星矢関連二次創作サイト「アクマイザー」のMEMO&御礼用ブログ
なんかメモから発掘。ヒュプノス+黒サガという謎場面。
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「まったく、無茶をする」
呆れの色を隠さずに、ヒュプノスは呟いた。かざした手の下では、破損したサガの肉体が神の小宇宙により復元していく。頭部はまっさきに再生させたので、聴覚を通じて音声での言葉も届いているはずだ。
寝台に広がる豊かな黒髪は、先程まで焼きこげていた。いや、髪だけでなく、身体自体ほとんど消し炭と言ってよかった。タナトスの渾身の一撃を受けたのだから当然だろう。その消し炭へヒュプノスが神力を注いで、ようやく元の形状へ復元させたのだ。ヒュプノスの手の下で、紅のまなこがパチリと瞬く。
『さすがに大したものだな、神の力というものは』
発声器官はまだ回復していないのか、小宇宙でサガが応える。とても完膚無きまでに負けた側の台詞とは思えない。これは懲りていなさそうだとヒュプノスはため息をついた。
「人間ごときが、タナトスに手加減なしの訓練を挑むなど、思い上がりも甚だしい」
『しかし、ペガサスには倒されたそうではないか』
「あれはアテナの血を受けた神聖衣を纏っていた。お前の黄金聖衣では紙きれほどの防御にもならぬ」
そうだ、あとで黄金聖衣の欠片も拾い集めてこなければと、ヒュプノスは頭を抱える。サガの肉体はこうして復元できても、タナトスの一撃により粉々になった黄金聖衣のほうは、サガの血か、それこそアテナの血でもなければ修復出来ぬだろう。同じ神である自分たちが血を提供すれば直るのかもしれないが、そこまでしてやるつもりはなかった。
『タナトスに勝てぬようでは、ほかの神々を下すことなど、夢のまた夢であろう』
「慎めサガ。神を侮辱することは許さぬ。それに、タナトスはあれで戦闘力が高い。上回る力の持ち主となると、十二神クラスだ。それは戦ったお前がよく理解していよう」
寝台の上で、黒髪のサガがゆっくりと身体を起こした。まだ相当に身体は痛むはずだというのに、それをおくびにも出さぬ精神力だけは認めてもいいと思う。
サガはそのまま寝台をおりて、1度ヒュプノスの前へと膝をついた。感謝のつもりなのか、礼の形式だけはとるらしい。しかし殊勝であったのはそこまでで、立ち上がったサガは乱暴に寝台へと腰を下ろした。神を目の前にしながら、なんのてらいも畏れもない仕草は、何も知らぬ者が見たならば頭が弱いのかとも思うだろう。
血を固めたような瞳が、爛々と楽しそうにヒュプノスを見上げる。
「技は見切ることができた。次は負けぬ」
「”1度見たものは通じぬ”か?お前たち聖闘士のその能力、神に対しても通用させるのは、お前を含め数名くらいであろうよ…だが、見切っただけで役に立たなかったではないか」
「ああ、こちらの実力の底上げが更に必要のようだ」
タナトスの放つテリブルプロビデンスを受けた黒サガは、2度目の攻撃を無効化させることに成功した。しかし、それを見たタナトスは本気となってサガを叩きのめした。技を使わず、ただ単に純粋な力でもって。
圧倒的な神力は人間のおよぶところではない。ゾウがアリを踏みつけるのに、技など使う必要がない。その結果、サガの肉体はほとんど吹き飛び、聖域と友好条約を結んでいる現状としては、ヒュプノスがサガを回復してやるしかなかったというわけであった(タナトスは死の神であるため、回復処置が苦手だ)。
ヒュプノスは肩を竦めた。こちらのサガは、もう一人のサガとは全く違っていた。傲慢な野心を隠さず、他人を信じず、それでいて子供のようにみえるところがあった。
「サガよ、お前は神になりたいのか、強くなりたいのかどちらだ」
そう尋ねると、紅の瞳が大きく見開いてから細められる。他の者にはなかなか見せぬであろうこのような顔を目に前にすると、多少は手懐けることができているのだろうかと思う。
「ペガサスは人のまま神を倒した。それでも、人として強くなるのではなく、あくまで神になることを望むか、サガよ」
再度問うと、黒髪のサガは『強くなり神となる』と答えたので、やはり子供なのだなとヒュプノスは思った。
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白サガがタナトスに魅了されていて、黒サガがヒュプノスに懐いているといいなという、ご都合妄想に溢れたマイ設定に沿ったものと思われます(`・ω・´)
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「まったく、無茶をする」
呆れの色を隠さずに、ヒュプノスは呟いた。かざした手の下では、破損したサガの肉体が神の小宇宙により復元していく。頭部はまっさきに再生させたので、聴覚を通じて音声での言葉も届いているはずだ。
寝台に広がる豊かな黒髪は、先程まで焼きこげていた。いや、髪だけでなく、身体自体ほとんど消し炭と言ってよかった。タナトスの渾身の一撃を受けたのだから当然だろう。その消し炭へヒュプノスが神力を注いで、ようやく元の形状へ復元させたのだ。ヒュプノスの手の下で、紅のまなこがパチリと瞬く。
『さすがに大したものだな、神の力というものは』
発声器官はまだ回復していないのか、小宇宙でサガが応える。とても完膚無きまでに負けた側の台詞とは思えない。これは懲りていなさそうだとヒュプノスはため息をついた。
「人間ごときが、タナトスに手加減なしの訓練を挑むなど、思い上がりも甚だしい」
『しかし、ペガサスには倒されたそうではないか』
「あれはアテナの血を受けた神聖衣を纏っていた。お前の黄金聖衣では紙きれほどの防御にもならぬ」
そうだ、あとで黄金聖衣の欠片も拾い集めてこなければと、ヒュプノスは頭を抱える。サガの肉体はこうして復元できても、タナトスの一撃により粉々になった黄金聖衣のほうは、サガの血か、それこそアテナの血でもなければ修復出来ぬだろう。同じ神である自分たちが血を提供すれば直るのかもしれないが、そこまでしてやるつもりはなかった。
『タナトスに勝てぬようでは、ほかの神々を下すことなど、夢のまた夢であろう』
「慎めサガ。神を侮辱することは許さぬ。それに、タナトスはあれで戦闘力が高い。上回る力の持ち主となると、十二神クラスだ。それは戦ったお前がよく理解していよう」
寝台の上で、黒髪のサガがゆっくりと身体を起こした。まだ相当に身体は痛むはずだというのに、それをおくびにも出さぬ精神力だけは認めてもいいと思う。
サガはそのまま寝台をおりて、1度ヒュプノスの前へと膝をついた。感謝のつもりなのか、礼の形式だけはとるらしい。しかし殊勝であったのはそこまでで、立ち上がったサガは乱暴に寝台へと腰を下ろした。神を目の前にしながら、なんのてらいも畏れもない仕草は、何も知らぬ者が見たならば頭が弱いのかとも思うだろう。
血を固めたような瞳が、爛々と楽しそうにヒュプノスを見上げる。
「技は見切ることができた。次は負けぬ」
「”1度見たものは通じぬ”か?お前たち聖闘士のその能力、神に対しても通用させるのは、お前を含め数名くらいであろうよ…だが、見切っただけで役に立たなかったではないか」
「ああ、こちらの実力の底上げが更に必要のようだ」
タナトスの放つテリブルプロビデンスを受けた黒サガは、2度目の攻撃を無効化させることに成功した。しかし、それを見たタナトスは本気となってサガを叩きのめした。技を使わず、ただ単に純粋な力でもって。
圧倒的な神力は人間のおよぶところではない。ゾウがアリを踏みつけるのに、技など使う必要がない。その結果、サガの肉体はほとんど吹き飛び、聖域と友好条約を結んでいる現状としては、ヒュプノスがサガを回復してやるしかなかったというわけであった(タナトスは死の神であるため、回復処置が苦手だ)。
ヒュプノスは肩を竦めた。こちらのサガは、もう一人のサガとは全く違っていた。傲慢な野心を隠さず、他人を信じず、それでいて子供のようにみえるところがあった。
「サガよ、お前は神になりたいのか、強くなりたいのかどちらだ」
そう尋ねると、紅の瞳が大きく見開いてから細められる。他の者にはなかなか見せぬであろうこのような顔を目に前にすると、多少は手懐けることができているのだろうかと思う。
「ペガサスは人のまま神を倒した。それでも、人として強くなるのではなく、あくまで神になることを望むか、サガよ」
再度問うと、黒髪のサガは『強くなり神となる』と答えたので、やはり子供なのだなとヒュプノスは思った。
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白サガがタナトスに魅了されていて、黒サガがヒュプノスに懐いているといいなという、ご都合妄想に溢れたマイ設定に沿ったものと思われます(`・ω・´)
「お前は意外と出不精だよな」
カノンが見下ろした先には、ソファーへ仰向けに寝転がり、科学雑誌に目を通している黒サガがいた。
黒サガは、なんだという目で睨み返してくる。
「なにか問題か?」
「いや、せっかくの休みなのだからたまにはどこかへ出かけてはどうだ」
ただでさえ13年間、教皇宮に引きこもっていたのだ。村へ慰問に出かけるのも光を司る方のサガであり、こちらのサガは直接外部へ出たことなどほとんど無いはずだ。
「どこで休暇を取ろうと、わたしの勝手だ」
しかしサガはそう答えると、また雑誌に目を戻してしまった。
「そんな本なんて、いつでも読めるだろう」
口にしてから、まるで昔のサガのような物言いをしているとカノンは思った。13年以上のむかし、双児宮でごろごろしているときなどによく言われたもので、しかもそれに対して『何をしようがオレの勝手だ、好きなようにさせろ』などと思っていたはずなのだが、立場が変わるとあの頃のサガの気持ちがよくわかる。
多分あの頃のサガは、自分が宮に居るときくらい、顔を隠すことなく自由に外で楽しんでくればいいという気持ちでそう言ってくれていたに違いない。
相手の立場になってみないと、類推は出来ても実際に理解はできないものなのだなあなどと今更ながら思っていると、目の前のサガが雑誌を投げつけてきた。
「わたしがこの宮に居ては邪魔ということか?」
宙を飛んできた雑誌をパシリと受け取り、ああ、この反応にも覚えがあるとカノンは顔を抑えた。サガが自分を外へ出そうとするのは、自分の存在が邪魔だからではないかとヤサグレたこともしばしばあった。
屈みこんでソファーのサガと視線の高さを合わせる。
「そんな風に思ったことは1度もないぞ、サガ。ただ、こんなに天気が良い休日だというのに、家に篭る気なのかと思ってな。お前がインドア派というのであれば、邪魔をする気はないが」
するとサガは呆れたように言い放った。
「わたしは望めばどこへでも一瞬で行くことができる。異次元であろうとだ。いつでも出来る外出よりも、誰かと同じ時間を過ごすことのほうが貴重ではないのか」
「まあ、そりゃそうだが…え?」
カノンは目を丸くする。いまのは、まるでサガが自分と一緒に過ごすために家にいると言ったかのようではないか。
「言ったかのよう、ではなく、まさにそう言ったのだ」
サガが勝手に思考を読んでダメ押しをしてくる。カノンは口をぱくぱくとさせた。
そうだ、かつて自分がサガに外出を勧められたとき反発したのも、サガと一緒に過ごしたいという気持ちを理解してもらえなかったことへの怒りではなかったか。
「え、じゃあオレと過ごすために家にいるわけか?」
「くどい」
サガはカノンの手から雑誌を取り上げ、またそれを開こうとしている。
カノンは再びその雑誌を取り上げ返した。
「なあサガ、それならオレと一緒に出かけよう。それなら一緒に過ごせて、かつ外出ができるだろ」
今度はサガが目を丸くしている。
「そうだ、この雑誌の表紙になってるウユニ塩湖とかどうだ?いま流行りだぞ」
「流行に興味はないが…お前が行きたいのなら」
肩に流れる黒髪をはらいながらサガが立ち上がる。もしかしたら白い方のサガよりもこちらの兄のほうが扱いやすいのかもしれないとカノンは思う。
「聞こえているぞ」
また勝手に思考を読んだサガが、眉間に皺をつくっているが、ここで怒っていいのは勝手に思考を読まれている自分の方だと、カノンはサガの頬をつねった。
黒のサガは押し黙りながら、共に異次元移動するため手をさし出す。
カノンも静かにその手へ自分の手を重ねた。
カノンが見下ろした先には、ソファーへ仰向けに寝転がり、科学雑誌に目を通している黒サガがいた。
黒サガは、なんだという目で睨み返してくる。
「なにか問題か?」
「いや、せっかくの休みなのだからたまにはどこかへ出かけてはどうだ」
ただでさえ13年間、教皇宮に引きこもっていたのだ。村へ慰問に出かけるのも光を司る方のサガであり、こちらのサガは直接外部へ出たことなどほとんど無いはずだ。
「どこで休暇を取ろうと、わたしの勝手だ」
しかしサガはそう答えると、また雑誌に目を戻してしまった。
「そんな本なんて、いつでも読めるだろう」
口にしてから、まるで昔のサガのような物言いをしているとカノンは思った。13年以上のむかし、双児宮でごろごろしているときなどによく言われたもので、しかもそれに対して『何をしようがオレの勝手だ、好きなようにさせろ』などと思っていたはずなのだが、立場が変わるとあの頃のサガの気持ちがよくわかる。
多分あの頃のサガは、自分が宮に居るときくらい、顔を隠すことなく自由に外で楽しんでくればいいという気持ちでそう言ってくれていたに違いない。
相手の立場になってみないと、類推は出来ても実際に理解はできないものなのだなあなどと今更ながら思っていると、目の前のサガが雑誌を投げつけてきた。
「わたしがこの宮に居ては邪魔ということか?」
宙を飛んできた雑誌をパシリと受け取り、ああ、この反応にも覚えがあるとカノンは顔を抑えた。サガが自分を外へ出そうとするのは、自分の存在が邪魔だからではないかとヤサグレたこともしばしばあった。
屈みこんでソファーのサガと視線の高さを合わせる。
「そんな風に思ったことは1度もないぞ、サガ。ただ、こんなに天気が良い休日だというのに、家に篭る気なのかと思ってな。お前がインドア派というのであれば、邪魔をする気はないが」
するとサガは呆れたように言い放った。
「わたしは望めばどこへでも一瞬で行くことができる。異次元であろうとだ。いつでも出来る外出よりも、誰かと同じ時間を過ごすことのほうが貴重ではないのか」
「まあ、そりゃそうだが…え?」
カノンは目を丸くする。いまのは、まるでサガが自分と一緒に過ごすために家にいると言ったかのようではないか。
「言ったかのよう、ではなく、まさにそう言ったのだ」
サガが勝手に思考を読んでダメ押しをしてくる。カノンは口をぱくぱくとさせた。
そうだ、かつて自分がサガに外出を勧められたとき反発したのも、サガと一緒に過ごしたいという気持ちを理解してもらえなかったことへの怒りではなかったか。
「え、じゃあオレと過ごすために家にいるわけか?」
「くどい」
サガはカノンの手から雑誌を取り上げ、またそれを開こうとしている。
カノンは再びその雑誌を取り上げ返した。
「なあサガ、それならオレと一緒に出かけよう。それなら一緒に過ごせて、かつ外出ができるだろ」
今度はサガが目を丸くしている。
「そうだ、この雑誌の表紙になってるウユニ塩湖とかどうだ?いま流行りだぞ」
「流行に興味はないが…お前が行きたいのなら」
肩に流れる黒髪をはらいながらサガが立ち上がる。もしかしたら白い方のサガよりもこちらの兄のほうが扱いやすいのかもしれないとカノンは思う。
「聞こえているぞ」
また勝手に思考を読んだサガが、眉間に皺をつくっているが、ここで怒っていいのは勝手に思考を読まれている自分の方だと、カノンはサガの頬をつねった。
黒のサガは押し黙りながら、共に異次元移動するため手をさし出す。
カノンも静かにその手へ自分の手を重ねた。
いつものLC双子と無印双子クロスオーバー
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アスプロスが本を読んでいる。
デフテロスはイヤホンを耳に音楽を聞いている。
それ自体は普通の光景だ。時空を超えて今世の双児宮へ紛れ込んだ二人は、今ではすっかり現代文明に馴染み、聖域暮らしの人間よりもよほど現代社会的な暮らしをしている。
普通でなくみえるのは、アスプロスがデフテロスを背もたれ代わりにしているからだ。
壁際に座っていたデフテロスの足の間に入り込み、デフテロスの胸へ背中を預けて寄りかかると、まるで当たり前のように本をめくり始める。デフテロスも当たり前のように兄の身体を抱え込み、音楽に没頭している。
一部始終を見ていたカノンは、物凄く突っ込みたかったのだが、どう突っ込んだらいいのか考えているうちにタイミングを逃していた。
そこへサガがやってきた。
サガは過去の双子座の様子をみると、首をかしげて声をかけた。
「暑くないのか?」
よし、とカノンは心の中で頷いた。まずは無難なツッコミだ。
デフテロスは黙ったままサガの方を見る。音楽を聞きながらも、サガの問いは理解したようだ。どういう聴力だ。しかしこちらの無口な弟は答える気がないらしく、返事をしたのは本から顔を上げもせぬ兄の方だった。
「カノン島に比べれば、聖域は避暑地のようなものだ」
「そうかもしれないが、何故ソファーに座らずに、そのような場所へ?」
「ソファーよりも、居心地が良いからだ」
「そうなのか?」
サガの空気の読めなさはともかく、的確なツッコミだとカノンが端で頷いている。
するとアスプロスは立ち上がってカノンを手招きした。一体何だと近づくと、強引に座らせられ、それだけでなく、今までデフテロスにしていたように、足の間に割り込まれる。
アスプロスの長髪はサガのものよりさらりとした直毛だが、それが目前に広がり、胸へと後頭部が押し付けられた。
(何だこの図は)
唖然としたカノンだが、すぐにサガとデフテロスの鋭い眼光に睨まれて我に返る。
そんななか、アスプロスだけが涼しい顔でサガへ告げた。
「お前の弟は寄りかかり心地が今ひとつだな…」
サガが明らかにムッとした。サガは他人の挑発に乗るタイプではないのだが、アスプロス相手には勝手が違うのか、わかりやすい反応をすることが多い。
「それならお前は心地の良いデフテロスのほうに戻ればよかろう。わたしの弟から離れろ」
アスプロスをカノンの足の間から追い立て、代わりにサガがその場所へ入ってくる。
そして、さきほどアスプロスがデフテロスにしていたように、カノンに寄りかかる。
(だから何だこの図)
ふわりとサガの髪の香が鼻腔をくすぐり、状況についていけず固まったカノンだ。サガの見当違いな弟擁護がカノンの耳に入ってくる。
「居心地は悪くないではないか。お前の趣味の問題だ」
「そうか?それこそ貴様の趣味の問題であろう、サガ」
小馬鹿にしたようなアスプロスの目が、ちらりとカノンを見た。視線が交錯すると、カノンにしか気づかれない小宇宙通信で囁かれる。
『感謝してもらおうか』
この状況の何を感謝すべきなのかさっぱり分からぬカノンであったが、とりあえず自分の腕の中に収まっているサガを抱きしめて落ち着かせることに専念する。
いつの間にか暑さのことなど忘れていたので、これは確かに暑さ対策にはなるのだなと思いながら。
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うう、推敲の時間など勿論ない!
今日もパチパチありがとうございます!出勤前の癒しです!コメントご返信とメール返信は夜にさせて下さいね(>▽<)
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アスプロスが本を読んでいる。
デフテロスはイヤホンを耳に音楽を聞いている。
それ自体は普通の光景だ。時空を超えて今世の双児宮へ紛れ込んだ二人は、今ではすっかり現代文明に馴染み、聖域暮らしの人間よりもよほど現代社会的な暮らしをしている。
普通でなくみえるのは、アスプロスがデフテロスを背もたれ代わりにしているからだ。
壁際に座っていたデフテロスの足の間に入り込み、デフテロスの胸へ背中を預けて寄りかかると、まるで当たり前のように本をめくり始める。デフテロスも当たり前のように兄の身体を抱え込み、音楽に没頭している。
一部始終を見ていたカノンは、物凄く突っ込みたかったのだが、どう突っ込んだらいいのか考えているうちにタイミングを逃していた。
そこへサガがやってきた。
サガは過去の双子座の様子をみると、首をかしげて声をかけた。
「暑くないのか?」
よし、とカノンは心の中で頷いた。まずは無難なツッコミだ。
デフテロスは黙ったままサガの方を見る。音楽を聞きながらも、サガの問いは理解したようだ。どういう聴力だ。しかしこちらの無口な弟は答える気がないらしく、返事をしたのは本から顔を上げもせぬ兄の方だった。
「カノン島に比べれば、聖域は避暑地のようなものだ」
「そうかもしれないが、何故ソファーに座らずに、そのような場所へ?」
「ソファーよりも、居心地が良いからだ」
「そうなのか?」
サガの空気の読めなさはともかく、的確なツッコミだとカノンが端で頷いている。
するとアスプロスは立ち上がってカノンを手招きした。一体何だと近づくと、強引に座らせられ、それだけでなく、今までデフテロスにしていたように、足の間に割り込まれる。
アスプロスの長髪はサガのものよりさらりとした直毛だが、それが目前に広がり、胸へと後頭部が押し付けられた。
(何だこの図は)
唖然としたカノンだが、すぐにサガとデフテロスの鋭い眼光に睨まれて我に返る。
そんななか、アスプロスだけが涼しい顔でサガへ告げた。
「お前の弟は寄りかかり心地が今ひとつだな…」
サガが明らかにムッとした。サガは他人の挑発に乗るタイプではないのだが、アスプロス相手には勝手が違うのか、わかりやすい反応をすることが多い。
「それならお前は心地の良いデフテロスのほうに戻ればよかろう。わたしの弟から離れろ」
アスプロスをカノンの足の間から追い立て、代わりにサガがその場所へ入ってくる。
そして、さきほどアスプロスがデフテロスにしていたように、カノンに寄りかかる。
(だから何だこの図)
ふわりとサガの髪の香が鼻腔をくすぐり、状況についていけず固まったカノンだ。サガの見当違いな弟擁護がカノンの耳に入ってくる。
「居心地は悪くないではないか。お前の趣味の問題だ」
「そうか?それこそ貴様の趣味の問題であろう、サガ」
小馬鹿にしたようなアスプロスの目が、ちらりとカノンを見た。視線が交錯すると、カノンにしか気づかれない小宇宙通信で囁かれる。
『感謝してもらおうか』
この状況の何を感謝すべきなのかさっぱり分からぬカノンであったが、とりあえず自分の腕の中に収まっているサガを抱きしめて落ち着かせることに専念する。
いつの間にか暑さのことなど忘れていたので、これは確かに暑さ対策にはなるのだなと思いながら。
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うう、推敲の時間など勿論ない!
今日もパチパチありがとうございます!出勤前の癒しです!コメントご返信とメール返信は夜にさせて下さいね(>▽<)
いつの間にか8月だったΣ(゜◇゜)!
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カンカン照りの太陽の下、シュラとサガの歩くアスファルトの道路には、熱気でゆらりと陽炎が立ち上っていた。
戦闘時であればどのような劣悪な環境でも意に介さぬ彼らだが、平時にまで無意味な我慢を自分に強いる趣味は無い。特にいまのサガは黒髪である。こちらのサガは自己の欲求に忠実だ。
しかし、彼らはそろって内面の表現が不得手な挙句、同行者が涼しい顔をしている(ように互いには見えている)ので、
『さすがサガ、この暑さで汗一つかいていない』
『フッ、この暑さでもシュラは普段と変わらぬな…わたしが見込んだだけのことはある』
などと心のなかで相手を賞賛しつつ、痩せ我慢的に自分も平気な顔をするという、負のループに陥っているのであった。
負のループであるはずなのに、何故か彼らは上機嫌である。
一方拠点では、デスマスクとアフロディーテが空調の効いた部屋の中で、苦笑しつつ彼らを待っていた。
「この暑さのなかを歩こうだなんて、私には理解できないな」
「俺にも理解できねえよ。テレポートすれば一瞬だっていうのによ」
「…多少、妬ける」
「まあな。効率や快適さよりも、無意識に二人での道行きを選んだってことだからなあ」
暑さに茹だって到着するであろう二人のために、デスマスクは何本かのフルーツビールとスパークリングワインを冷蔵庫の中へ突っ込み、アフロディーテは頬をふくらませながらソファーへ寝転んだ。
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カンカン照りの太陽の下、シュラとサガの歩くアスファルトの道路には、熱気でゆらりと陽炎が立ち上っていた。
戦闘時であればどのような劣悪な環境でも意に介さぬ彼らだが、平時にまで無意味な我慢を自分に強いる趣味は無い。特にいまのサガは黒髪である。こちらのサガは自己の欲求に忠実だ。
しかし、彼らはそろって内面の表現が不得手な挙句、同行者が涼しい顔をしている(ように互いには見えている)ので、
『さすがサガ、この暑さで汗一つかいていない』
『フッ、この暑さでもシュラは普段と変わらぬな…わたしが見込んだだけのことはある』
などと心のなかで相手を賞賛しつつ、痩せ我慢的に自分も平気な顔をするという、負のループに陥っているのであった。
負のループであるはずなのに、何故か彼らは上機嫌である。
一方拠点では、デスマスクとアフロディーテが空調の効いた部屋の中で、苦笑しつつ彼らを待っていた。
「この暑さのなかを歩こうだなんて、私には理解できないな」
「俺にも理解できねえよ。テレポートすれば一瞬だっていうのによ」
「…多少、妬ける」
「まあな。効率や快適さよりも、無意識に二人での道行きを選んだってことだからなあ」
暑さに茹だって到着するであろう二人のために、デスマスクは何本かのフルーツビールとスパークリングワインを冷蔵庫の中へ突っ込み、アフロディーテは頬をふくらませながらソファーへ寝転んだ。
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自分の意志の弱さに泣けてきます(;ω;)
仕事から帰ってきたあとの夜の眠気に全然勝てない。
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久しぶりに双児宮へ立ち寄ったアイオロスは、窓辺にフォトフレームが置かれていることに気づき、何気なくそれを覗いた。
1枚は思ったとおり、サガとカノンの写真だ。片方の存在を秘していた過去を思えば、こうして二人で記録媒体に写るというのも、平和の象徴だろう。
微笑ましく思いながら隣の写真へ目を写し、視線が止まる。
そちらはサガと星矢の写真であった。
場所はどこか判らないが、背景に海が写っている。ピースサインをしながら笑っている星矢は、これだけ見ると聖戦の立役者とはとても思えない。その後ろのほうで、ビニールシートに座ったサガが穏やかな笑顔をこちらへ向けている。いや、よく見るとサガの横にはカノンもいて、水筒片手に飲み物を用意しようとしているところであった。ということは、カメラを向けているのは瞬か。少し前に四人で海で行ったと聞いている。案の定、日付は最近のものだ。
何故自分はこの写真を、サガと星矢のものだと思ったのだろう。
ふいに昔を思い出す。
サガを強引に誘い、アイオリアを連れて出かけた幼い頃の行楽。
自分には大切な思い出であったけれども、サガにとっては、カノンのいない空間であったのだ。
記憶のなかのサガはやはり微笑んでいたけれども、今ならわかる。この写真の笑顔と、あの頃の笑顔は決定的に違う。
胸の痛みに、ぐっと拳を握る。この痛みは後悔なのか。
(この空間に入ることを許されたかったよ、サガ)
=============================
そして唐突にまたサガ語り(>▽<)
「私が見た教皇は正義」
このシャカの台詞をみても、サガの本質は正義だと思うのです。シャカはなまじ本質が見えてしまうために、黒サガの悪が見えなかった(もしくは多少気づいていても、本質が善であるのなら見守ろうとした)のかなあと。
原作のシャカは(心の)弱者への慈悲はないと言っているので、そういう意味でもサガの精神が弱いってことはあまりないと思うんですね。
御大もサガとアイオロスを「両雄」と表現しています。御大漫画における英雄という位置づけを考えても、サガは偽善者とか、そういう感じではないと思うのです。単純にサガの二つの人格である悪(欲望)と善(正義)がどっちも強すぎてぶつかってしまう。それであんな感じの困ったひとになってるのかなと。
善と悪どちらも持つのが人間の性(サガ)。サガの名前の由来です。
善悪両方を持ち、悪に流されながらも、それでも最後まで悪に負けきることなく光を持ち続ける人間の象徴がサガなんじゃないかなと勝手に思っています。だからサガが大好きなんだー!(>▽<)
仕事から帰ってきたあとの夜の眠気に全然勝てない。
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久しぶりに双児宮へ立ち寄ったアイオロスは、窓辺にフォトフレームが置かれていることに気づき、何気なくそれを覗いた。
1枚は思ったとおり、サガとカノンの写真だ。片方の存在を秘していた過去を思えば、こうして二人で記録媒体に写るというのも、平和の象徴だろう。
微笑ましく思いながら隣の写真へ目を写し、視線が止まる。
そちらはサガと星矢の写真であった。
場所はどこか判らないが、背景に海が写っている。ピースサインをしながら笑っている星矢は、これだけ見ると聖戦の立役者とはとても思えない。その後ろのほうで、ビニールシートに座ったサガが穏やかな笑顔をこちらへ向けている。いや、よく見るとサガの横にはカノンもいて、水筒片手に飲み物を用意しようとしているところであった。ということは、カメラを向けているのは瞬か。少し前に四人で海で行ったと聞いている。案の定、日付は最近のものだ。
何故自分はこの写真を、サガと星矢のものだと思ったのだろう。
ふいに昔を思い出す。
サガを強引に誘い、アイオリアを連れて出かけた幼い頃の行楽。
自分には大切な思い出であったけれども、サガにとっては、カノンのいない空間であったのだ。
記憶のなかのサガはやはり微笑んでいたけれども、今ならわかる。この写真の笑顔と、あの頃の笑顔は決定的に違う。
胸の痛みに、ぐっと拳を握る。この痛みは後悔なのか。
(この空間に入ることを許されたかったよ、サガ)
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そして唐突にまたサガ語り(>▽<)
「私が見た教皇は正義」
このシャカの台詞をみても、サガの本質は正義だと思うのです。シャカはなまじ本質が見えてしまうために、黒サガの悪が見えなかった(もしくは多少気づいていても、本質が善であるのなら見守ろうとした)のかなあと。
原作のシャカは(心の)弱者への慈悲はないと言っているので、そういう意味でもサガの精神が弱いってことはあまりないと思うんですね。
御大もサガとアイオロスを「両雄」と表現しています。御大漫画における英雄という位置づけを考えても、サガは偽善者とか、そういう感じではないと思うのです。単純にサガの二つの人格である悪(欲望)と善(正義)がどっちも強すぎてぶつかってしまう。それであんな感じの困ったひとになってるのかなと。
善と悪どちらも持つのが人間の性(サガ)。サガの名前の由来です。
善悪両方を持ち、悪に流されながらも、それでも最後まで悪に負けきることなく光を持ち続ける人間の象徴がサガなんじゃないかなと勝手に思っています。だからサガが大好きなんだー!(>▽<)