私は幼い頃から、自分が何者なのか判らなかった。
何故って、私の中の黒い影はいつも私に話しかけてきたし、カノンは当たり前のように私の心へ言葉を使わずに入り込んできていたし、小宇宙の使い方なんて知らなかった頃は周囲の人間の思考を無意識に拾ってしまっていたりもしたし(後にそれはテレパシーと呼ばれる超常能力と知った)、その中でいったいどれが自分のこころであるのか、判別なんか出来なかったのだ。
私の頭の中は、私と私でない者の境界線が無かった。
そのうちにだんだんと世界には他人というものが存在するのだと判って来て、同じ顔のカノンですら私とは別人なのだと知ったけれど、相変わらず黒い影は「私もサガなのだ」と言う。どうしてもこの存在とは考え方が相容れないように思うのだが、それでも私だというのだろうか。私は自分という自我に自信が持てない。
そのうちに聖域に見出されて、私とカノンは双子座の候補生となった。指針のない私にとって、女神の教えは判りやすかった。自分の価値観を基準に出来ぬのならば、女神を基準にすれば良いのではないかと、その時に思った。
しかし、そのようにしていたら、いつの間にか私は神のようだと称されるようになっていた。神と人との境界線も、割合といい加減なのだろうか。私の影は「お前が神になってしまえ」と囁く。
私は何を基準に私を決めたら良いのだろうか。
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捏造サガパターンその1アイタタタタ!(>ω<)
サガって長ったらしい思考形式っぽいイメージです。でも逆に意外と単純アホの子っぽい思考のサガでもいいなあ!だって世界征服狙うような人ですから!
素のサガは純粋で正義感に溢れてる人だと思っています。
「タナトスよ、人間を軽視するなといつも言っているだろう」
「軽視などしておらん、オレも前回の聖戦で学んでいる」
「ほう。それにしては言動が改まったように思えぬが…」
「ヒュプノス、前聖戦までオレは人間を塵あくた程度にも思っていなかった」
「ああ」
「だが流石に命持つものは厄介だった。それゆえ蛆虫扱いに昇格させることとした」
「………昇格なのか?」
「無機物が生物になったのだぞ?破格の扱いであろう」
「…………」
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こんな二流神が大好きです。
そんなわけでリンクで繋げました。まずはサガカノです。カノンの方が受けなのでご注意ください。
※ここにありました裏頁へのリンクは本サイトテキストエリアの裏頁へ移動しました 6/14
ビスケット1枚あったら二人ではんぶんこ
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『カノン、星矢がケーキを1個置いていってくれたので、半分にして一緒に食べないか』
双児宮へ帰る途中だったオレの脳裏に、サガからの小宇宙通信が届いた。
またあの小僧が遊びに来ていたのかと思うと同時に、半分にしようというサガの言葉で昔を思い出す。
今でこそサガと並び立ち、もうひとりの双子座の聖闘士として表の世界にいるが、昔のオレはジェミニの隠されたスペアであり、この名と存在を知るものはサガ以外ほぼ皆無だった。
だから今日のような誕生日であっても、祝われたのはサガ一人。
サガは受け取った品物や菓子を必ずオレの元へ持ち帰り、『半分にしよう』と言ったものだった。
聖域では貴重な嗜好品である一片のケーキを、絶対に一人では食べようとしなかったサガが、救いでもあり疎ましくもあったあの頃。サガのおこぼれを貰うかのような気分になり、渡された半分を払い捨てた事もある。
(サガもオレと同じ歳の子供にすぎなかったのにな)
兄にある意味、甘えていたのかもしれないと今なら思う。
大人になった今なら、サガの好意を素直に受け止める事が出来る。それに、他の奴がサガにくれたものだとしても、サガからオレに分けた時点で、それはサガからの贈り物だ。
「ただいま」
そう言って双児宮の居住区へ足を踏み入れたオレは、テーブルの上にある物体に目を丸くした。
そこにあったのは結婚式の二次会に出てくるような、15人分は確実にある長方形巨大ケーキ。
「待っていたぞカノン。二人で半分こしよう」
皿を既に用意しているサガが、フォークを片手に待ちきれぬといった風情でニコニコしている。
「ちょ、待て!お前、ケーキは1個だと…!」
「見てのとおり1個だぞ。星矢がお前と私の二人にプレゼントしてくれたのだ」
「食いきれるかー!!!甘党のお前と一緒にするな!」
現実はオレの予想を大きく外れてのしかかってくる。
「食べ切れなかったら、皆にお裾分けすればいい。私は一人で食べきれる自信があるが」
「何者だよお前…」
昔、サガ一人が貰ったケーキは、オレとサガの二人で分けることが出来た。
それは半分が二倍になった二人分の幸せ。
そういう二人だけの世界も悪くないが、仲間がいる今、サガとオレの二人で貰ったケーキは、同じ半分でも、皆にまでお裾分けをすることが出来る。
半分が何倍にもなる幸せがどうにも照れくさく、つい乱暴な口を利いてしまうオレを、サガは軽く受け流して楽しそうにケーキを切り分けていく。
前言撤回、オレはまだまだ子供だと思いつつ、早速サガの取り分けたケーキをパクついたのだった。
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