星矢関連二次創作サイト「アクマイザー」のMEMO&御礼用ブログ
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大志と野望は紙一重
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「お前は野望など持ちそうにないな」
アスプロスがふと呟いたその言葉は、デフテロスには『覇気がないな』と同義であるかのように聞こえた。多分それは彼の引け目からそのように聞こえてしまうだけであって、アスプロスからすれば己の過去を鑑みた上での褒め言葉なのだろう。
デフテロスは少し躊躇したあと、ぼそりと答えた。
「俺も野望はあるのだが…」
「ほお?」
とたんにアスプロスが興味を持ってデフテロスを見た。それだけでなく近寄ってきて顔を覗き込む。
「どのような野望なのだ?」
「その、兄さんを…」
「俺を?」
アスプロスは楽しそうに聞いているが、デフテロス側としては本当のことなど言える筈もなく、語尾が小さくなる。
それはまだ口に出せぬ、兄への行き過ぎた想いだからだ。
「……」
「何だ、言ってみろ」
弟の葛藤など知る由もなく、アスプロスが言い募る。
「その…その…兄さんを…超えたい」
仕方なく誤魔化したデフテロスへ、アスプロスは目を丸くしてから笑い出した。
「お前は言葉を知らないな!『野望』とは身の丈にそぐわぬ高望みのことだ。何であれお前に負けるつもりはないが、それならば『目標』で良かろう」
「目標でいいのだろうか」
「お前は俺と同等の力と可能性を持っている。何を卑屈になっているのだ」
デフテロスはちらりとアスプロスの顔を見て、それから赤くなって下を見た。
「それならば、目標ということにする」
「そうか。それは楽しみだ。正直、野望などと言われると寝首をかかれるような気がするのでな」
楽しそうに笑っているアスプロスの声を聞きながら、デフテロスは拳を強く握り締める。
そうして彼は胸のうちの熟れた野望を、『兄を振り向かせる』という心焦がす目標へ、そっと置き換えた。

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