星矢関連二次創作サイト「アクマイザー」のMEMO&御礼用ブログ
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「サガはどんどんきれいになっていくなあ」

久しぶりにサガの住まいを訪れた星矢が、会うなり発した第一声がこれだ。
エリシオンで暮らすようになってからのサガは、地上に居たころの張りつめた気配が消え、どこか人ではないような、ますます世俗離れした雰囲気になっている。天界人や精霊であると説明されたら、信じる者も多そうだ。

そのようなわけで、星矢からすると褒めたというよりも、思ったままを伝えたに過ぎないが、さすがにサガが苦笑した。
「それは、わたしが女のようだと言うことかな」
「い、いや、そんなことないって!ええと、そういうんじゃなくて、エリシオン暮らしはサガの肌にあってるのかなって。地上にいたころより笑顔をよく見るし」
あわてて星矢は訂正をする。
星矢は粗忽者のようで聡い少年だ。今の自分の言葉が、男ながらタナトスの嫁となったサガへの嘲笑と捉えられてもおかしくないことに、すぐ気付いたのだ。
「確かに、ここでの暮らしは楽だし、悩みがないよ」
「あとさ、人は愛されるときれいになるって言うから、それもあるんじゃないか」
「わたしが、誰に?」
「タナトスと結婚しているんだから、タナトスだろ」
「……」
「サガが幸せそうで良かった。アイオロスもサガの幸せを祈っていると言ってたし。そうだ、アイオロスがとうとう教皇になるんだ。そろそろ就任式の準備に入るって」

しかし、そう言った途端にサガの瞳が見開かれ、ほろほろと涙が溢れ出てきたのだった。ただでさえ大人の泣き顔はインパクトがあるのに、サガの涙はいつでも突然なのである。
それはサガ自身にも驚きであったようで、戸惑いながら法衣の袖で涙を拭いている。

「すまぬ、彼の就任が嬉しくて、涙腺が緩んだようだ」
「…サガ」

そのことばが本心でないことも、星矢はサガより先に気づいた。プライドの高い彼が、自覚のない感情の発露を他人の前でみせたことに、おそらく相当の羞恥心を覚えていることも。
少しだけ逡巡してから、そっとサガの髪に手を触れる。

「アイオロスだけじゃない。みんなサガの幸せを願ってる。だけどその願いは、サガへのさよならの言葉じゃない。突き放したからじゃないんだ」

身を切り刻む刃としてしか、他人の想いを受け取れなくなってしまっているサガを、どうやったら癒せるのだろうか。そう思いながら、星矢はサガの頭を静かに撫でた。

「デスマスクよ、Ω理論によれば、集めた小宇宙の人数が多いほど、その力が究極に近づくらしいのだ」
「そうらしいな」
黒髪のサガが興奮気味に話しかけてきたので、デスマスクは適当に相槌をうった。
「つまり、わたしの中の皆と小宇宙を合わせれば、力が増幅されて…なんだ、その目は」
「いやその、アンタのなかの連中は、皆っつうか全員サガだから、何人いても一人だろ。そもそもアンタたち、協力しあえんのか?」
「……」
サガは多重人格者だ。白サガ・黒サガ・統合サガなどと呼ばれる人格がいるものの、それぞれ友好的とは微妙に言いにくい。

「そうか…必要なだけ人格を増やしてみようかとも考えたのだか」
「出来るのかそんなこと。そんな無理をしなくたって、今のままでアンタ充分強いんだから良いじゃねえか」
「…強くなどない」

こちらのサガが、己の弱さを認めるかのような発言をしたことに、デスマスクは心底驚いた。

「何かあったのか?」
「わたしは星矢のようにタナトスを倒せる力はない。そのような弱い自分でいることに我慢がならんのだ。改めて神に負けぬほどの…いや、神になることを目指して研鑽しようかと思ってな」
「えっ、もしかしてとうとうタナトスに我慢出来なくなって実力行使しようと思ってるのか」

それなら止めようと考えたデスマスクである。フウフ喧嘩の被害規模が大きくなるだけであり、公平な目で見てタナトスはそれほど悪い夫には見えなかった。ニンフたちと浮気三昧であること以外には。
しかし、珍しく黒髪のサガは言い淀んだ。

「いや…タナトスも嫁が人間よりは神であるほうが外聞も良かろう」
「アンタ、熱でもあるんじゃないか。ちょっと測らせろ」

思わず手を伸ばしてサガの額に手を当てるデスマスクであった。平熱だ。
サガはそれを払いのけもせず唇を噛んでいる。
熱は無いが、何か相当に思いつめてはいるようだ。
こちらのサガがタナトスの嫁であることを認める発言など、天地がさかさまになるのではなかろうかとデスマスクは心の中でこぼした。

「力がなければ、わたしは何の存在価値もない。せめて居場所を寄越したタナトスと対等であれるほどには、強くあらねばな」
「何言ってんだよ、アンタらしくねえぞ」
「わたしらしいとはどういうことだ?力が足りぬゆえに、皆もわたしを必要とせんのだろう」
「……」

ああ、とデスマスクは内心で額を抑える。
昨年の同じ日に、このサガは浮気を決行すべく周囲の人間のもとをまわり、全員から断られたという経緯を持つ。それは「浮気」であるからこそ断った面子ばかりなのだが、愛情音痴のサガはそれを「己を必要とするものなどいない」という結論で受け止めたのだ。
それ以来、確かにこちらのサガは少し大人しくなったように思う。タナトスへの態度も軟化している。
とても、らしくない。

サガは口元を歪めて、無理やり笑ったかのような表情を見せる。

「神となれば、わたしを必要とする者も出るかもしれぬ」
「……本当に、アンタは馬鹿だな」

ここで『オレがいる』と言えない己も馬鹿なのだがと、デスマスクは何度目かの嘆息をついた。

綿婚式のとき、サガからプレゼントされたコットンシャツ(※しまむらブランド)は、何気にタナトスのお気に入りである。
汚れたり破けたりせぬよう神の力で補強され、100年くらいは新品同様で使えそうな勢いであった。喜ばれるとサガとしても贈った甲斐があるというものだ。

それはさておき、いつのまにかヒュプノスも、同じシャツの色違いを購入していることにサガは気が付いた。気が付いたというよりも気づかされたと言うべきか。
タナトスがそのシャツを着用しているときには、ヒュプノスも同じ恰好で新居へ訪れ、部屋をうろつくのである。
正直、あまり似合っていないので印象に強く残るのだ。
ヒュプノスとしてはペアルックになることで『タナトスの対は自分であり、サガには貸し出しているだけなので身の程をわきまえよ』という羞恥心を捨てたアピールをしているつもりなのだが、そんな深謀が恋愛音痴のサガに通じるわけはなかった。

「…というわけで、わたしとしたことが、贈り物をタナトスにだけ用意したのは思慮が足りなかったと思う。昔、おまえもわたしと同じものを欲しがっていたものな。ヒュプノスは、自分にも揃いの贈り物を用意せよと行動で示しているのだろう」

そんな打ち明け話を聞かされたカノンは、遠い目になるしかない。

「聞いているのか、カノン」
「聞いてるさ。ヒュプノスの深謀とやらも、実はタナトスの短慮行動と大差ないって話だろ」
「そんな話はしていないぞ」
「あいつらに揃いのプレゼント用意するなら、オレにもペアのもの寄越せよ」
「おまえもタナトスとペアになりたいのか?」
「おまえとだよ!」

ここまで伝えたのにまだ不思議そうな顔をしているサガを見て、カノンは盛大なため息をついた。

「タナトスよ、”月が綺麗だな”と”もう死んでも良い”のどちらが好みだ?」
サガの問いをタナトスは鼻で笑った。
「どちらも却下だ。それは日本の小説家…夏目漱石に二葉亭四迷の二番煎じであろう。どうせ”I love you”ならばお前自身の言葉で言うが良い」
思わぬ返事にサガは目を丸くする。
「さすが腐っても神…東洋の文学にも長けているのか。わたしはデスマスクからこのエピソードを教えてもらったのだが」
「腐ってもは余計だ。それでお前の答えはどうなのだ」
急かされてサガが紡いだ言葉は次のようなものであった。
「一生懸命考えたのだが、温泉への愛を語る言葉というのは、なかなか難しくてな…讃歌のようになってしまう」
「オレにではないのか」
「何故温泉でお前に愛を囁かねばならないのだ」

このあとサガが頭から湯に押し込まれたのは言うまでもない。

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温泉シーンなので御大風味の絵柄で頑張ってみたもののあまり意味はなかった
以前「サガとカノンが聖域外で暮らすようになったら、サガのほうが動作が優雅でゆったりなぶんトロく見られて、アリの巣穴をずっと眺めてたりするものだから浮世離れしてると思われてる」とかここで書いたのですが(長い)、黒サガがアリの巣見てても可愛いんじゃないかなって思いました!
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双児宮裏の家庭菜園へ、ハーブを採りに行かせたサガが帰ってこないので、様子を見に行ったら黒髪が屈みこんでいるのがみえた。
人格同士のせめぎ合いが始まったのかと思ったが、苦しんでいる様子はない。ただじっと地面を見ている。
「何やってるんだ」
「アリの巣穴がある」
「……」
そんなもん、どこにでもあるだろう。お使い途中で興味が逸れて寄り道をする子供かおまえは…と思ったが口にしないでおく。
巣穴には何匹ものアリが出たり入ったり、何かを運び込んだりしている。
「カノン、アリを排除する薬剤は、アリに巣穴のなかまで運び込ませて、中から女王アリまですべて全滅させるようになっているそうだ」
「そうなのか」
「わたしは聖域に投げ込まれた、その薬剤のようなものかもしれんな」
「サガ」
「この地上を神から守ろうと思ってきたが、それすらも神のはかりごとの内で、わたしはサガですらないのかもしれない」
黄金聖衣にはWHO ARE YOUと突き付けられ、アテナの盾で自分だけ吹き飛ばされた過去のある黒いほうは、何も考えていないようで、それなりに悩むところはあるようだ。
オレは兄の隣に屈みこんだ。
「オレだったら、アリを殲滅しようと思ったら、この巣穴に水を注ぎこむ」
「海神方式か」
「ああ。オレが本物のシードラゴンであろうとなかろうと、オレはそういうやり方を好む。おまえがサガなのかそうでないのか、それは判らんが、自分が何者かってそんなに大切か?」
「……」
「おまえが何であれ、今はサガと呼ばれていて、オレが頼んだ仕事を道草で忘れてる。それでいいだろ」
「忘れておらん。ちゃんと採った」
黒髪のサガが差し出した右手の中に、スープセロリの小さな束が収まっていたので、オレはぽんぽんとサガの頭をなでた。

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黒サガって原作だとサガじゃなくて何か外からきた因子の可能性もあるじゃないですか。黒い子が聖衣にフーアーユーって言われて動揺する場面は何度見ても可愛い。
自分はなんだろうって聖戦後もこっそり悩んでるんですけど、実は黒い子もアテナの聖闘士でしたよっていうオチでもいいですし(カノンが実は真の海龍でしたのノリで)、実はサガじゃなくて何か別の存在でしたけど、もう自分をサガだと認識してしまってるので、白サガが一緒に自分の身体に住まわせてあげてます的なオチでもいいですよね!

まあどんな黒サガでも恰好よくて可愛くて元気で美人なんですけども!
今日もぱちぱち有難うございます。毎朝の潤いです(>▽<)
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