捏造てんこ盛りのいつものタナ←サガ
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エリシオンに与えられた離宮で、サガが言葉どおり浮世を忘れて寛いでいると、不機嫌そうなタナトスがやってきて長椅子へどかりと腰を下ろした。
突然の来訪はいつものことなので、サガは慌てず神酒と酒肴の用意をして銀盆に乗せる。
「また人間界へ?」
「ああ、人間度もが大量に仕事を沸かせてくれたのでな」
おそらくどこかで内乱でもあったのだろう。サガは眉を潜めた。
タナトスは構わず続けている。
「散々自分たちで争い殺しあっておきながら、俺の来訪を忌むべきものと唾棄する。最後には人間賛歌だの生命賛歌だの言い出して誤魔化そうとする。アテナあたりが言うのならばともかく、人間がそのように言うのは単なる自画自賛であろう。そのような事は世界中から争いを無くしてからほざくが良いわ」
望まぬ死の訪れを歓迎する者など、そうはいないだろう。
タナトス側からすれば理不尽なことではあるので、忌まれ続けたその怒りを人間にぶつけ、見下すのは仕方のないことなのかもしれない。
サガはタナトスへそっと酒杯を渡した。
「貴方を称えるわたしも愚かだろうか」
「なに」
「生を讃えるも死を称えるも、わたしには同じに思える」
「…」
「それに、神々同士ですらやまぬ争いを、貴方の言う愚かな人間に終止符をうてなど、それは無理と言うもの」
「…フン」
タナトスが受け取った杯へと神酒を注ぎ、サガはタナトスよりも一段低い床へと座する。
「人間を、わたしを見捨てないでくれないか」
そう言って見上げるサガから視線を逸らし、タナトスは黙って酒を呷った。
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今日もぱちぱち有難う御座います(>ω<)
尽きそうな気力を奮い起こしてくださる心のカンフル剤です。
もうアスは小者だから歪んで野望を持ったで納得するしかないのか…
デフの新技の名前が覚えられなくて「黒火山大爆発」で記憶している管理人ですが、ゲームやエピGなど、作品ごとに新技が出てきたりしますよね。
原作以外でのサガの技で大好きなのが、ゲームの投げ技とグランドブレイカーです。投げ技のほうは、相手の顔面を掴んで地面に叩きつけるというものなのですが、凄く豪快な戦闘スタイルのサガっぽいんですよ!あれは良い技ですよね!そんなわけでロスサガSS。
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太陽が真上にこようとする時刻、サガとアイオロスはコロッセオで組み手を行っていた。聖衣はつけずに訓練着である。実力は伯仲しており、なかなか決定打が無い代わりに、練りこまれた拳打が少しずつ相手の体力を削っていく。
振り返りざまのサガの長髪で一瞬視界を隠されたアイオロスは、そのまま視界を閉ざされた。死角から伸ばされたサガの手が、アイオロスの顔面を掴んだのだ。
しかし、そのまま強引に投げの体勢へ入ろうとしたサガは、手のひらに形容しがたい感触を覚え、言葉にならぬ悲鳴をあげて後ずさった。
一方、アイオロスはこともなげに口元を拭う。
「へえ、結構敏感なんだね」
「そそそ、そんな返し方があるか!」
そう、アイオロスはサガの手のひらを、ただぺろりと舐めたのだった。
聖闘士のなかでも黄金聖闘士ともなれば、四肢の隅々にまで神経を張り巡らせている。わずかな隙も相手からの攻撃の兆しも見逃さぬためだ。
それがあだとなり、サガが真っ赤になって自分の手を押さえている。
「今のは無しだ!」
「ええ、なんで?」
「聖衣着用のときは効かぬだろう!」
「そんな、敵との戦闘時に必ず聖衣を着用できるとは限らないし」
すっかり動きをとめて言い合っている二人の無意識の熱々っぷりに、周囲の雑兵たちは遠巻きな生暖かい視線を送るのだった。
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俺はカノン島でひとり暮らす事になった。
誰もいない場所で、デフテロスという輪郭を際立たせることなど簡単だった。比較する他人など存在しないのだから。
ただ、閑静な環境は、人間に囲まれて暮らしていた頃よりも、己の中のアスプロスの影を浮き上がらせた。いつでも兄と共にあるのが当然の生活を送ってきたせいで、少しでも気を抜くと兄の気配を身体が追ってしまう。
そのことが、いかに兄の影響下にあったかを俺に自覚させる。
俺はまず己の中のアスプロスを殺す事から始めた。思い出の中に現れる兄を何度でも殺した。兄の血がどんどん心に溜まっていって、真っ赤なマグマのようになった。白い画用紙を黒のクレヨンで塗りつぶすがごとく、アスプロスの影響を消していく。そのうち、兄の幻影を殺しても何も気にならなくなった。
次に何とかしなければいけないのは、脆弱な過去の自分だ。兄の欠損からくる孤独を嘆く心、兄を想う未練、子供の頃の俺、そんなものは強さには必要なかった。兄と同じように何度でも俺の中の俺を殺した。そうしていくうちに心の中には今の俺しかいなくなって、輪郭はどんどん強固になっていく。もっと心を支配しなければ。何ものにも揺らがない自我と力を。来るべき俺自身の戦いのために。
必要なのは強さだけだ。
「君は人のために力を奮う彼がうらやましいのだろう」
だのに、今になってアスミタはそんなことを言う。
お前たちの指摘を受け入れて俺は影である事をやめ、自分の輪郭を磨き、戦いに備えて邁進してきた。力も手に入れた。自身のため、そして宿敵であるあの男と戦うためだ。それは他人のためなどではない。もう俺は揺らがない。
しかしアスミタがそう言うのであれば、本当はうらやましいのだろうか?
死んでしまった乙女座は笑うだけで何も答えない。
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そんなわけで以下今週の双子語りです。当者比10%ほど痛めで。
ぱちぱちコメントは次回にさせて下さいね(^▽^)