簡単にアイオロスがわたしの言葉で揺らぐのも、彼が年相応のこころを持っているからなのかもしれない。そして、いろんな事が重なって、彼に大人の振りをする余裕が無いからかもしれない。考えてみれば聖戦後蘇ったものの、アイオロス以外の黄金聖闘士は、彼の弟までも全員が大人となってしまっていて、なのにアイオロスは教皇候補で英雄で、彼らを従えねばならぬ立場なのだ。それはとてもプレッシャーである気がする。
わたしはもう少し、彼に優しくしてもいいのではないか。
胸のなかで、急速に黒のこころが領域を減らした。
とりあえず、目の前のアイオロスを浮上させねばならない。
「…アイオロス。このあと、遊園地にでもいかないか」
思いきって言葉にしたというのに、部屋の隅でカノンが脱力している。アイオロスもびっくりしたような顔で目をぱちりとさせた。
「ひょっとしてそれ、俺を元気付けようとしているのか?」
「ああ。前に同じ事を言ったら、星矢は喜んだぞ」
「しかも、星矢と同列の子供扱いしようとしてるのか?」
アイオロスの声に微妙な感情が混ざる。また失敗したのだろうか。
(子供なのはお前だ)
カノンのこころが伝わってきた。
ちょっと心配になって、アイオロスに確認をとってみる。
「…もう少し、別の場所がいいだろうか」
「いいや、行ってみたい。行った事がないし」
さいわいアイオロスは即答し、ひと呼吸ぶんの間をおいて柔らかな声が続く。
「次期教皇を遊園地に誘ってくれるのなんて、君くらいだよ、サガ」
作り物ではない笑顔が、ようやくアイオロスの顔に浮かんでいた。
彼が笑うと、わたしのこころにも光が増える気がする。
わたしは彼を、本当はどう思っているのだろう。
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いや、太陽神は毎日変わらず同じだけがんばってるのか。雨の神様が太陽と地上の間でがんばってるだけですか。
もし今日電車止まったら大変だなあ。むーん。
それはさておき昨日のAA妄想まんまで28歳統合サガと14歳ロスSS
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「サガ、君は俺のことをどう思っている?」
アイオロスの瞳は怖いくらいに真っ直ぐで、それはどこか星矢を思い浮かばせた。どうと突然聞かれても困るものがあるが、真摯な問いには真剣に答えるべきであると思う。
それゆえ、わたしは今のわたしの思うところを述べる事にした。
「昔からの敵」
今のわたしは精神を統合させていて、割合でいえば黒のこころ80%、白のこころ20%といった混ざり具合だ。黒白などという区分が正しいのかはよく判らないが、元々こころに正確な名称を付ける事など出来ないのだし、暫定的にニ人格を区分けしてそう呼んでいる。
こころの配分によって物事の判断結果が変わることもあるので、精神を統合させたときには、今まで以上に客観的な視点で事象を捉えるよう心がけているつもりなのだが、それが却って良くないのか、時折失敗する。
今も失敗したようだ。アイオロスの真っ直ぐな瞳が揺らいだかと思うと、その瞳が潤んだ。泣かせてしまったのだろうか。
しかし、アイオロスはぐいと拳で目元をこすると、笑顔を作った。
「ごめん、なんか、汗が目に入ったみたいで」
笑顔になったのではない。明らかに笑顔を作ったのだ。
それ位は、わたしとて判る。
何やら視線を感じてそちらに目をやると、部屋の隅で雑誌をめくっていたカノンが、こちらを呆れた目で見ている。少し咎めるような感情も伝わってくる。
(お前な、子供をあまり苛めんな)
小宇宙通信など使わずとも、わたしとカノンは視線だけで意思を通じ合う事が出来るのだ。
(苛めてなどいない。黄金聖闘士の14歳は子供ではない。それに、アイオロスが、この程度で揺らぐとは思わなかったから)
(…お前、さすがに酷いぞ、それ)
カノンはさらに呆れたようだ。
酷かったろうか。
言われるとそうかもしれない。わたしの知るアイオロスは誰よりも毅然とした聖闘士の鑑のような男だった。その男が、傷つくほどの内容だったということか。ならば、わたしの言葉は酷かったのだろう。
少し胸が痛んだ。
わたしはまだ、統合した精神状態に慣れていなくて、悪意も善意も混ざった思考(わたし以外の人間はそれが普通らしい)というものを、1つずつ学んでいるような状況だ。
その拙さは何の言訳にもならないし、彼とは確かに対立するばかりの過去であったけれども、嫌いなわけではないのだ。それは伝えておきたい。
わたしはアイオロスを見た。
「アイオロス、お前は何時でもわたしの前に立ちふさがった。しかし、それはお前だから出来たのだ」
まだ赤みの残る目元のまま、アイオロスも私を見る。
「わたしに対峙出来るものなど、お前しかいなかった。わたしが最悪の事態を招く事を、お前が止めてくれたのだ。だから、お前が敵で良かったと思う。わたしはお前が」
「…敵じゃない」
アイオロスが言葉をさえぎった。
「友達だからだよ、サガ」
訴えるような、また泣きそうな眼差しで、ぎゅっと拳を握っている。
「………」
もしかしたら、カノンが正しいのだろうか。13年前は、誰もわたしたちの事を子供だなどと思わなかったし、実際そのように扱われもしなかったけれども、14歳というのは、実はまだ子供なのだろうか。あれほど大人びてみえたアイオロスでさえ。
こんなに簡単にアイオロスがわたしの言葉で揺らぐのも、彼が年相応のこころを持っているからなのかもしれない。そして、いろんな事が重なって、彼に大人の振りをする余裕が無いからかもしれない。考えてみれば聖戦後蘇ったものの、アイオロス以外の黄金聖闘士は、彼の弟までも全員が大人となってしまっていて、なのにアイオロスは教皇候補で英雄で、彼らを従えねばならぬ立場なのだ。それはとてもプレッシャーである気がする。
わたしはもう少し、彼に優しくしてもいいのではないか。
胸のなかで、急速に黒のこころが領域を減らした。
とりあえず、目の前のアイオロスを浮上させねばならない。
「…アイオロス。このあと、遊園地にでもいかないか」
思いきって言葉にしたというのに、部屋の隅でカノンが脱力している。アイオロスもびっくりしたような顔で目をぱちりとさせた。
「ひょっとしてそれ、俺を元気付けようとしているのか?」
「ああ。前に同じ事を言ったら、星矢は喜んだぞ」
「しかも、星矢と同列の子供扱いしようとしてるのか?」
アイオロスの声に微妙な感情が混ざる。また失敗したのだろうか。
(子供なのはお前だ)
カノンのこころが伝わってきた。
ちょっと心配になって、アイオロスに確認をとってみる。
「…もう少し、別の場所がいいだろうか」
「いいや、行ってみたい。行った事がないし」
さいわいアイオロスは即答し、ひと呼吸ぶんの間をおいて柔らかな声が続く。
「次期教皇を遊園地に誘ってくれるのなんて、君くらいだよ、サガ」
作り物ではない笑顔が、ようやくアイオロスの顔に浮かんでいた。
彼が笑うと、わたしのこころにも光が増える気がする。
わたしは彼を、本当はどう思っているのだろう。
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ペン入れだけおわた…!
見た目アイオリアで中身アイオロス、または見た目アイオロスで中身アイオリア…という身体チェンジネタについて昨日のブログで零したのですが、妄想してみたらサガの食いつきが凄く良くてびっくり。
いつものようにアイオリアに接しようとして出来ないサガとか、アイオロスなんだけれども見た目がアイオリアなので無碍にしにくいサガとか、いろいろ滾ります(>ω<)
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ここにあったリアサガSSは加筆修正してTEXTへ移動しました。
(2009/8/7)
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ってもう出社時間に!残りは夜にでも…でもきっと今夜も残業。
リアinロスとロスinリアとでは、どっちがサガが流されやすいか考えると、仕事どこじゃない。でも仕事(>△<。)
ジュリアンの身体を借りたポセイドンが、ソファーで寛ぐカノンの髪に手を伸ばす。指先にほどよく絡めて遊び、そのまま圧し掛かろうとしたところで、カノンの腕がその行為を制した。
「それはジュリアンの身体だ」
「このポセイドンの身体でもあるぞ」
海神の反論にも、その拒絶が緩むことはない。
ポセイドンは諦めて隣へと腰を下ろし、ジュリアンの仕草そのままに、カノンの顔を覗き込む。
神が人に降りるとき、神のあり方はその降りた人間の魂にとても左右される。ジュリアンに宿ったポセイドンはジュリアン的なポセイドンであり、沙織として顕現したアテナは、沙織的なアテナなのだ。
ポセイドンは首を傾げる。
「ならば、ジュリアンもお前の事を好きであればよいのか?」
カノンは黙って眉をひそめている。
彼を振り返らせる事が出来るのは、今はまだ双子の兄のサガだけなのだ。
「シードラゴンたるお前は、このポセイドンのもののはずだろうに」
むくれている海神の頭を、黙ったままのカノンの手が撫でる。
「それはジュリアンの身体だ」
「このポセイドンの身体でもあるぞ」
海神の反論にも、その拒絶が緩むことはない。
ポセイドンは諦めて隣へと腰を下ろし、ジュリアンの仕草そのままに、カノンの顔を覗き込む。
神が人に降りるとき、神のあり方はその降りた人間の魂にとても左右される。ジュリアンに宿ったポセイドンはジュリアン的なポセイドンであり、沙織として顕現したアテナは、沙織的なアテナなのだ。
ポセイドンは首を傾げる。
「ならば、ジュリアンもお前の事を好きであればよいのか?」
カノンは黙って眉をひそめている。
彼を振り返らせる事が出来るのは、今はまだ双子の兄のサガだけなのだ。
「シードラゴンたるお前は、このポセイドンのもののはずだろうに」
むくれている海神の頭を、黙ったままのカノンの手が撫でる。
昨日は朝晴れていたので布団を干したら、30分後にはお天気雨、その直後にはどしゃぶりで布団が濡れましたションボリ。でもサガでそのションボリ具合を妄想したら滾りました。
サガが凄い下らないことで失敗してションボリしていたらいいのになあ。そんなサガを慰めるのがロス・シュラ・デスマスク・タナトス・カノン・アフロディーテ・アイオリアなど、相手によってバージョンが異なりますよ!
サガは完璧なくせに、私生活では色んな人に面倒みてもらってる予感です。
サガが凄い下らないことで失敗してションボリしていたらいいのになあ。そんなサガを慰めるのがロス・シュラ・デスマスク・タナトス・カノン・アフロディーテ・アイオリアなど、相手によってバージョンが異なりますよ!
サガは完璧なくせに、私生活では色んな人に面倒みてもらってる予感です。
晴れると早起き出来るので、出勤前に少しだけ落ち着いてSS書く時間が確保できるココロ。でも推敲時間まではない。
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目の前でサガが星矢の顔の泥を拭いてやっている。
星矢は顔だけでなく、服も埃で汚れていた。何故かと言うと俺がみっちりと稽古をつけたからだ。
サジタリアスの聖衣を纏うことのある彼を、同じ射手座である俺が鍛えるのは当然で、それは先達としての義務とも言えるだろう。
もっとも、ペガサスの聖衣は神聖衣へ進化することが可能なので、今さら黄金聖衣は必要ではないかもしれないが。
稽古を終えたあと、人馬宮へ戻ろうとした俺に、星矢は双児宮へ寄っていこうと提案した。星矢とサガは仲が良いのだ。
サガは己の野望を星矢によって阻まれたにも関わらず、何の遺恨もなく星矢へ愛情を向ける。もう一人のサガの時ですらそうらしい。星矢も屈託なくそれに応える。
今もサガは、それはそれは嬉しそうに星矢の面倒をみている。彼が年下の者へ優しい事を差し引いても、これほど愛情全開の視線を受ける事が出来るのは、星矢くらいしか思い浮かばない。他の者に対しての愛情の発露は、何らかの自制心・遠慮・体裁などのフィルターを通すのがサガの常だというのに。
俺相手のときとは大違いだ。
内心でこっそりと溜息をつく。
分かっている、サガが星矢に優しいのは後輩だからだ。そして誰よりも星矢が頑張る者だからだ。ほうっておけないのだ。
俺に構わないのは、同輩かつ対等と認めてくれているからであり、俺もサガに面倒をみられたいわけではない。
しかし、しかしだ。甘やかさずとも、俺とて優しくはされたいのだ。
星矢は13歳、俺は14歳。1つしか違わぬはずの年齢を思い出してまた落ち込む。聖戦後に蘇生されて最年少黄金聖闘士となり、仲間たちとの年齢が逆転して気づいた事がある。かつては年長という立場で封じられてきた我侭な感情を、俺も人並みに持っていたということを(だからといって、感情をそのままに露わとして許されるわけはない。俺が教皇候補であるという立場は変わらない)。
ぼんやり頬杖をついて、テーブルの向こうの二人を見ていたら、ふいに冷たいものが頭から降ってきた。びっくりして顔をあげる。視界に映ったのは、グラスを両手に持ったカノンだった。
「うっかり手が滑ったすまんな」
あきらかに棒読みなセリフだ。
黄金聖闘士である俺が、カノンの接近に気づかず、水をかけられるまで放心していたという状況は褒められたものではない。それほどまでに内面に浸っていた己を反省する。もっとしっかりしなければ。
カノンは口で謝罪しただけで、まだ水の入っているほうのグラスを星矢の側のテーブルへ置きに行った。代わりにサガが慌てて乾布を持って俺の方へ来る。
「弟が粗相をしてすまない、大丈夫か?」
乾布を濡れてしまった服に当てながら、心配そうに聞かれた。
「いや、これくらい何ということもない」
「しかし…」
実際大した被害でもないのだが。
サガは俺の顔をみて目をパチリとさせ、それから少し笑った。
「よく見れば、お前の顔も泥だらけだな」
程よく水で湿った布が、俺の顔にも押し当てられる。先ほど星矢がされていたように。
間近で見るサガの睫毛はとても長く、それが瞬くさまはとても綺麗だ。
こしこしと顔を拭かれながら、俺はふとカノンを見た。カノンはこちらに背を向け、サガと入れ違いに星矢と話をしている。
「すまないな」
サガが目を伏せて、もう1度呟いた。
それは何故かカノンに向けられているような気がした。
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カノンはライバルであっても弱っている相手には優しいのです多分。
アイオロスも聡いので、後でカノンに気遣われた事に気づきます。
でもってサガは、星矢に構いすぎてアイオロスを放置していると気づかせてくれたカノンに謝るのでした…という説明なしでも分かるような文章力が欲しいよう(>△<;)
サガやアイオロスの一人称で話を書くと、堅い感じになりますね。
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目の前でサガが星矢の顔の泥を拭いてやっている。
星矢は顔だけでなく、服も埃で汚れていた。何故かと言うと俺がみっちりと稽古をつけたからだ。
サジタリアスの聖衣を纏うことのある彼を、同じ射手座である俺が鍛えるのは当然で、それは先達としての義務とも言えるだろう。
もっとも、ペガサスの聖衣は神聖衣へ進化することが可能なので、今さら黄金聖衣は必要ではないかもしれないが。
稽古を終えたあと、人馬宮へ戻ろうとした俺に、星矢は双児宮へ寄っていこうと提案した。星矢とサガは仲が良いのだ。
サガは己の野望を星矢によって阻まれたにも関わらず、何の遺恨もなく星矢へ愛情を向ける。もう一人のサガの時ですらそうらしい。星矢も屈託なくそれに応える。
今もサガは、それはそれは嬉しそうに星矢の面倒をみている。彼が年下の者へ優しい事を差し引いても、これほど愛情全開の視線を受ける事が出来るのは、星矢くらいしか思い浮かばない。他の者に対しての愛情の発露は、何らかの自制心・遠慮・体裁などのフィルターを通すのがサガの常だというのに。
俺相手のときとは大違いだ。
内心でこっそりと溜息をつく。
分かっている、サガが星矢に優しいのは後輩だからだ。そして誰よりも星矢が頑張る者だからだ。ほうっておけないのだ。
俺に構わないのは、同輩かつ対等と認めてくれているからであり、俺もサガに面倒をみられたいわけではない。
しかし、しかしだ。甘やかさずとも、俺とて優しくはされたいのだ。
星矢は13歳、俺は14歳。1つしか違わぬはずの年齢を思い出してまた落ち込む。聖戦後に蘇生されて最年少黄金聖闘士となり、仲間たちとの年齢が逆転して気づいた事がある。かつては年長という立場で封じられてきた我侭な感情を、俺も人並みに持っていたということを(だからといって、感情をそのままに露わとして許されるわけはない。俺が教皇候補であるという立場は変わらない)。
ぼんやり頬杖をついて、テーブルの向こうの二人を見ていたら、ふいに冷たいものが頭から降ってきた。びっくりして顔をあげる。視界に映ったのは、グラスを両手に持ったカノンだった。
「うっかり手が滑ったすまんな」
あきらかに棒読みなセリフだ。
黄金聖闘士である俺が、カノンの接近に気づかず、水をかけられるまで放心していたという状況は褒められたものではない。それほどまでに内面に浸っていた己を反省する。もっとしっかりしなければ。
カノンは口で謝罪しただけで、まだ水の入っているほうのグラスを星矢の側のテーブルへ置きに行った。代わりにサガが慌てて乾布を持って俺の方へ来る。
「弟が粗相をしてすまない、大丈夫か?」
乾布を濡れてしまった服に当てながら、心配そうに聞かれた。
「いや、これくらい何ということもない」
「しかし…」
実際大した被害でもないのだが。
サガは俺の顔をみて目をパチリとさせ、それから少し笑った。
「よく見れば、お前の顔も泥だらけだな」
程よく水で湿った布が、俺の顔にも押し当てられる。先ほど星矢がされていたように。
間近で見るサガの睫毛はとても長く、それが瞬くさまはとても綺麗だ。
こしこしと顔を拭かれながら、俺はふとカノンを見た。カノンはこちらに背を向け、サガと入れ違いに星矢と話をしている。
「すまないな」
サガが目を伏せて、もう1度呟いた。
それは何故かカノンに向けられているような気がした。
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カノンはライバルであっても弱っている相手には優しいのです多分。
アイオロスも聡いので、後でカノンに気遣われた事に気づきます。
でもってサガは、星矢に構いすぎてアイオロスを放置していると気づかせてくれたカノンに謝るのでした…という説明なしでも分かるような文章力が欲しいよう(>△<;)
サガやアイオロスの一人称で話を書くと、堅い感じになりますね。