今日もLC無印クロスオーバー妄想。
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聖域を一巡りしてきたデフテロスは、ただいまの一言もなく双児宮へと足を踏み入れた。
兄アスプロスが同じように、現在の聖域を視察するため出かけている事は知っている。兄が留守ならば帰参の挨拶は必要なく、必要のない場合には声を発しない習慣が身についていた。
彼は「存在しない人間」として育っており、幼い頃は顔下半分を覆うマスクの着用も義務付けられていた。他人に言葉を発することが許されていなかったのだ。そして、気配を殺して物陰へ潜むのに言葉は邪魔だ。
だから、宮の居住部へ来た途端、彼の帰りを知ったサガが「おかえり」と笑顔を向けてきたことに対して、正直どう対応していいのか返事に困った。
「どうした?鳩が豆鉄砲をくらったような顔をして」
「……」
こういった場合、どのように返せばいいのだろうかとデフテロスは眉間にしわを寄せた。サガは現双児宮住人であるからして『お邪魔する』がいいのだろうか。しかし、自分とて代は異なれど、双児宮の守護者である自覚はある。サガに入宮の許可を取るつもりはない。
そのまま、自分とアスプロスに割り当てられている右宮のほうへ行こうとすると、さらにサガの声が掛かった。
「デフテロス、まだこちらの世界に馴れぬのは判るが、帰ったときには挨拶くらいするものだ」
デフテロスの眉間の皺がさらに深くなった。ルームシェア(パレスシェアか?)をしているとはいえ、挨拶をする義理などない。しかし、無視をなかったのは、後輩である双子座のサガが…多少アスプロスに似ていたからだ。
「…καλημέρα σας(こんにちは)」
「こういうときは、『ただいま』だ」
デフテロスが返事をしたことで満足したのか、サガは「待っていなさい」の一言で簡易厨房へ行き、しばらくしてティーセットを片手に戻ってきた。デフテロスをソファーへ座らせ、目の前へ置いたカップにハーブティーを注ぐ。カモミールの香りがふわりと漂う。
「デフテロスから見た現代の聖域はどうだったろう?」
そういってにこりと笑うサガを、デフテロスは怪訝な目で見た。
「何が目的だ」
直裁に問うと、サガは目を丸くして、それから微笑んだ。
「それはアフロディーテ…ピスケスから貰ったハーブティーだ。とても美味しいのだが、一人で飲むのもつまらないのでな。話し相手になっては貰えまいか」
デフテロスはじっとサガの目を見てから、呆れたようにカップへ手を伸ばした。嘘を言っているわけでも、意図してのものでもないだろうが、サガは相手から情報を引き出す空間を作ることに長けている。優しく、慈愛を込めて、サガは相手から欲しいものを引き出す。
誠意をもって誠意を引き出す行為は、非難される事柄ではないが、善人相手であっても簡単に気を許さぬ冷静さと、ある種の冷徹さをデフテロスは持っていた。
「サガ、お前はいつもそのようにカノンへ接するのか」
唐突とも思える問いに、サガが首を傾げる。
「そのように、とは?」
「依願の形を取るようで、命令形だ」
今度こそサガは目を丸くした。
「そうだったろうか」
「待っていろと言っておいて、茶まで運んできて、その後に『一緒に飲んでくれるか』はなかろう」
「…それは失礼した」
素直にサガは頭を下げた。デフテロスがカノンに似ているせいか、身内に対するのと同じように接してしまっていた事に気づいたのだろう。似ているからといってデフテロスは弟ではない。申し訳無さそうに言動を改めている。
「そう言われてみると、確かに押し付けがましい言い回しであった。このような物言いだから、カノンはわたしに反発するのかもしれんな」
「そんな事までは知らん」
さらに強引な自分の兄を思い出し、デフテロスは素っ気無く答えた。アスプロスとてデフテロスの意志を無視するようなことは滅多になく、その滅多な出来事がスターヒルでの幻朧魔皇拳であったわけだが、それはそれとして、兄はわりと強引だった。そしてデフテロスは、兄のそういうところも好きだった。
「だが、そのくらい強引な方が好ましいと思う」
デフテロスとしては褒めたつもりだったのだが、サガはさらに肩を落としている。
「わたしは強引だろうか」
「ああ。もっとも、身内と判じた者に対してだけのようだが…」
ふと、途中で不自然に言葉を止めたデフテロスを、今度はサガが怪訝そうに見た。
「どうしたのだ、デフテロス」
「兄というものは、身内と判じた者には厳しく、強引になるものなのだな」
「一般論にするのはどうかと思うが」
「そして、そうなるのは愛情ゆえのこと」
「…それは、まあ、そうだろう」
「では、アスプロスが俺に強引なのは、愛情ゆえと思ってよいのだな」
サガは一瞬言葉につまり、困ったような顔で答えた。
「そんな事までは、知らん」
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この話を書いている最中に、パラ銀発行の皆様の御本が届きました!わーいわーい!(>▽<)今から郵便局へ行った後におやつを買って、まったり珈琲飲みながら堪能するんだ!休日最高!
またいつものパラレル混合妄想!LC双子とサガ&カノンを一緒にしておいた場合、系列的にはLC双子が先輩にあたるわけですが、きっとサガとカノンは色々驚かされることが多いんだろうなあ…
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「俺も黄金聖衣を任されたとはいえ、ギャラクシアンエクスプロージョンはやはり兄用の技。アスプロスの放つ奥義の破壊力と切れ味は一味も二味も違う。技を放つときの兄の美しさときたら…」
普段はどちらかといえば寡黙なデフテロスだが、兄・アスプロスの話になると止まらない。
カノンは、そんなデフテロスに唖然としていた。
「な、なにい…何のてらいもなく兄を賛美しまくるだと…!?」
カノンもサガを尊敬し、無意識に美化している部分すらあるのだが、サガを目の前にして表に出す態度は逆である。まして、堂々と兄を褒めまくるデフテロスのことは異星人に見えている。
デフテロスの賛辞に対して、アスプロスは当たり前のように受け止めていた。というか、当たり前なのだ。日常会話の一端として、ギリシア珈琲を飲みながら弟の言葉に悠然と頷いている。
そして、そちらに対してはサガが唖然としていた。
「そ、そんな…身内の賛美を訂正も謙遜もなく続けさせるだと…!?」
サガからみると、何の羞恥プレイだろうという状態に見える。確かにアスプロスの実力は凄まじいのかもしれないが、デフテロスを見ていると『そろそろ誰か止めてあげないと』レベルに達しているように思えた。弟の暴走を止めてやるのも兄の務めではないのか。
しかし、どことなく羨ましいような気もして、カノンとサガは互いに顔を見合わせてから、慌てて視線を逸らした。
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今日もぱちぱち有難う有難う御座います(>▽<)
毎朝出勤前の元気を頂いております。
職場の潤い
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ある日、いつものようにラダマンティスがカイーナ城に着くと、広間のほうから竪琴の音色が聞こえて来た。
「何だあれは」
通りすがったシルフィードへ尋ねると、
「音楽があったほうが仕事の効率が上がると…職場のBGMとして…」
と、どこか歯切れが悪い。
「オルフェかファラオでも来ているのか?たとえパンドラ様であっても演奏会なら他所でやって頂こう。このカイーナにBGMなど不要!」
風流を介さないラダマンティスにとっては、音楽など雑音と大差ない。綺麗な音色であることは理解しても、仕事場で流されたところで眠くなるばかりなのだ。
バタンと勢いよく広間の扉をあけて踏み込むと、そこには演奏の手を止めたタナトスがいた。
「……」
その場に固まったラダマンティスを、演奏の邪魔とばかりタナトスがぎろりと睨む。
「たまには冥界軍の福利厚生に協力してやろうと思ってな。このオレが人間に曲を聞かせるなど千年に1度もないのだぞ。歓喜してひれ伏せ」
どこか得意そうに(そして当然偉そうに)告げる死の神に対して、ラダマンティスは黙り込む。内心では怒鳴りつけたくとも、双子神相手では流石にそうもいかない。
「恐れながら…それはタナトス様の発案でございますか」
半眼になりながらも、何故タナトスが突然気まぐれを起こしたのか聞いてみる。すると、意外な返答がなされた。
「いや、双子座の提案だ。アレが冥闘士たちとの交流を勧めるのでな」
「………聖域の?」
「他にどの双子座がいる」
ラダマンティスはそっとこめかみを押さえた。おそらく発案者はカノンだろう。カノンはラダマンティスの仕事ぶりに対して普段は何も言わないが、時折『働きすぎだ』という視線を向けてくる。純粋に冥界の職場環境を良くする心遣いをしたに違いない。そしてカノンはサガに相談し、サガがタナトスに話を持って行ったというわけだ。
心配は嬉しいが、どうなんだろうかこの状態は。
「意外と悪くないと思うんですけど」
「冷たい音色だが、仕事中には却ってそれが良いな」
そんな部下たちの会話を他所に、ラダマンティスは耳栓を持って自分の執務室へ一人閉じ篭った。
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ラダカノでタナサガ前提なかんじで…双子神はもう少し自軍の冥闘士たちと交流を持ってもいいと思います(>ω<)
冥闘士側は「気を遣うんでそんな交流なくても良い。うっかり機嫌を損ねると殺されそうだし」状態かもしれませんが(汗)
タナトスは、バレンタインの作った美味しいお茶請けのスイーツを気に入って、ちょいちょいカイーナへ遊びに行くようになるといいなあ…超妄想。
今日もぱちぱち有難う御座います。心の糧です(^-^)
白黒サガ
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聖戦が終わり、一度死んでリセットされたせいなのか時効なのか、アテナの盾で払われていたわたしは、再び蘇生したサガの中に還っていた。
サガはもうわたしを追い出そうとはしなかった。わたしが何かを目論んでも、アテナが阻止するであろうと信じているのだ。忌々しい。
ただ、全てが明るみに出たうえ、アテナが他の神々の侵略を退けた今となっては、わたしの野望も意味がない。サガはわたしを連れたまま、聖域を出た。
ひっそりとした森の奥に小屋を見つけ、隠者のように暮らす事を選んだサガ。アテナには許されているのだから、お前ほどの力があれば、黄金聖闘士として世に栄光を知らしめる事も可能だろうと囁いたが、興味がないという。
「黄金聖闘士として聖域に戻れば、教皇であるアイオロスに傅く事になるが?」
どこか楽しそうに言うサガの言葉を聞いて、それは嫌だと納得する。
カノンも生きていて、海界へと渡ったらしい。風の噂では、冥界のワイバーンと友人になったとか。物好きなことだ。
その話をするとき、サガはとても嬉しそうだ。深い穴の底から太陽を見上げるような、そんな顔をしている。
弟に会いたいのなら、呼びつければいいではないか。
そういうと、きまってサガは首を振る。
「いいのだ、わたしにはお前がいる」
そう言って、淡い笑みを浮かべた片割れは、笑んだまま遠くの空を見た。
そういえば、かつての部下であった者たちにも、この場所を教えようとしない。
毎日一人で起きて、自分が食すだけの野草を摘んだり、魚を釣ったりするだけで、夜には一人で寝る。
お前にはわたしだけがいればいい。かつて何度もわたしはそう言った。
これは望んだとおりの『サガ』ではないか?
あれほど望んだ『わたし』を手に入れたはずなのに、しかし、何かが足りない気がする。一体何が足りないのだろうか。
何度考えてもわたしには判らなかった。
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昨日は祝日であったせいか、びっくりするほどいっぱいパチを頂きました!
10連打をしてくださった方々もありがとうございます(>▽<)元気を沢山いただきました。
「…というサプライズハロウィンを計画していたのだがな。貴様が菓子を用意していなければ」
カイーナ城に突然押しかけてきた黒サガが、ラダマンティスから渡された飴を見て残念そうに呟いた。
「そういのはサプライズと言わん!戦闘でもないのに幻魔拳を使おうとするな!誰が楽しいのだそれは!」
怒鳴るラダマンティスの言葉もどこ吹く顔である。
「わたしは楽しいが」
「ふざけるな!カノン、こいつに何か言ってやれ」
しかし、横で同じように菓子を受け取ったカノンも、怒られつつ残念そうな顔であった。
「ラダの愛を確認したかったのに…お前もルネくらい動揺してくれるよな?」
「貴様ら…」
毎年、この時期になると聖域の迷惑双子に押しかけられて被害を被るラダマンティスだが、今年はさすがに学習して、事前に菓子を用意しておいたのだ。
「ハロウィンにかこつけて悪戯できなかったら、どう貴様を祝えば良いのだ」
それでも祝うつもりはあるらしいので、強く怒れないラダマンティスは、とことん人が良い。
「……普通に祝え」
そう答えると、双子は声をそろえて「ハッピーバースデー」とラダマンティスに笑いかけた。
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…という朝からアレな妄想をしてました。超急いで描きました。そんなわけで推敲と拍手返信は夜にさせて下さい(>△<)もう出勤電車時間ー!