星矢関連二次創作サイト「アクマイザー」のMEMO&御礼用ブログ
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アスぷとデフちで秋の酒
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「アスプロスは、物凄く鬼ごっこが強かった」
ふとデフテロスが懐かしそうに昔を振り返る。二人で酒を飲み始めて小一時間、アルコールには強い二人だが、そろそろ顔には赤みが差しはじめていた。アスプロスは当然とばかりに頷き、オリーブの塩漬けをつまむ。デフテロスお手製の肴だ。他にも燻製にした干し肉や、小魚の焼き浸し、薄く切られたパンなどが並んでいる。
「あの頃は、お前に追いつかれたら終わりだと思っていたからな」
特に杳馬に闇の一滴を落とされたあとは、自分を見つめる弟の目が恐ろしくて仕方がなかった。負けず嫌いの気性もあいまって、絶対にデフテロスに捕まらぬよう、遊びとは思えぬ真剣さで逃げたものだ。
しかし、デフテロスを振り切ることはできなかった。捕まりはしなかったものの、どこへ逃げてもデフテロスは追いついてきた。それがまたアスプロスの無意識を脅かしたのだ。
種を吐き出してから、ストレートの蒸留酒を舐めるようにして口に含む。あの頃はデフテロスの前で酔うことなども考えられなかった。成り代わられる危険を常に抱いていたのに、隙などみせられるわけがない。
「それに比べて、デフテロスよ。お前は自分が逃げる側となるとてんで弱かった。今思えば、手を抜いていたのか?」
軽く睨みながらも、アスプロスの口元は笑っていた。殺しあった自分達が思い出を楽しく語りあうなど、冗談のような贅沢だ。神々の思惑による隔離世界での蘇生であるものの、そこだけは感謝してもいいと彼は思った。
睨まれた方のデフテロスは、もぐもぐと何か言いかけては言いよどみ、暫くしてからぼそりと呟く。
「わざとではない。しかし、アスプロスが追いかけてきてくれるのが嬉しくて、つい振り返ってしまう。捕まえて欲しいと思っていたのかもしれないな…そんな風に雑念が沸くと、次の瞬間には追いつかれていた」
「わざとのようなものではないか。鬼ごっこで、捕まえて欲しいなどと考える奴があるか」
苦笑しながら、アスプロスもまた遠い記憶に想いをはせる。自分は逃げるばかりで、弟を振り返ったことなどあったろうか。
デフテロスも少し酔っているようだ。目元の赤くなったまなざしで、アスプロスを見る。
「俺は今でも、兄さんに捕まえて欲しいと思う」
「…そうか」
たまには自分の側が追いかけるべきなのかもしれない。
アスプロスは杯の底に残っている酒を、ひといきに呷った。

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デフテロスとアスプロスが鬼ごっこしたら、デフテロスは兄さんに追いかけられるのと追いかけるのどっちが楽しいかな。どっちも楽しそうだよなあ…って考えたんですけど、ストーカーのほうは毎日の生活でやってるので、やっぱり追いかけられるのが嬉しいかなって思いました。
アスプロスは自分が追いかける側にまわるのが、凄く新鮮かつ安心だった気が。背中から追いかけられて恐怖するより、背中を追いかけるほうがいいですものね。そんなマーブル少年時代のすれ違いを思うと、捏造蘇生後設定のときくらい、双子でイチャイチャさせたいなあと思うのです(>ω<)
アテナ誕でアテナとサガ
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オリーブはアテナの聖樹ということもあり、聖域では最もポピュラーな植物の1つだ。
この季節、青々と茂る葉のあいだには、楕円形のちいさな実がたわわにぶら下がっている。
収穫はまだ先だが、現段階でも豊作であることは一目瞭然であった。
「今年もよく採れそうです。村の者たちが喜ぶでしょう」
十二宮の通路を歩くサガが隣のアテナへ話しかけた。
「嬉しいことです。デメテルのお陰ですね」
祭典用の衣装を着た彼女は、軽やかに白のドレスの裾をさばいている。黄金で統一された腕輪や首飾りとニケの杖が、太陽を反射させてきらきらと輝く。派手なほどだが、アテナの美しさの前では、それすら霞むとサガは思う。
「貴女が人間にオリーブを与えてくださったお陰です」
「ふふ、昔の話だわ」
明るい栗色の髪をなびかせ、アテナがサガを見る。
彼はアテナへ微笑んだ。
「この樹は聖域中に恵みをもたらしてくれますが、1箇所だけ生えていないところがあるのですよ。ご存知ですか?」
「あら、そうなの?どこかしら」
「教皇宮です。昔、赤子であった貴女がこの地を去られたあと、教皇宮まわりの樹が実ることはなくなりました。それを見たあれが…もう一人のわたしが、すべて引っこ抜いてしまったのです」
「まあ」
「愚かですよね」
自嘲まじりの穏やかな笑みは、数多の苦しみと悲しみを乗り越えてきた者特有の静謐さがあった。
アテナと呼ばれる少女は、何も言わず、そっとサガの手を取る。手を繋ぎながら歩くことになったサガは、どうしていいのか戸惑いながらも、その手を離すことは無かった。
「今度、一緒に植えましょう、サガ」
「アテナ」
「オリーブたちにも言っておかなければ。私は誰かを苦しめるために、あなた達を創り、人に与えたわけではないのだと」
「……貴女というひとは」
手を引かれるように歩くサガの顔が、くしゃりと泣きそうにゆがむ。
けれども涙がこぼれることはなかった。代わりにサガは低くゆっくりとアテナへ伝える。
「貴女の生誕と御世を祝います。貴女のために、わたしは戦う」
13年前とは違い、心の底からの言葉であった。
「ありがとうサガ」
にっこりと笑ったアテナの笑顔は、戦女神のようでもあり、人間の少女のようにも見える。この笑顔を二度と曇らせたくないと、サガは心の中で呟いた。

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もう出勤時間ですが、黒サガとアテナの話も書きたかった…!
今では黒サガにも認められているアテナです。でも黒サガなので普段は「小娘」とか呼んじゃう。それでもアテナがさらに美しく成長して16歳くらいになったら、そうは呼ばなくなると思うんですが…(>ω<)
2011/1/7ブログネタの焼き直し
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「冥闘士らしき奴が、黄泉比良坂をうろうろしていたから捕まえてきたぜ」

デスマスクが一人の兵士を教皇の前へ放り投げるようにして突き出した。
黄泉比良坂は冥界と繋がっている。普通はアテナの結界により冥界側から侵入することは出来ないのだが、そのアテナをアイオロスが聖域外へ連れ去ってしまったため、時折結界がほころびる。

配下の報告を受け、仮面をつけた教皇は静かに椅子から立ち上がった。法衣の裾で衣擦れの音をさせながら玉座前の数段を降り、倒れ伏している異界の兵士を見下ろす。
捕虜が身に付けている冥衣は下級兵のもので、冥闘士といっても魔星を持つものではないようだ。魔星ならば老師が五老峰で見張っている。封印されている108人には含まれぬものの、結界のほころびを潜り抜けられる程度には腕のたつ斥候といったところだろうか。
既にデスマスクによってボロボロにされ、立ち上がることも敵わぬ様子ではあるが、目だけは敵意を失わず、憎しみの篭った視線で聖域の統率者を睨み上げてくる。
教皇はその兵士の前で仮面を外した。
兵士の息を飲む音が聞こえた。それほど教皇の素顔は美しく静謐であり、宗教画にある聖人のようであったのだ。天使や神とまごうほどの輝きを、女神の教皇は持っていた。
魅入られたかのごとく視線を外せなくなっている兵士へ、教皇は慈愛の微笑みを向ける。
「わたしにお前の知っていることを全て話してくれないか」
教皇の指がきらりと光ると、もう兵士は自分の意思で考えることはできなくなった。


数刻後には、幻朧魔皇拳で情報をすべて吐かされた冥闘士の死骸が転がっていた。教皇の手刀によって貫かれた胸からは、どういう処置をされているのか血の噴出すこともない。
デスマスクは慣れた動作で積尸気冥界波を放ち、その死骸を黄泉比良坂へ放り込んだ。魂だけでなく肉体ごと死界へ送る方法も先代から伝わっている。冥界からの侵入者に対しては肉体ごと送り返しても意味が無いので、普段は魂だけを切り離すのに使っているのだが、死骸なら肉体ごと始末してしまった方が都合いい。
「結界のほつれの場所が知れた。塞ぎにゆくぞ」
教皇が、冷たい笑みを浮かべている。もう先ほどの微笑みは影も形もない。
「いつから、貴方のほうだったんですか」
デスマスクがぼそりと尋ねると、教皇は笑いながら仮面をつけた。髪の先がわずかに黒い。
「当ててみるがいい、キャンサーよ。わたしにも判らぬ境目を、お前が知っているのなら」
「サガ」
「教皇と、呼べ」
しかし、デスマスクが名を呼んだとたん、その場の空気が凍りつく。
(…やべ、おっかねーの)
心の中で軽口を叩くも、この偽教皇の恐ろしさは、側近として働いているデスマスクが1番良く知っていることだ。神のような双子座は、悪魔のように容赦がない。

仕事モードに切り替えたデスマスクは、サガとの会話をあきらめ、目の前に黄泉比良坂への『道』を開いた。

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昨日もぱちぱち有難うございます(>ω<;)沢山ぱちぱち頂けてびっくりです。
職場では、浮き輪を持ってきたお客様が自由に使えるようにコンプレッサーも置いてあるのですが、1日1~2組は空気を入れすぎて浮き輪を破裂させます。
浮き輪をお子さんの前で破裂させてショ(´・ω・`)ボーンな顔になっているお父さんを見ると、『こ、これも旅の思い出です(>ω<;)』と何となく心の中で応援したくなりますよ…売店で新品の浮き輪も売ってますから!
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ぽーんという威勢のいい音とともに、エアーベッドが破裂して吹っ飛んだ。原因であるバイアンが目を丸くしたあと、困ったような顔をしてカノンの方を見る。原因は空気の入れすぎだ。
「すみませんシードラゴン、加減しそこねました」
横からソレントが涼しい顔で口を挟む。
「謝ること無いですよ。ゴッドブレスできる肺活量あるなら簡単だろとか言って、貴方に押し付けたあの人が悪いんですから」
「しかし、失敗したのは俺のせいだからな。すまんカノン」
「ああ、気にすんな」
カノンはひらりと手を振った。海将軍たちの海水浴につきあったものの、自分は寝ているつもりだったのだ。それが海上になるか砂浜になるかの違いだけで、予定に大差はない。
「大丈夫だ。まだもう1つある…また空気入れを頼んでも良いだろうか」
しかし、横から会話に混じってきた兄・サガの声で現実にたちかえり、カノンは遠い目になる。職場仲間の行楽に、何故なんの違和感もなく兄が混じっているのだ。
バイアンも快く引き受け、今度は上手くエアーベッドを膨らませた。サガや自分が横たわれるサイズなのだから、相当大きなものだ。バイアンがいなければ、これを膨らませるのは骨だったろう。涼やかな声で礼を言うサガと、照れたように会話をしているバイアン。違和感を感じているのは自分だけで、他の面々は当たり前のように受け入れている(ソレントは多分あえて流している)。
サガが楽しそうにカノンを見た。
「カノン、一緒に乗ろう」
「は?」
「狭いが二人くらい乗れるだろう」
「ムチャ言うな沈む。ていうか狭い」
「重なれば乗れるのではないか?」
「何で重なってまで一緒に乗らなきゃならんのだ!」
「1つしかないエアーベッドを双子で争いあうより、二人で使いたい」
「いや、争うつもりはないし。浮き具を聖衣と同列のように語られても…」
言いかけてカノンは黙った。聖戦後は隠れることなく生きることとなったカノンであるが、そのために兄と何かを半分にすることはなくなった。それはカノンの自立を意味するが、時折昔の距離も懐かしくなる。
1つのものをサガと分け合って使うなど、何年ぶりのことだろう。
「…一緒に乗ってやってもいいが、多分沈むぞ」
「やってみなければ判らないだろう」

海将軍たちの暖かい視線(ソレントだけは生暖かい視線)のなか、美丈夫二人に乗られたエアーベッドは、沈みはしなかったものの、過重のため、皆の予測どおり盛大にひっくりかえった。

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27・29と拍手を下さった方ありがとうございます(ぺこ)毎回癒されております。
カレー食べたい気分だけで書いたぐだぐだSS
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海界から帰宮したカノンが、いつものように双児宮の門柱をくぐると、通路を兼ねた広間にはテーブルセットが置かれ、サガとシャカにデスマスク、そしてアイアコスという不思議なメンバーが揃っていた。
テーブルの上には幾つかの皿が並んでいる。そして宮内に広がるカレー臭。
「おい、何だこれは」
帰参の挨拶も忘れて思わずサガに問いただすと、サガの方は先に「おかえり」と言ってからカノンへ説明を始めた。
「凄いだろう。各国カレーの試食会だ。とりあえず彼らの出身地であるインド、ネパール、イタリアンが揃っている」
「意味わからん」
「最初は、アイアコスのネパールカレーの話から始まったのだ。そうしたらシャカがインドカレーとの違いを教えてくれてな。食べ比べをすることになったのだが、折角なのでそれぞれが自分の国のカレーを作って持ち寄ったのだ」
「どこでどういう状況でそんな会話になったのか、皆目検討がつかんのだが」
カノンと同じようにサガの人脈もなかなか広いのだけれども、そのなかでもサガと親しく交流のある面子は一見クセのある人物が多い。言い換えれば、サガの過去の前歴…反逆者であった過去など気にしない者たちだ。
「さっさと着替えてこい。お前も分もある」
声をかけてきたのはアイアコスだ。カノンとも面識がある。三巨頭のなかでは、さばさばとして付き合いやすい性格をしている。いつのまにサガと仲良くなったのか知らなかったが、それは食べながらでも聞けばいいだろう。
しかしそこでカノンははたと気づいた。慌ててデスマスクに小声で確認をする。
「おい。サガにカレーを作らせてないだろうな」
サガの料理の腕前は壊滅的だ。いや料理は彼なりに手順どおり作るのだが、余計な調味料をアレンジしたり、愛情と言う名の小宇宙を篭めすぎるために、サガの知らないところで料理が変質する。
「落ち着け。テーブルの上にギリシアカレーはねえだろ。俺がいるのにサガに料理なんてさせねえよ」
「そ、そうか。サガの手料理が無いなら安心して食えるな」
「…カノン、聞こえているぞ」
最後の台詞だけ耳に届いたのか、サガが少しむくれている。
しかし、皆はまだ知らないのだった。シャカの手料理もなかなか壊滅的であることを。

各国カレー品評会の結果、次回はシャカにも手作りをさせず、イギリスカレーとポルトガルカレーを追加しようという話になった。

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イギリスは当然ラダによる英国式カレーですが、彼も料理とか出来るんだろうか…ポルトガルカレーはカーサです。
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