星矢関連二次創作サイト「アクマイザー」のMEMO&御礼用ブログ
カノンもサガも本来は静かな空間が好きじゃないかなと。
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カノンがソファーで雑誌を眺めていると、隣にどっかり黒髪のサガが座ってきた。用があるのかと思って顔をあげたが、とくに話しかけてくることもなく、ただ背もたれに深くふんぞり返っている。
なので放置して雑誌に目を戻したら、隣で一瞬だけ兄の人格の入れ替わる気配があり、30秒ほどするとまた元に戻っていた。
「なんだ?いまの」
「アレもお前のとなりに座りたいと…っ、何を怒る、隠すことでもあるまいに」
返事の後半が、カノン宛でなく、もう一人のサガとの諍いになっている。
サガ同士の喧嘩はさらにどうでもいい内容へ発展していき、静かな読書空間は失われたものの、カノンはどこか機嫌よく喧騒をBGMにした。
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御大祭りのチャンピオンREDは今日発売ですよね(>ω<)
密林で予約してあるのですが、早く届かないかなー!
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カノンがソファーで雑誌を眺めていると、隣にどっかり黒髪のサガが座ってきた。用があるのかと思って顔をあげたが、とくに話しかけてくることもなく、ただ背もたれに深くふんぞり返っている。
なので放置して雑誌に目を戻したら、隣で一瞬だけ兄の人格の入れ替わる気配があり、30秒ほどするとまた元に戻っていた。
「なんだ?いまの」
「アレもお前のとなりに座りたいと…っ、何を怒る、隠すことでもあるまいに」
返事の後半が、カノン宛でなく、もう一人のサガとの諍いになっている。
サガ同士の喧嘩はさらにどうでもいい内容へ発展していき、静かな読書空間は失われたものの、カノンはどこか機嫌よく喧騒をBGMにした。
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御大祭りのチャンピオンREDは今日発売ですよね(>ω<)
密林で予約してあるのですが、早く届かないかなー!
『おはよう、サガ』
目覚めたとたん、耳元で語りかけられたような気がして、サガは思わずあたりを見回した。眠っていたとはいえ、双児宮内でこれほど近くに侵入者を許すなど、あってはならないことだ。
しかし、見回しながら、この声が外敵によるものではないことを、理解してもいた。なぜならその声はサガもよく知るアイオロスのものであったからだ。
部屋の中を見回しても、誰もいない。サガは大きなため息をついた。やはり、この声は己の内側から聞こえてきたのだ。もう一人の自分がいつもそうするように、アイオロスが自分のなかから話しかけてきている。
同じように自分のなかにいるはずのアレと喧嘩にならないのか…と思いかけ、そちらの気配は綺麗にいなくなっていることに気づき、蒼くなる。
「アイオロス、これは一体どういうことなのだ」
『あ、魂だけでも俺だと判ってもらえるのか』
「お前の小宇宙は間違えようもない」
『そうか、何だか嬉しいな』
「…アイオロス」
じわりと声にサガの声に不機嫌さがにじんだが、アイオロスは気にした様子もなくサガの中に居座っている。
『もうひとりの君と、ちょっと位置交換をしてみようという話になって』
「わたしは聞いていないぞ、そんな事!い、いや、そもそもそのようなことが可能なのか?」
わたしの許可もなく…という抗議が言外ににじんでいる。
『俺は魂だけでいた時間が長いし、彼も女神の盾で分離されて以降、けっこう単独行動が出来るみたいだよ』
「バカな、あれにお前の肉体を貸し与えたというのか。今ごろ何をされているか判らんぞ!」
慌てて起き上がり、寝台から飛び出そうとして、アイオロスに邪魔をされる。
『大丈夫だよ』
「何が大丈夫なものか。お前の名声を下げるようなことをアレが仕出かしたらどうするのだ」
『うーん、俺の身体でシュラを脅かしてみるとか言っていたから、結構平和に楽しんでいるんじゃないかな』
それはかなりシュラにとっては災難なのではないだろうかと、サガは遠い目となる。脱力しているサガの身体を、アイオロスが代わりに操作して寝台へ座らせた。
逆らうことなく腰を下ろしたサガが、また呆れたように息をついた。
「アイオロス、次からは”わたし”の許可も取ってもらいたい」
『頼めば、許可をくれるのか?』
サガのなかで、アイオロスがちょっと驚いた気配をみせる。
「理由による。それで、今回の狼藉の理由をまだ教えてもらっていないのだが」
『狼藉って…まあ、そうなるのかな。理由は一日君のそばにいたかったから』
「…は?」
サガの目が丸くなる。
『一日一緒にいて、もっと君のことを知りたいなと思ったから…だから、ちょっと身体を交換してくれないかって、もうひとりの君の時に頼んだ』
「…よくアレが承諾したものだ」
そして、アレはよくわたしに隠し通したものだとサガは内心で唇を噛む。
『誕生日のプレゼントにって言ったら、OKしてくれたよ?』
14歳の少年のような、27歳の青年のような、どちらともとれる小宇宙でアイオロスは笑っていた。
===============================
わー途中なのに出勤時間!(>ω<)
ぱちぱち下さった皆様に御礼申し上げます。仕事前のエネルギー源です!
H様夜にご返信させて下さい(^▽^)
目覚めたとたん、耳元で語りかけられたような気がして、サガは思わずあたりを見回した。眠っていたとはいえ、双児宮内でこれほど近くに侵入者を許すなど、あってはならないことだ。
しかし、見回しながら、この声が外敵によるものではないことを、理解してもいた。なぜならその声はサガもよく知るアイオロスのものであったからだ。
部屋の中を見回しても、誰もいない。サガは大きなため息をついた。やはり、この声は己の内側から聞こえてきたのだ。もう一人の自分がいつもそうするように、アイオロスが自分のなかから話しかけてきている。
同じように自分のなかにいるはずのアレと喧嘩にならないのか…と思いかけ、そちらの気配は綺麗にいなくなっていることに気づき、蒼くなる。
「アイオロス、これは一体どういうことなのだ」
『あ、魂だけでも俺だと判ってもらえるのか』
「お前の小宇宙は間違えようもない」
『そうか、何だか嬉しいな』
「…アイオロス」
じわりと声にサガの声に不機嫌さがにじんだが、アイオロスは気にした様子もなくサガの中に居座っている。
『もうひとりの君と、ちょっと位置交換をしてみようという話になって』
「わたしは聞いていないぞ、そんな事!い、いや、そもそもそのようなことが可能なのか?」
わたしの許可もなく…という抗議が言外ににじんでいる。
『俺は魂だけでいた時間が長いし、彼も女神の盾で分離されて以降、けっこう単独行動が出来るみたいだよ』
「バカな、あれにお前の肉体を貸し与えたというのか。今ごろ何をされているか判らんぞ!」
慌てて起き上がり、寝台から飛び出そうとして、アイオロスに邪魔をされる。
『大丈夫だよ』
「何が大丈夫なものか。お前の名声を下げるようなことをアレが仕出かしたらどうするのだ」
『うーん、俺の身体でシュラを脅かしてみるとか言っていたから、結構平和に楽しんでいるんじゃないかな』
それはかなりシュラにとっては災難なのではないだろうかと、サガは遠い目となる。脱力しているサガの身体を、アイオロスが代わりに操作して寝台へ座らせた。
逆らうことなく腰を下ろしたサガが、また呆れたように息をついた。
「アイオロス、次からは”わたし”の許可も取ってもらいたい」
『頼めば、許可をくれるのか?』
サガのなかで、アイオロスがちょっと驚いた気配をみせる。
「理由による。それで、今回の狼藉の理由をまだ教えてもらっていないのだが」
『狼藉って…まあ、そうなるのかな。理由は一日君のそばにいたかったから』
「…は?」
サガの目が丸くなる。
『一日一緒にいて、もっと君のことを知りたいなと思ったから…だから、ちょっと身体を交換してくれないかって、もうひとりの君の時に頼んだ』
「…よくアレが承諾したものだ」
そして、アレはよくわたしに隠し通したものだとサガは内心で唇を噛む。
『誕生日のプレゼントにって言ったら、OKしてくれたよ?』
14歳の少年のような、27歳の青年のような、どちらともとれる小宇宙でアイオロスは笑っていた。
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わー途中なのに出勤時間!(>ω<)
ぱちぱち下さった皆様に御礼申し上げます。仕事前のエネルギー源です!
H様夜にご返信させて下さい(^▽^)
昨日はいい風呂の日だったから…
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ぼんやりとした意識が固まり始め、己が人間であったことを思い出すころには、周囲の様子もだんだんに判ってきた。
薄暗い虚無がどこまでも続いている。その虚無のなかで、サガはぽつんと上体を起こして座っているのであった。身体を見下ろすと、死出の装いである。死んだときに纏わされたのであろう。
亡者としてただ苦痛を受けるだけの存在であったときと異なり、今のサガには自我がある。それゆえに、何故自分が目覚めさせられたのかは、理解していた。
「さっさと起きろ」
忌々しそうに命じる声がして、振り向くとそこには黒光りする闘衣を纏った男がいた。冥衣だ。闘気の鋭さと身のこなしからして、上位の冥闘士と思われる。随分と大きな羽を背負っている。
慎重にサガが立ち上がると、その男はついて来いと踵を返した。
「どこへ?」
端的に問うと、込められた疑念をすべて汲み取ったようで、蔑みを隠さぬ応えがあった。
「貴様らは冥界軍の先兵として蘇生を許された。ハーデス様は心優しいお方ゆえ、走狗であれ冥衣を賜るとの仰せだ。その前に、まずは身を清めさせよとの命が下されている」
不服ながら従っているという空気がありありと伝わってくる。聖闘士ごときがと視線が語っている。正規の冥闘士ではなく、聖域の人間を使役することが気に食わないのだ。そして信用もしていないのだ。
疑惑の視線を、サガは素知らぬ顔で無視した。
空間を飛んで案内された先には、泉があった。四方を荒れた岩壁で囲まれた小さな泉であったが、底からこんこんと水の湧き出でる様子が潤いを感じさせた。教皇宮の沐浴施設には遠く及ばなくとも、水に浸かることが出来るということだけで正直ありがたい。死衣装は煤ぼけて土にまみれていてる。
サガはするりと衣を脱ぎ捨て、泉へ足を浸けた。空っぽの肉体へ、しっとりと水気が滲みこんでいくようだ。ああ、とサガは思わず声を漏らす。”感覚を得る”ということ自体、死後にはなかったことだ。
監視の冥闘士のことなど気にせず、手足を禊ぎ、身体を清める。水を被り、埃まみれ髪を梳いて洗い流す。身体中が満たされたと感じたころ、気づくと冥衣が己を覆っていたのであった。
「お前は、ここを使わぬのか?」
冥闘士へ声をかけたのは、親切心からではあったが、返ってきたのは冷たい無言の視線だ。肩をすくめるも、サガとて返事を期待したわけではない。監視役の男が敵の前で裸になるわけがないのだった。
いまや同じ黒輝の冥衣を纏ったサガは、気持ちよさそうに髪を払った。
気持ち悪い。ラダマンティスは思った。
聖域へ攻め込むのに、聖闘士の亡者を使うということ自体がどうなのだ。
パンドラの命のままに亡者を血の池へ連れていくと、亡者は嬉しそうに自らその穢れへと浸かり、身体を浸している。
仮にも地獄であるので、罪人には苦痛を生むはずの血溜まりなのだが、効かぬということであればこの亡者が罪を持っていないのか、罪の自覚がないのか、もしくはハーデス様によって感覚を変えられているのか、いずれにせよまともではない。
地獄というのは精神世界だ。亡者の見る世界は、生者である自分の見えている世界とは異なるのかもしれない。しかし理解する気にもならない。
亡者のぬけるような白い肌が、血の池へ浸かるごとに赤みを増していく。まるで罪と穢れで出来た血を吸収して命を吹き込んでいるかのようだ。血でありながら乾いてこびりつくことなく、水のようにサガのなかへと滲みこんでいく。不思議なことに、濡れた髪も艶々と輝きを増しているようだ。
しかし、その美しさが気持ち悪い。これはあくまで亡者の美だ。
心の中でラダマンティスが悪態をつくと、いつの間にか冥衣姿となったサガが、こちらを見ている。
「お前は、ここを使わぬのか?」
声までも色を増している。亡者の声は、生者に毒しかもたらさないというのに。
(汚らわしい、死人が)
そう思いつつ、否定しきれない何かが彼の心に忍び込む。
その何かは、死を魅力的であるかのように思わせる汚濁だ。いや、冥界の王を主と仰ぐ冥闘士にとって、死を美しいと思うことは正しいのだろうか。
ラダマンティスはギリ…と唇を噛んで視線を逸らした。
己へ命の輝きを教える者が、目の前の男の弟であることなど、彼はまだ知る由もなかった。
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あっ、でも蘇生したサガが入る血の池地獄は別府あたりので!
アイアコスあたりと温泉旅行してほしいココロ!
何でアイアコスなのかというと、私の趣味でしかない!(>ω<)
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ぼんやりとした意識が固まり始め、己が人間であったことを思い出すころには、周囲の様子もだんだんに判ってきた。
薄暗い虚無がどこまでも続いている。その虚無のなかで、サガはぽつんと上体を起こして座っているのであった。身体を見下ろすと、死出の装いである。死んだときに纏わされたのであろう。
亡者としてただ苦痛を受けるだけの存在であったときと異なり、今のサガには自我がある。それゆえに、何故自分が目覚めさせられたのかは、理解していた。
「さっさと起きろ」
忌々しそうに命じる声がして、振り向くとそこには黒光りする闘衣を纏った男がいた。冥衣だ。闘気の鋭さと身のこなしからして、上位の冥闘士と思われる。随分と大きな羽を背負っている。
慎重にサガが立ち上がると、その男はついて来いと踵を返した。
「どこへ?」
端的に問うと、込められた疑念をすべて汲み取ったようで、蔑みを隠さぬ応えがあった。
「貴様らは冥界軍の先兵として蘇生を許された。ハーデス様は心優しいお方ゆえ、走狗であれ冥衣を賜るとの仰せだ。その前に、まずは身を清めさせよとの命が下されている」
不服ながら従っているという空気がありありと伝わってくる。聖闘士ごときがと視線が語っている。正規の冥闘士ではなく、聖域の人間を使役することが気に食わないのだ。そして信用もしていないのだ。
疑惑の視線を、サガは素知らぬ顔で無視した。
空間を飛んで案内された先には、泉があった。四方を荒れた岩壁で囲まれた小さな泉であったが、底からこんこんと水の湧き出でる様子が潤いを感じさせた。教皇宮の沐浴施設には遠く及ばなくとも、水に浸かることが出来るということだけで正直ありがたい。死衣装は煤ぼけて土にまみれていてる。
サガはするりと衣を脱ぎ捨て、泉へ足を浸けた。空っぽの肉体へ、しっとりと水気が滲みこんでいくようだ。ああ、とサガは思わず声を漏らす。”感覚を得る”ということ自体、死後にはなかったことだ。
監視の冥闘士のことなど気にせず、手足を禊ぎ、身体を清める。水を被り、埃まみれ髪を梳いて洗い流す。身体中が満たされたと感じたころ、気づくと冥衣が己を覆っていたのであった。
「お前は、ここを使わぬのか?」
冥闘士へ声をかけたのは、親切心からではあったが、返ってきたのは冷たい無言の視線だ。肩をすくめるも、サガとて返事を期待したわけではない。監視役の男が敵の前で裸になるわけがないのだった。
いまや同じ黒輝の冥衣を纏ったサガは、気持ちよさそうに髪を払った。
気持ち悪い。ラダマンティスは思った。
聖域へ攻め込むのに、聖闘士の亡者を使うということ自体がどうなのだ。
パンドラの命のままに亡者を血の池へ連れていくと、亡者は嬉しそうに自らその穢れへと浸かり、身体を浸している。
仮にも地獄であるので、罪人には苦痛を生むはずの血溜まりなのだが、効かぬということであればこの亡者が罪を持っていないのか、罪の自覚がないのか、もしくはハーデス様によって感覚を変えられているのか、いずれにせよまともではない。
地獄というのは精神世界だ。亡者の見る世界は、生者である自分の見えている世界とは異なるのかもしれない。しかし理解する気にもならない。
亡者のぬけるような白い肌が、血の池へ浸かるごとに赤みを増していく。まるで罪と穢れで出来た血を吸収して命を吹き込んでいるかのようだ。血でありながら乾いてこびりつくことなく、水のようにサガのなかへと滲みこんでいく。不思議なことに、濡れた髪も艶々と輝きを増しているようだ。
しかし、その美しさが気持ち悪い。これはあくまで亡者の美だ。
心の中でラダマンティスが悪態をつくと、いつの間にか冥衣姿となったサガが、こちらを見ている。
「お前は、ここを使わぬのか?」
声までも色を増している。亡者の声は、生者に毒しかもたらさないというのに。
(汚らわしい、死人が)
そう思いつつ、否定しきれない何かが彼の心に忍び込む。
その何かは、死を魅力的であるかのように思わせる汚濁だ。いや、冥界の王を主と仰ぐ冥闘士にとって、死を美しいと思うことは正しいのだろうか。
ラダマンティスはギリ…と唇を噛んで視線を逸らした。
己へ命の輝きを教える者が、目の前の男の弟であることなど、彼はまだ知る由もなかった。
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あっ、でも蘇生したサガが入る血の池地獄は別府あたりので!
アイアコスあたりと温泉旅行してほしいココロ!
何でアイアコスなのかというと、私の趣味でしかない!(>ω<)
海界の仕事から双児宮へ戻ると、そこにいたのは黒髪のほうのサガであった。
元反逆者である彼が、聖域に住むことを許されているだけでなく、こうして監視もなく一人で双児宮にいられるというのは、アテナの懐が深いからだろう。もちろん精神論だけでなく、実際にサガを抑えることのできる実力を、成長したアテナが手に入れたからに他ならないが。
そのサガはオレを見るなり、お帰りのあいさつも抜きにして、突然問いかけてきた。
「カノンよ、お前にとって良い兄とはどのようなわたしだ?」
こちらのサガは能率を重んじるあまり、説明を省きすぎて不親切なところがあるとよく言われているけれども、近しい者に向けられる言葉は、大抵の場合そのままの意味である。
「突然なんだ。お前」
「聞き方を変えよう。わたしはお前にとって良い兄か」
そんなことを急に言われても、答えに窮する。アテナに不敬な言動を改めぬこちらの兄を良い兄と言ってよいものだろうか。いやしかし、考えてみればそれは聖闘士としての基準であって、兄としての基準ではない。では兄としてはどうなのだろう。もう一人のサガは文句なく良い兄なのではなかろうか。多分。ではこちらの兄はどうかというと…そもそも良い兄ってどういうものだ。
「…よくわからん」
即答しない時点で良い兄ではないと言っているようなものだが、さすがに濁しておく。
「逆に聞くがサガ、オレはお前にとって良い弟なのか?」
「いや、お前は愚弟だろう」
「おまえな」
カノンは遠慮したというのに、黒髪のサガの言葉には一枚のオブラートもない。黒髪のサガは肩へ流れ落ちた髪をさらりと払い、ソファーへと腰を下ろす。
「アイオリアがな、サジタリアスを無類の兄と自慢をするのだ。だが、お前は愚弟でもわたしにとっては特別なのだから、そのほうが凄くはないか」
急に兄が変なことを言い出したのは、どうやら別宮の黄金兄弟に張り合いの気持ちを持ったからのようだ。しかも妙なところで勝敗をつけている。
「あ、それいいな。『お前も愚兄だが、俺には必要な兄だ』というのでどうだ」
「…昔からお前はわたしの真似ばかりする」
そう言いながらも、サガの顔はまんざらでもなさそうであった。
元反逆者である彼が、聖域に住むことを許されているだけでなく、こうして監視もなく一人で双児宮にいられるというのは、アテナの懐が深いからだろう。もちろん精神論だけでなく、実際にサガを抑えることのできる実力を、成長したアテナが手に入れたからに他ならないが。
そのサガはオレを見るなり、お帰りのあいさつも抜きにして、突然問いかけてきた。
「カノンよ、お前にとって良い兄とはどのようなわたしだ?」
こちらのサガは能率を重んじるあまり、説明を省きすぎて不親切なところがあるとよく言われているけれども、近しい者に向けられる言葉は、大抵の場合そのままの意味である。
「突然なんだ。お前」
「聞き方を変えよう。わたしはお前にとって良い兄か」
そんなことを急に言われても、答えに窮する。アテナに不敬な言動を改めぬこちらの兄を良い兄と言ってよいものだろうか。いやしかし、考えてみればそれは聖闘士としての基準であって、兄としての基準ではない。では兄としてはどうなのだろう。もう一人のサガは文句なく良い兄なのではなかろうか。多分。ではこちらの兄はどうかというと…そもそも良い兄ってどういうものだ。
「…よくわからん」
即答しない時点で良い兄ではないと言っているようなものだが、さすがに濁しておく。
「逆に聞くがサガ、オレはお前にとって良い弟なのか?」
「いや、お前は愚弟だろう」
「おまえな」
カノンは遠慮したというのに、黒髪のサガの言葉には一枚のオブラートもない。黒髪のサガは肩へ流れ落ちた髪をさらりと払い、ソファーへと腰を下ろす。
「アイオリアがな、サジタリアスを無類の兄と自慢をするのだ。だが、お前は愚弟でもわたしにとっては特別なのだから、そのほうが凄くはないか」
急に兄が変なことを言い出したのは、どうやら別宮の黄金兄弟に張り合いの気持ちを持ったからのようだ。しかも妙なところで勝敗をつけている。
「あ、それいいな。『お前も愚兄だが、俺には必要な兄だ』というのでどうだ」
「…昔からお前はわたしの真似ばかりする」
そう言いながらも、サガの顔はまんざらでもなさそうであった。
カノンて、自分へのサガの愛情には鈍感な感じが…13年前といい…
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任務の帰りしな、シュラが闘技場の脇を通り抜けようとすると、広場を取り囲む円柱にカノンが寄りかかっていて、ちょうど目があった。他人を射殺しそうなその視線をみるに、機嫌のわるいことは一目瞭然である。しかし、シュラは律儀にあいさつをした。
「珍しいな、このような場所で会うとは」
海将軍も兼任しているカノンは多忙であり、聖域に戻っているときには大半を双児宮で過ごしている。サガを訪ねた双児宮で出くわすことはあっても、外で会うことは稀だ。
「別に珍しくもない。最近は小僧の修行に付き合わされることが多いからな」
「小僧?」
首をかしげかけて、すぐに理解する。闘技場から技の名を叫ぶ星矢の声が聞こえ、同時にサガの小宇宙が高まるのが感じられたからだ。
カノンの台詞は『星矢の修行に付き合うサガに付き合わされている』が正確のようだ。さらに言えば、カノンの不機嫌の理由もそこにあるらしい。シュラもそこそこ鈍感であったため、理由の内容までには思い至らない。それゆえに、直球でカノンへ尋ねた。
「サガが星矢の稽古をつけてやることの、何が不満なのだ?」
鈍感なだけでなく、遠慮もなかった。
カノンの視線はさらに鋭くなったが、この後輩に悪気も他意もないことは経験で知っているので、ぶっきらぼうに答えてやる。
「聖闘士が後輩を鍛えるのは仕事のようなもの、不満などない」
「では何に怒っているのだ」
「怒ってもおらん!ただ、サガがあのようにふざけた態度で修行に臨んでいることが気に食わん」
シュラは闘技場の方へ一度目を向けたが、特にふざけているようには見えない。
「普通の修行ではないか?」
「貴様の目は節穴か。あんなに鼻の下を伸ばして、我が兄とも思えん!」
「鼻の下…?」
そんな表情のサガは想像も出来ないシュラであった。よってもう一度闘技場のほうを振り返ったのだが、やはりそのようには見えない。確かに星矢との稽古を楽しんでいる様子ではいるけれども、カノンの表現からはかけ離れている。
「カノン、国語はあまり得意でないほうか?」
正直に言うと、カノンがフンと視線を逸らした。
「お前に話したオレが馬鹿だった。13年間そばにいたお前ならば、判ると思ったのだがな。今だかつてサガはあんな顔をすることなどなかったのだぞ」
「そうだろうか?サガは遠くから貴方を見るとき、同じような顔をしているが」
シュラがそう伝えたとたん、視線を逸らしたままのカノンの横顔が、傍目でみていてもわかるくらい真っ赤になっていく。
(武士の情けだ、見なかったことにしよう)
そう思うくらいの気遣いはシュラも持っていたので、軽く頭を下げると立ち話を切り上げ、そのまま磨羯宮へと歩き出した。
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ブレイブソルジャーで、海界編以降のストーリーではカミュが「氷河の師」になっていて、あれ!?いつの間にって思ったんですが、考えてみれば十二宮編で命を懸けていろいろ教えているので、その時点で師になったってことで間違いはなかったでした(・ω・;)
そしてスカーレットニードルアンタレスのときのミロの恰好よさも異常。
そんでもって改心を兄に伝えるときのカノンが頑張ってて可愛い。あれはサガ嬉しくて泣くよな~って思いました。
ところで、サガをSランク以外で勝たせると非常に不本意そうなのも可愛いです。サガってあれで負けず嫌いだからなあ…によによ!(^-^)
よし、気分転換終了!また冥界編後半プレイへ戻るぞー!
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任務の帰りしな、シュラが闘技場の脇を通り抜けようとすると、広場を取り囲む円柱にカノンが寄りかかっていて、ちょうど目があった。他人を射殺しそうなその視線をみるに、機嫌のわるいことは一目瞭然である。しかし、シュラは律儀にあいさつをした。
「珍しいな、このような場所で会うとは」
海将軍も兼任しているカノンは多忙であり、聖域に戻っているときには大半を双児宮で過ごしている。サガを訪ねた双児宮で出くわすことはあっても、外で会うことは稀だ。
「別に珍しくもない。最近は小僧の修行に付き合わされることが多いからな」
「小僧?」
首をかしげかけて、すぐに理解する。闘技場から技の名を叫ぶ星矢の声が聞こえ、同時にサガの小宇宙が高まるのが感じられたからだ。
カノンの台詞は『星矢の修行に付き合うサガに付き合わされている』が正確のようだ。さらに言えば、カノンの不機嫌の理由もそこにあるらしい。シュラもそこそこ鈍感であったため、理由の内容までには思い至らない。それゆえに、直球でカノンへ尋ねた。
「サガが星矢の稽古をつけてやることの、何が不満なのだ?」
鈍感なだけでなく、遠慮もなかった。
カノンの視線はさらに鋭くなったが、この後輩に悪気も他意もないことは経験で知っているので、ぶっきらぼうに答えてやる。
「聖闘士が後輩を鍛えるのは仕事のようなもの、不満などない」
「では何に怒っているのだ」
「怒ってもおらん!ただ、サガがあのようにふざけた態度で修行に臨んでいることが気に食わん」
シュラは闘技場の方へ一度目を向けたが、特にふざけているようには見えない。
「普通の修行ではないか?」
「貴様の目は節穴か。あんなに鼻の下を伸ばして、我が兄とも思えん!」
「鼻の下…?」
そんな表情のサガは想像も出来ないシュラであった。よってもう一度闘技場のほうを振り返ったのだが、やはりそのようには見えない。確かに星矢との稽古を楽しんでいる様子ではいるけれども、カノンの表現からはかけ離れている。
「カノン、国語はあまり得意でないほうか?」
正直に言うと、カノンがフンと視線を逸らした。
「お前に話したオレが馬鹿だった。13年間そばにいたお前ならば、判ると思ったのだがな。今だかつてサガはあんな顔をすることなどなかったのだぞ」
「そうだろうか?サガは遠くから貴方を見るとき、同じような顔をしているが」
シュラがそう伝えたとたん、視線を逸らしたままのカノンの横顔が、傍目でみていてもわかるくらい真っ赤になっていく。
(武士の情けだ、見なかったことにしよう)
そう思うくらいの気遣いはシュラも持っていたので、軽く頭を下げると立ち話を切り上げ、そのまま磨羯宮へと歩き出した。
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ブレイブソルジャーで、海界編以降のストーリーではカミュが「氷河の師」になっていて、あれ!?いつの間にって思ったんですが、考えてみれば十二宮編で命を懸けていろいろ教えているので、その時点で師になったってことで間違いはなかったでした(・ω・;)
そしてスカーレットニードルアンタレスのときのミロの恰好よさも異常。
そんでもって改心を兄に伝えるときのカノンが頑張ってて可愛い。あれはサガ嬉しくて泣くよな~って思いました。
ところで、サガをSランク以外で勝たせると非常に不本意そうなのも可愛いです。サガってあれで負けず嫌いだからなあ…によによ!(^-^)
よし、気分転換終了!また冥界編後半プレイへ戻るぞー!